BLです。

苦手な方、受け付けない方は、お戻りくださいね。










~影山の章

『離れの皆に、少しでも明るい気持ちになってもらいたい。』

旅の絵師を、城に招き入れ、早速離れにて侍女達の似顔絵を描いてもらう。

絵師は、名を大野といい、弟子だという二宮を連れていた。


『大野さまは、男前にござりまするな。』
『二宮さまは、どちらかと言うと可愛いいお方でござりまする。』


若君のご配慮に、離れの侍女達が騒いでいる。


だが、若君が絵師を招き入れた、本当の理由は他にあった。


離れの侍女達に、一通り似顔絵を描いたところで、『若君が絵師を部屋に呼ぶように』と、雅紀から伝え聞いた。


大野どのと二宮どのを連れて、若君の部屋を訪れた。


「影山にござりまする。絵師のお二方をお連れ致しました。」


『入れ…。』



「こちらに…お座り下され。」


二人は着座すると、畳に頭を擦り付けるように伏したまま、挨拶した。

「こっ…この度は、お城にお招き頂き…きょ…恐悦至極にございまする…。」
緊張の余り、声が上擦る大野どの。

「…身に余る光栄に、ございまする。」
部屋に響き渡るような、落ち着き払った淀みない声の二宮どの。


「苦しゅうない。二人とも、面を上げよ。」


「…あっ。」


その声は大野どの。

「若さまは瓜二つに…ございますなぁ…。」


若君と私の顔を、無遠慮に見比べる。

「大野さんっ。そんなにじろじろ見たら、失礼ですよっ。」

「…こっ…これは、ご無礼つかまつりました!」
再び伏せる大野どのと、二宮どの。


「ふふっ…構わぬ。初めは皆、そのように驚く。気にはしておらぬ故、存分に見比べよ。」
若君は、いつものことと、他愛なくあしらう。


「めっ…滅相もございませぬ。」
「恐れ多いことで、ござりまする。」


「さて…そなた達を城に招き入れたのは、他でもない。若君のたっての頼みがあってのこと…。」

「たの…み?で…ございまするか?」
「それは…どのような?」


「そなた達。似顔絵書きだけでは路銀や旅籠の宿賃は、賄えぬであろう?」


「そっ…それは…。」
「確かに…仰せの通りにございまする。」

「にっ…二宮!」
「隠したところで、直ぐにばれてしまいますよ…。特に、このお方には…。」
私を鋭い目付きで、見返した。


「これは…なかなか察しが良いのう…。それならば、話が早い…。」

「して…頼みとは…?」





「春画を…描いて頂きたい…。」



…つづく。



この物語はフィクションであり、史実とは全く関係ありません。