現代日本人で「徳仁さま」と書いて「なるひとさま」と読める人が何割いるか知らないが、その「なるひとさま」、つまり令和時代の今上天皇陛下の青春時代に英国留学した思い出を書いた本が30年前発行されたのを知っている人が何人いるだろう
 「テムズとともに」は陛下が独身の皇太子でいらっしゃった時代に書いたものを学習院大学150周年記念で静かに紀伊國屋書店のみで出版された出版された本で、私は当時、通販で購入しました。その本が今、桐生の書店で売られているのにびっくりしました。当時は利益を出す目的ではないので地味な新書本でしたが、今回はきちっとした装丁になっています。おそらく出版後30年を経て「時効」的な意味合いもあるのでしょう。ここで残しておかなければ、ということもあるでしょう。
 正直に申しますと内容の多くはほんの備忘録的なものを書き直した感じで事務的なものもあり、全てが面白いわけではありませんが、特にオックスフォード大学での日本皇室時代では考えられない弾けるような「青春時代」の2年間の記録は我々が当たり前の青春を当たり前でない感覚で過ごす姿がホロリとさせられます。額に星をつけたパンクのねーちゃんとパーティなど、今の天皇陛下から想像できますか?
 ともかく本当に心底から育ちの良い方が英国でまずい食事を「まずい」と表現せずに表すのに工夫するお人柄を知ってみることだけでも1100円を出す価値があるかと思います。