朝日新聞社創刊100周年記念として1979年(昭和54年)に制作した「行進曲 朝をたたえて」には2種類のレコードがあります。

 

CBSソニー 06SH563(7吋盤 45回転)市販品、短縮版

朝日新聞  YDSB-10(7吋盤 33⅓回転)非売品、完全版

 

市販品は当時の標準様式(7吋 45回転)の時間内に収録する為に歌詞の2番を省略、配布された非売品はLP盤と同じ回転数にして歌詞を全て収録してあります。家では朝日新聞を購読しており記念作品の事は知っていましたが、新体詩・定型詩を愛好していた私には現代風の歌詞に興味がわかず特に気にも留めない程度でした。

 

ところが、その年の秋にレコード店で市販品のジャケット写真を見て驚きました。それは、1977年(昭和52年)9月11日の夕空と思われる光景であり、ジャケット写真を記憶して帰宅し私が2年前に撮影した該当の写真を取り出して見ますに正しく同一。同じ日の同じ時刻に壮大な夕空を写された方が他にも居る事に感動しました。現在ならばレコードを購入して帰宅ですが、当時の高校2年生の小遣いではジャケット写真の為に600円の出費は困難でした。趣味の鉄道雑誌、写真のフィルム・現像代・焼増代、SP盤などの出費があり、記念作品故に後刻でも可能と考え購入予定品としながらも後回しになりました。やがて小遣いの余裕が出来て店に赴きますも売り切れ、他の店を探しましたが比較的早く廃盤にて二度と見る事なく終わりました。

 

それでも、夕空の写真が気になり折を見ては探しましたが、中古店でも一度も見た事が無く、国会図書館の音楽資料室でも上手く探せませんでした。それは「朝をたたえて」の曲名しか記憶しておらず、レコード会社も演奏者も記憶していなかったからです。万単位で7吋盤を収集している愛好家に曲名とジャケット写真を伝えましたが、梨の礫でした。私が見たレコードは記憶違いなのかと考えましたが、矢張り曲名もジャケット写真も間違いは無く、日々の多忙から捜索は後手になりました。

 

先日、思い立ちインターネットで探しますと正しく記憶通りのレコードがあり、早速入手して私が撮影した夕空と比較しました処、同一日と判明しました。但しジャケット写真は裏焼であり、私の撮影した写真と比較しますと左右が対称です。「朝をたたえて」に夕空では具合が悪いのか裏焼とした様ですが、この壮大な夕空は私が現在までに見た最も素晴らしい、決して忘れる事の出来ない光景です。

 

ジャケット写真の撮影者・年月日・場所が記されてはいませんが、東京の都心から魚眼レンズで撮影した作品です。私の写真は35ミリのネガカラーフィルムを使用しレンズは50ミリ、場所は杉並区の西荻窪です。この壮大な光景を目にして広角レンズの必要性と、美しい色彩を捉えて残す為の高性能フィルム(ポジ・スライド)の必要性を痛感し、翌年の高校進学を機に写真機材の拡充を図り、放課後は夕空に間に合う様に帰宅して撮影しました。

 

現在でも美しい朝空・夕空は撮影しておりますが、この1977年9月11日に匹敵する壮大な光景は極めて稀です。

 

音楽史研究家 郡修彦

 

レコードの写真

 

1977年9月11日の夕空

 

左右対称の比較、下側の白い帯状の空に注目下さい

 

この比較に42年の歳月を要しました、感無量です