ニューヨークは10月26日 午後4時に到着した。
到着した時、僕は期待で胸がいっぱいだったと思う、と言いたい所だけど、実際は違う。半分は不安でいっぱいだった。生まれてこのかた、一人で海外に旅行をするなんて初めてだったし、その初めてが長期の旅行、しかも大陸横断という、だいぶ無茶なことだったからだ。きっと家族や友人、知人は自分のことを、変なやつと思っているはずである。
最初の試練は、ケネディー国際空港から、自分が泊まるホステル(簡易宿泊所)まで行かなければいけないことだった。飛行機の中、ホステルまでどのように行くか考えていた。電車にするか、バスににするか、タクシーにするか。僕は一番安い電車で行くことにした。
といってもどの電車に乗るのか、ガイドブックにも詳しく書いていなかったので、少し不安だった。ここはアメリカ、友人もいない。僕を知っている人は、まずいない国である。何もかもが新鮮だったし、不安だった。空港を降りてスグに電車は見つかった。ほっと一安心、電車の中は思ったよりも清潔で、イメージしていた雰囲気とはまるで違っていた。
ニューヨークは東京と違いゴチャゴチャしていない。地図をみないでも自分がどのへんにいるのはだいたい見当がつくまち。理由は、きれいに碁盤の目のようにストリートとアヴェニューが別れているからである。だから、迷子になることはない。
僕が泊まる、ホステルは103ストリートとブロードウェイにぶつかったところにある。 簡単に見つかると思っていたけど、なかなか見つからなかった。思い荷物を持っているのと、いかにも現地人とは思えない雰囲気なので、少し焦ってきた。人に道も聞くこともできず、ますます焦っていた。焦るとどういうわけか、地図が嘘に思えてきた。ほんとに、地図に書いてある場所にホステルがあるのかと、あやしくなってきた。
10月にニューヨークは寒い。コートやダウンジャケットを着ていないと、鼻水が出てきそうである。僕は、ダウンなんて着ていなかったから、だんだんと芯から冷えてきた。急いで、バックからダウンを取り出し、急いで着た。ここはアメリカ、僕の知らない街、何をするにしても、てきぱきしていないと、何か犯罪に巻き込まれそうな感じがした。現に、周りには、それほど、きちんとしていない人達がタムロしているし、僕をずっと見ていた。
ようやくホステルが見つかった。外観は工事をしているので、よくわからなかったが、古い建物を改築したものだろうと思った。ホステルが見つかった後の試練は、チェックインである。何を聞かれるんだろうと、少し不安になりながらも、自分は予約をしている者だという旨を伝えた。係りの人は、黒人女性で、くちゃくちゃとガムを噛みながら、色々な質問を僕にくれた。ほとんど、わけがわからず、何て意味、何て意味といっていたら、向こうが下品な言葉を言い出し、こっち不愉快になった。こんなことをしているうちに、やっと部屋のカードキーを渡され、一安心。あの時の僕は、チェックインだけで、気持ちが舞い上がっていた。
部屋に到着。中は意外ときれいだった。ホステルのイメージはダーティーを予想していたが、清潔なシーツに壊れなさそうなベット、鍵がかけられるロッカーまでご丁寧にあった。場所は完璧、これで身の安全は確保された。それだけで、またうれしくなった。部屋を確認した後、シャワールーム、インターネットルームを見て、
少しホステルの周辺を歩いた。外の空気はとても冷たく、少し興奮していた僕の頭にはちょうど心地よかった。これから、一ヶ月もアメリカにいるんだ、何が起こるんだろうと、空港に到着してからの不安が吹っ飛び、期待でいっぱいになったのを覚えている。その期待感の中、近くのピザ屋で、おおきなチーズピッツァを食べ、帰りにスーパーで水を買って帰った。あたりは、もう真っ暗。今日はぐっすり眠れるに違いないと思った。その期待は、簡単に裏切られ、ひどいイビキをする外国人のせいで、よく眠れなかった。横断一日目は、ホステルを見つけるまで、苦労したくらいで、大変なことはほとんどなかった。それにしても、イビキがうるさかったのだけは、僕にとっては大変なことだった。


