腰割り

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腰割りというストレッチもしくはトレーニング方法があります.もともとは相撲の姿勢の一つで,力士が立ち合う時には蹲踞の姿勢から,行司の「見合って」の声に合わせて腰割りの体勢になり,土俵に手をついてぶつかり合うという流れになっています.ですから腰割りとは両足の裏を土俵にしっかりと付けて両方の股関節を外側に開き,深く腰を落とした姿勢という事になります.相撲以外でもトレーニング効果があるとして広く取り入れられており,イチローが打席に入る前によくこの腰割りをやっていますので,腰割りとはあれのことか,と思われる方も多いのではないかと思います.

僕は永年ロードレーサーに乗っていますが,多くの人たちが自転車は太股を使うスポーツと思い込んでいる事を経験します.ですから自転車は良いけれども脚が太くなるから嫌だ,という人も多いのですが,ロードレースの選手で極端に太い大腿を持った人はいません.これはロードレースが有酸素運動を主体とする競技であることが大きく影響していますが,さらにほんとうに強い選手たちは疲労しやすい大腿の筋肉よりもむしろ疲労しにくいお尻の筋肉を主に使っている事も影響しています.ロードレースの強豪選手は例外なくきゅっと盛り上がった立派なお尻を持っています.自転車が強くなるためにはお尻の筋肉すなわち大臀筋,中臀筋,小臀筋と腿の裏側の筋肉いわゆるハムストリングスを上手に使う事がとても重要なのです.

と言ってもこれはそれ程簡単ではありません.腿の前側の大腿四頭筋を意識して使うことは比較的簡単なのですが,日常生活で大臀筋や腿の裏側のハムストリングスを意識して使うことは少ないので,それをうまく使うのには訓練が必要です.僕もこうしたお尻や腿の裏側の筋肉を意識して使うことができるようになったのは最近のことです.そしてこれらの筋肉の疲労を取るためにどんなストレッチが良いかを考えている内に腰割りにたどり着いたのです.自転車に乗る前後にこれをやると,お尻,腿の裏側,さらに脛の裏側の腓腹筋,ヒラメ筋も伸ばされている感じがしてとても気持ちがいいのです.始めた頃よりも深く腰が降りるようになり,股関節が柔らかくなった気もしています.

じつは腰割りをやるようになってしばらくして,たまたまテレビの番組で元プロロードレーサーの宮澤崇史さんが,ある高校の弱小自転車部員を指導するという番組を見たのですが,宮澤さんが自転車部員達に勧めたのが,相撲部の稽古に体験参加することでした.もちろんやせっぽちで経験もない自転車部員が頑強な相撲部員と土俵上で実際に相撲を取れるわけがありません.宮澤さんが彼らにやらせたのが腰割りと四股踏みだったのです.宮澤さんいわく「相撲の稽古には,自転車が強くなる秘密が沢山隠されている」.さすがです.じっさいにこの自転車部員はその後の大会で好成績を上げたそうですが,たしかに相撲など伝統ある格闘技や武術には貴重な知恵が隠されています.僕は腰割りの他に,武術で強調される丹田を意識した呼吸法も取り入れていますが,登り坂で追い込んで苦しくなった時の呼吸に役立っているようです.スポーツの面白さの一つが,自分の身体を使っていろいろなトライアル,実験をできることです.次に取り入れるのは,やはり四股踏みでしょうか.

画像は「筋トレTIPS」からです.
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