日本武道館。
かつてビートルズが公演したことで一躍有名となった会場です。
そこでライブをするというのはアーティストにとって伝統的な登竜門であり、一つの到達点でもあると言えます。
「推しが武道館行ったら死ぬ」
オタクの界隈では定番となっているこの表現ですが、先日私も身をもって体感してまいりました。
感無量でした。
多くは語りませんが、今まで参加したどの興行よりも素晴らしいものだったと自信を持って言えます。
私はもう大人なので何とかなりましたが、まだ中学生とかだったら女性アイドルになりたいと言っていただろうと思います。
それほど推したちはまばゆく輝いていました。
ちなみに今回は初めて友人と参加したのですが、友人はそのアイドルのことをあまり知らない状態でした。
せいぜい2、3曲知ってるかな程度です。
そんな状態で極彩色のグッズに身を包むオタクたちがひしめく魔境に身一つで乗り込む彼の度胸は賞賛すべきと感じました。
せめてもの抵抗でスポーツユニフォームっぽい服を身にまとい、一瞬そういうグッズかと思わせてくるその小賢しさもまた彼の生存戦略なのでしょう。
しかし、度胸が先行するあまり彼にはブレーキがついていません。
具体的にはモラルが欠けていました。
「俺○○色(個人名)の良さだけはわかんねえわ(クソデカ声)」
周囲の視線が突き刺さります。
彼を二度と喋れない状態にすべきかと逡巡しました。
オタクは奥ゆかしい生き物ですのでその場で攻勢に出ることはありませんが、同時に仲間意識が強くネットにも強いので、こんなことをオタクのお膝元で言おうものなら確実にネット上で「お気持ち」という名のつるし上げを食らいます。
さらに、ライブ中アイドルがステージ周辺を練り歩く時間があったのですが、彼のお気に入りアイドルが少し遠くにいるとき、隣から
「おい‼️こっち来い‼️おい‼️」
という声が聞こえてきました。
神聖な舞台にチンピラが紛れ込んでしまったのかと思いました。
叙述トリックを期待されるのも嫌なので先に言いますが、彼は海外の方でも北九州の方でもありません。
しかしこのアイドルを知らないはずの彼が、曲を重ねるにつれ完璧にコールを打つようになっていきました。
彼には数々のアイドルの現場に行ってきた叩き上げのスキルがあり、その経験だけで戦っていたのです。
粗暴で無知ではあるが、経験に裏打ちされたスキルを持つ男。そんな主人公のような男とともに参加したライブは筆舌に尽くしがたい楽しさでした。
その後、別の友人を交え、打ち上げを兼ねて居酒屋へ。
その友人は、一緒にライブに行った友人よりもさらにアイドルに疎く、メンバーの名前すら知りませんでした。
ミリしらというやつです。
しかしそんな友人も代表曲は知っていたようで、有名なフレーズを口ずさむなどしてくれました。
こんな興味の薄い層にまで届いているんだと、大きくなったねと、しみじみと目頭を熱くしました。
そんな友人が、興味深いことを言っていました。
曰く、
「なんか一人ダンスやる気ない子いるよね。あいつ嫌い」
どうやら興味の薄い方にはそう映るようです。
なるほど勉強になりますね。
しかしここではいそうですかと引き下がっては武道館で大成功を収めた彼女たちに示しがつかないだけでなく、友人はそのアイドルがやる気がないんだと思ったまま死んでいくことになってしまいます。
それは良くない。
愚か者にも分かるように毅然とした態度で説明をしてあげることが、友人としての務めだと感じました。
よろしいですか、スポーツでも仕事でも、チームで動くものには各々の役割というものがあります。
アイドルにも同じことが言えます。
歌が上手な子、ダンスが上手な子、MCが上手な子、視野が広い子。そのすべてのピースが上手くそろってチームなのです。
彼女はその役割の一つをただ全うしているに過ぎないのです。
スラムダンクを読んで「この赤木って選手はやる気がないからスリーポイントを打たないんだ」と思う人がいますかという話です。
素晴らしいチームスピリットだと称賛すべきことであり、そのような言葉をかけるとは全くもってナンセンス。
別にその子が私の推しだから、ことさら声を大にして言っているわけではありません。
そういう次元の話をあなたはしているんですよということを、この画面を通じてあなたの目を見て私は言っています。
第一、彼女はすでに押しも押されもせぬ武道館アイドルであり、紅白の出場も果たしたトップアイドルです。
言ってみればその道のプロである彼女が、パフォーマンスの要であるダンスのやる気がないだなんて私には思えません。
いつも頑張っていて偉いと思います。
それに、顔が良くて歌が上手いという絶対的な長所があるので、何を言われようとも私には響きません。
対戦ありがとうございました。
と、オタクはこのようにお気持ち表明をするわけです。
ご参考になりましたら幸いです。
以上、厄介オタクによる実例でした。
それでは。

