高円寺
『書肆サイコロ』







【デザイン事務所兼
本を手掛ける出版社であり
古本や古道具も販売する店舗】



はて?
いったいぜんたい
どんなところなんだろう?



教えてもらわなければ
出会うことのなかった場所を



音のない雨ふる2月、日暮れ前



スマホの地図を頼りに訪ねました







凍える外から
温かで、しずかな店内へ


ちょうど
大谷一良氏の
版画展が開催中で


壁に展示された原画は
山をモチーフにしたもので
その
若々しい色遣いや絵のタッチを前に


つめたい雨を浴びたことも忘れて
胸が高鳴る






そんな一角


そっと
テーブルに置かれた
青い装丁の鳥の本が
あまりに美しく


目を奪われて手に取り
うわぁ〜と
感嘆の声をあげました


「それね、いいでしょ
わたしも同じの持ってるの」


すかさず傍にきて


「綺麗よねぇ
ワクワクするよねぇ
やっぱり本はこうでなくっちゃ」


声をかけてくださったのは
夏色インコさん


uguisuさんの個展には
残念ながら
所用でご一緒できなかったけれど
こちらを訪ねる時間には
間に合いました






レジ横には
ぬいぐるみかと見紛うほどおとなしい
看板犬のクロちゃん



しばし続く
本好きふたりと、店主の会話を
まったりと
慣れた様子で
聞き流していました



そこから
店主さんオススメの
焼鳥専門店に場所を移し






腰を据えての
濃密な語らい







新鮮で大振りの焼鳥を堪能しながら
あれやこれやと
ほんとうに話が尽きなかった



なかでも






インコさんのレビューが
とても素晴らしくて
観たいなぁと思っていた映画
『PERFECT DAYS』



「ぜひぜひ観てほしい〜」


と、言われ
そこから多岐に渡った多様な話が
愉しすぎて
時間があっという間に過ぎてしまいました


そして
直後の月曜


まるで
”ここで行くべきでしょ”
と、言わんばかりに
ポカンと空いていた一日







隣駅の映画館で
一人で観てきました


役所広司さん演じる
平山、という
トイレ清掃員


彼の辿ってきた人生が
つまびらかになることは
結局
最後までないのだけれど


彼の部屋が
彼の好む音楽が
本が
写真が
植物が
缶コーヒーが


そして
木漏れ日が


映像を通して
わたしたちに
”感じろ”
”想像しろ”
”慮れ”
と、しんしんと
訴えかけているようで


わたしは
その静かで台詞の少ない映画を観ながら
頭の中でずっと
彼の人生を
必死に
思い描いていました


こんなに頭を使いながら
映画を観たのは
はじめてです


答えは教えてくれないし
あったとしても
それぞれに委ねられていて
自由なんだろうけれど


できるだけ
正解を見つけたくて
いっぱい考えました


わたしなら
彼は”こう生きてきた”と
書きたい
と、思いながら


だからか
平山が
今もなお
体に染みついて離れません


未だにふと考えている自分がいます


観終わって
しばらく経っても
映画のことを考えてしまう


こんな経験は
思えば
高畑勲監督の
『かぐや姫の物語』
を観て以来かもしれません


さて
ここで改めて
インコさんのレビューを読むと


どちらかというと
作り手側
カメラを回す側の視点で
映画を堪能されていて


それはまさに
以前『シャボン玉ジャーニー』で書いた通りの
インコさんのイメージで





ほんとうに
根っからの作り手なのだなぁ、と
大きく納得したのでした


いずれにせよ
わたしも
とんでもない映画に出逢ってしまった
と、感激した次第です


長々と書き連ねてしまいました


ここまで
読んでくださり
ありがとうございました





自分へのバースデープレゼントとして
こちらの本、求めました


そこに在るだけで
しあわせなきぶんです