学校の授業から 江戸の物産、ちょっとした誤解 | こはにわ歴史堂のブログ

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朝日放送コヤブ歴史堂のスピンオフ。こはにわの休日の、楽しい歴史のお話です。ゆっくりじっくり読んでください。

今、中学三年生の授業では、江戸の産業の話をしています。
本校は私立の一貫校ですので、高校の日本史を先取りしていて、やや細かい話もします。

田沼意次は、長崎の貿易を奨励した、とは、前にちょっとお話ししました。
貿易の奨励、とは、一般に輸入をたくさんする、ということだけでなく、輸出をしっかりする、という意味でもあります。
つまり、貿易を黒字にする…

貿易とは、自国に無いモノを輸入し、自国に有るモノで他国に無いモノを輸出する、ということです。
ですから、当時日本は、世界最大の銅産出国でしたから、「銅」を輸出する、ということをしました。
それから、中国でたくさん消費しているわりには、日本では消費が少なかったものも輸出する、ということをします。それが「海産物」で、乾燥させたものなどを含む「俵物」とよばれるものを重要な輸出品としました。

「俵物」としては、イリコ・干し貝柱・干しアワビが有名で、これは当時、日本ではあまり消費されなかったものの、中国では食材として重要なものでしたので、当然、たくさん中国が買ってくれました。

長崎貿易、というと、ついついオランダとの貿易? と考えがちですが、長崎では中国との貿易量はかなりを占めていました。

その「俵物」の中の

 イリコ

ですが、これが学校の先生や塾の講師でも誤解している場合があるので申し上げておきますと、いわゆる「イリコ出汁」のイリコではない、ということです。
このイリコは、

 なまこ

の干したモノのことなんです。

アワビ・カイバシラ・ナマコ、などを乾燥させたもの、これが「俵物三品」でした。

カンテン、コンブ、カツオブシ、スルメも「俵物」に含まれます。

さて、「鎖国」は極端な保護貿易ですので、鎖国を通じて、開国時に世界に通用する、国際競争力が高い商品が育つことになるのですが、「生糸」などがその代表例でした。

もともと鎖国前は、生糸は輸入品てしたが、開国時には最大の輸出品となっています。また、茶などもそうで、「生糸・茶」は開国時の二大輸出品となりました。
安くて質が高い、というわけです。

紅茶、ウーロン茶、緑茶についてのちょっとした誤解を言うと、これらはみんな同じ茶で、発酵させたものが紅茶、半発酵させたものがウーロン茶、そのまま乾燥させたものが緑茶なわけです。
ですから、日本の茶も、発酵用、半発酵用として使用されました。

染料として有名な紅花は、平安時代には現在の千葉県あたりでも栽培されていたようですが、江戸時代は、出羽国、つまれ現在の山形県が特産地となりました。
紅花は、基本的には見た目は黄色で、紅色ではありません。これも染料としては発酵させてつくります。
藍染めも、タデ藍を発酵させて作った染料で使用します。
江戸時代の代表的な染料の原料となる紅花・藍は、その汁をしぼってそのまま使うのではなく、発酵させているわけです。

ここまで説明すると、ははぁ~ん、こはにわは「四木三草」の話をしているんだな、と、ピンとくる人もいると思います。

江戸時代の代表的な商品作物は「四木三草」といい、

桑・茶・漆・楮・紅花・藍・麻

が、それらです。

桑は生糸をつくる蚕のエサ、茶の話はもうしました。紅花と藍はしました。楮は、「こうぞ」と読み、和紙の原料となります。

さてさて、漆、なのですが、これはもちろん「塗り物」に使用されるものです。

Chaina

と、頭文字を大文字にするとこれは中国のことですが、

china

と、小文字で表記するとこれは「陶器」のことになります。

で、

Japan

と、頭文字を大文字にするとこれは日本のことですが、

japan

と、小文字で表記するとこれは「漆器」のことになります。

その国を代表する産品がその国の名で呼ばれる… (そういえば、昔、東南アジアでは自動車のことをトヨタ、と呼んでいたことがあります。)

ところがですね、漆は、塗り物として使用される以外にも用途があり、こちらのほうが日用品としてよく利用されていました。

「漆は塗り物に使用していたんだよね。これはすぐわかるよね。」と話が終わってしまうと、ちょっと当時の漆の用途の説明としては不十分です。

和ロウソクの原料は、「櫨(はぜ)」という植物の実なのですが、そもそも「櫨」はウルシ科ウルシ属の植物なんです。(やはりアレルギー反応を起こしてしまう)
ですから、江戸時代は、漆の実からもロウをとっていたので、漆は、ロウソクの原料としても大量に使用されていました。

さて、産業の発達、とはすなわち、役割分担の細分化、社会的分業が進むことでもあります。
かんたんに言うと、専門・専用の「~屋さん」が生まれる、ということです。

農具も、もともとは農家が自前で作っていましたが、「専用の農具」をつくって売る職人と商人があらわれます。
商売、と、なると、価格競争と品質競争を生み出しますから、そこに人の“知恵”がこめられます。よって、鍬も、深く耕すことができる備中鍬が生まれますし、能率よく脱穀する千歯扱も生まれました。唐箕や千石どおしなども開発されていく、というわけです。

さらに「肥料屋さん」も登場します。農家で「つくる」肥料から、「買う」肥料、つまり金肥が開発されるようになりました。

で、よく誤解されるのが

 干鰯

です。単に「これは、イワシを干したやつだよ」と説明すると誤りです。

これも“発酵”させて作るんですよ。イワシを乾燥させてハイ、できあがり、みたいな単純なものではありません。カツオブシも、鰹の身を乾燥させたらできる、と、思っている人がいたら大きな誤解です。

現在あるモノと江戸時代のモノ… 同じモノもあれば、ちょっぴり違うモノがあり、誤解してしまっているものもあるので、「ちょっぴり」注意が必要です。