塾で教えていた小学生の生徒に、こんな質問されたことがあるんです。
「先生、藤原道長って、偉いんですか?」
「え?」
「いったい何をして偉いんですか?」
ある意味、“衝撃”の質問でした。
その子に言わせれば、こういうことです。
聖徳太子は十七条憲法や冠位十二階を定めた。
中大兄皇子は大化の改新を始めた。
聖武天皇は大仏を建てた。
藤原道長は何をしたの??
「何か有名な本とか書いたのですか?」
清少納言は『枕草子』を著した。
紫式部は『源氏物語』を著した。
藤原道長は何か書いたの??
「何かすごい建物とか建てたのですか?」
足利義満は金閣を建てた。
足利義政は銀閣を建てた。
藤原道長は何か建てたの??
小学生が使う教科書は、「やったこと」「建てた(つくった)もの」「書いたもの」でだいたい人物は整理できます。
道長の業績って何でしょう?
小学生にわかるような、「業績」がよく考えると無いんですよね…
娘を天皇の后として、生まれた子を天皇とする。
子どもが幼いときは摂政、成人後は関白となって天皇の代わりに政治をしたり天皇を助けたりして政治をした。
ちなみに、別にこれは道長が藤原氏で初めておこなった「技」ではありません。そして道長は「摂政」にはなりましたが「関白」はしておりません。
ちなみに書いたモノでは、すごいものがあります。
にゃんたのマル秘ファイルとして取り上げた『御堂関白記』は、番組の中でも紹介されましたが『世界記憶遺産』になりました。が、しかし、それは昨年のこと。「それまでの」教科書には取り上げられていません。
彼が建てさせた法成寺、という、この世に極楽を再現した寺院は、現存していません…
自分の娘三人を天皇の后にして、生まれた子を天皇にした。
この世をば わが世とぞ思う もち月の欠けたることも なしと思へば という歌を詠んだ。
「これって偉いことなんですか? 何か世の中のためになったのですか?」
子どもは、かぎとったんですよね。教科書の中に出てくる人物のうち、藤原道長だけにある、うっすらとした「違和感」を…
少なくとも、聖徳太子・中大兄皇子・聖武天皇・清少納言・紫式部・足利義満・足利義政らとは、何か違うところを教科書の記述から感じ取ったのに違いありません。
「藤原氏のため」と「自分のこと」しか感じられない…
この点、コヤブさんも感じ取られたようで、「この人、ほんまにそんなにすごい人なんですか?」と言われたときは、塾で子どもに言われたことを思い出しました。
役人を呼びつけておいて「え~と… 言うこと忘れた」とか…
天皇に土葬にして、と、たのまれたのに、忘れて火葬にしちゃったとか…
子どもに自分が知らないことを言われたけれど知ったかぶりをしたとか…
仮病を使って仕事を休み、競馬を見ていたとか…
にゃんたのマル秘ファイルとして取り上げられた『御堂関白記』『小右記』『権記』などにみられる道長像は、いずれも「権力者の凡庸」をよく伝えていると思います。
「そういや、藤原道長さん… 何が偉いんだろ…」
他の人物について小学校の教科書が伝えているような「業績」は、藤原道長さんの場合は記述されていない、というのは確かですね。