何以笙簫黙第 6 章 離合(6) | アジアドラマにトキメキ!

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第 6 章 離合(6)

 

何以琛は携帯電話を片付け始めドアを押して中に入って行く。

 

対外貿易会社の李総は入って来た彼を見るとすぐに立ち上がり「何弁護士、君は抜け出して何処に行っていたんだね。来てくれ、お酒を一献差し上げる。今日の交渉は本当に素晴らしすぎだ」と、酒を勧め以琛は笑って応対し、結局一同とグラスをカチンと合わせた。

只の少しのお世辞を言い、体裁の話に過ぎない一時間あまりを過ごして李総は言う

「何弁護士、見たところほとんど食べ終わったようだ。場所を替えた方がいいと思うがいかがかな?」

同席してる男性達からはすぐにやむを得ず納得したような感じの曖昧な笑いが起こった。

彼らの様子を見れば、そこがどんな所なのかは聞くまでもなくわかる以琛は大急ぎで言う「李総、皆さんは行ってください。私は先にホテルに戻ります」

「何弁護士、この説明では足りない」李総は故意に怖い表情をする。

以琛は苦笑して説明する「実はうちの妻の管理は厳しくて、ほら、今もまめにチェックの電話を掛けてきた。もし、ホテルに私が居なかったらすぐに責められてしまう。家に帰っても恐らく平穏では居られないでしょう」

同席の男性たちには一つの憂いが心に現れ、そこで初めて他人事でない表情になった。

李総は言う「何弁護士が堅持する以上、これについてもはや無理強いしないことにする。小楊に送らせましょう」

小楊運転手が彼を送るつもりで立ち上がったのを以琛は遠まわしに断る。

「いいえ。ホテルは遠くないので歩いて戻ります。路上で夜景を眺めようと思っています」

 

やっとのことで離れらても以琛はホテルに戻りたくなくて歩みを変えて逆方向に進む。

 

廣州はとてもきらきらと輝く都市で簡単に目が眩んでしまう。

方向を見失った以琛はある広場までそぞろ歩き、ひっきりなしに往来する老人、アベック、若い人、その騒がしさを楽しむ中で静けさを求め始めた時、起きた突然の一瞬の光に以琛が振り向くと、近くに居た人が写真を撮っていた。

二人の学生らしき少女や、観光客らしき人が広場で記念に残す写真を撮っている。

 

以琛はわけもなく彼女が思い浮かんだ。

 

初めて彼女を見かけたのはやはりこんな一瞬の光。

 

それに目を向けると、一人の少女がカメラを持ち上げ目を細めて笑い自分を見ている。誰もが隠し撮りされるのはあまり嬉しいもんじゃない。当時の自分は何も言わずにただ眉を顰めて彼女を睨み付けた。

当初、びくびくしていた彼女は自分に向かって目を見開いて堂々と立ち上がり、悪者が先に説明を申し出る「あっ。素敵な風景を撮っていたの。あなたはどうして急に飛び出してきたの?」

少し怒っていた自分は彼女にこう言われて、怒っていたのにどちらかと言えば笑っていた方がいいのかと、本当にわからなくなり仕方なく彼女を無視して歩いて離れるのを選んだ。

思いがけず彼女が追いかけて来て問いかける「ねぇ、何で離れたの?」

今回の場合、反撃に転じないのは正しくないと考える法学部の優等生は「君は風景を撮っているんじゃないのか?その場所を君に渡すよ」

彼女の顔はすぐに赤くなり、訥々と話す「わかったわ。あなたを隠し撮りしたことを認めます」

誤りを認めたとみなして理解してもらいまあまあ助かる見込みがあった。

 

以琛は大きく足を踏み出すが、彼女は悠々と追いついてしまう。

暫く歩いてから以琛は我慢できずに振り返り言う

「君は一体どうしてついてくるんだ?」

「あなたはまだ私に名前を教えてないでしょ。学部も」彼女は悪びれずに言う。

「何故、君に教えなきゃいけない?」

「教えてくれないなら、どうやって写真を渡せばいいの?」

「いらない」

「ええっ」彼女は頷いてから全く大したこと無いように

「それなら、現像できたらあちこち尋ねて行くしかないわね」

彼は信じられずに

「止まれ」

「どうして?あなたを見つけられないことを心配しているの?」

彼女は焦らないで、みたいな感じで

「大学には何万人もの人がいるけど有志者事竟成(為せば成る)よ。一人ずつ尋ねて行けばあなたに辿り着くでしょ」

それをされたら学校で人に混じる意味がない。

以琛は悔しい気持ちで「何以琛。国際法二年」言い終えて、振り返って離れて行き遠ざかってもまだ彼女の笑い声が聞こえてきた。

 

二日過ぎ、思った通り自分を探しだし、貴重なもののように写真を取り出すと、夕日の下で考え込む自分の姿が写真の中に居た。

「見て見て。光と影の効果をこんなに上手く処理したのは始めてなの!陽の光が木の葉を透けているが見える?」

自分はむしろ写真を見ずに顔を上げ、彼女の顔にかかる煌めく陽の光を見ていた。こんなに粗野で理不尽、挨拶さえできないに、幾重にも重なった煙霧を通り抜けて自分の心の底に差し込んで拒絶することも間に合わなかった。

 

彼女は自分の薄暗い人生の中の唯一の一縷の陽の光だった。

 

ただし

 

この細い陽の光は唯一自分を照らしてはいなかった。

 

 

離れている七年で別の男が・・・

 

以琛は目を閉じる

 

認めろ

 

何以琛。

 

お前は嫉妬で狂っているんだ

 

 

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第六章は終わりです

次回から第七章に入ります

 

何時もありがとうございます