第 6 章 離合(5)
結婚三日目の夜、黙笙は以琛の家のリビングで自宅から運んで来た山積みの荷物を前にぼんやりとする。
こっちはキッチンに片付けて、これは書斎に置いて、それからこの撮影機材は・・・
彼女には暗室が一間必要。
洋服はどこに片付けれがいい?
ベットルーム?
彼に電話して聞いてもいいのかな?
彼女が電話をじっと見つめて暫くすると悠々としたチャイムが鳴る。もしチャイムでないなら双方の違いは非常に大きい。
黙笙はほとんど反射的に携帯電話を手に取りドアを開けてぎょっとする。このラフな恰好の女性を彼女は覚えている。突如、小紅の言葉”悪賢い人”が浮かぶ。若い女性も黙笙を見てかなりいぶかり、痕跡がはっきりないか観察して「以・・・何弁護士は居ませんか」と問う。
「彼は出張です。あの、こちらに来て座りませんか?」黙笙は丁寧に言う。
「はい。じゃあ遠慮なく」彼女は中に入って名乗る「私は文といいます。かつて何弁護士に担当していただいて、この階下に住んでいます」
文嬢は黙笙を見て幾らか疑って「私たちは会ったことがありますか?」
元々、彼女がやって来るのを知らなかった黙笙は頷いて、彼女たちが知っている人を提起する「顧行紅」これは小紅の名前。
「そうだ、確かあなたはあの彼女の見合いの付き添いをしてた人!」文嬢は目からうろこが落ちる思いがして又、何か思うことがあるように言う
「元々、あなたと何弁護士は知り合いだったのね。道理で」
黙笙はその言葉の意味が理解できなくて彼女を見つめる。
文嬢は眉をそびやかして
「道理で何大弁護士が私の退勤後、裁判の話をするのに直々に迎えに来て会うわけだわ。なんだ”醉翁之意不在酒(真意は別のところにある)”だったのね。あなたのおかげだったのか」
彼女は手の中にある袋を黙笙に渡そうとする「私が作ったワンタンなの。多かったから持って来たんだけど・・・ほんとにもう、そのせいで無駄に凄く勘違いしちゃった」
このお姉さんは見かけ可愛らしく柔和だけど、話してみるとむしろ率直できびきびしている。
彼女と小紅の口論については見て知っている。別に肯定もしないし否定もしない、かなりやっかいだけど。
文嬢は手を振り言う「このまま行きますね」
黙笙が彼女を玄関まで送ると彼女は突然小紅の事を尋ね始める「彼女の見合いはまだ止まらない?」
黙笙は彼女の目の中に僅かにある関心を捕らえ、首を振って答える「いいえ。決まりそうです」
文嬢の目が光り「ゲームソフト関係の人じゃない?」
「いいえ。外科医ですよ」
「それは良かった」文嬢は一息ついた様子で「彼女はやっと諦めがついたのね。私を恨まないでと伝えて。あの男の愛は私のものじゃなかったのよ」ここで更に前言を取り消すことを言う「いいえ。今はまだ彼女に知らせる必要はないわね」
彼女は去り、黙笙は手の中のワンタンを見つめて僅かに躊躇い電話を掲げて以琛の携帯に電話を掛ける。
電話は3回鳴った後繋がる。
「もしもし」彼の沈んだ声が聞こえてくる。
「もしもし」黙笙は返事をした一声で、自分の声が何時もと違うことに気付き慌てて落ち着いて続ける「私です」
「何か用か?」
「ええ・・・この・・・今、階下の文さんからワンタンを一袋いただきました。それから、前回助けていただいてありがとうございました。と、言ってました」
言い終えて、ほかでもなく自分自身で選んだと承知しているのに最悪の始まりになったと、悩んでも既に間に合わない。
思った通り、そこで数秒押し黙り、彼の茶化すような声が響いてくる「君は何を疑っている?安心しろ。例え、かつて彼女に対してどんな考えを持っていたとしても、それは未遂に終わっている」
言わんとすることは、黙笙はこの”巳遂(既に成功)”した人で彼に尋ねる資格が無い、ということなのだろう。
黙笙は理性的に話題を変え始める
「あなたに聞きたいことがあるの。納戸を暗室に模様替えしてもいい?」
「任せる。まだ何か重要なことはあるか?」
「ある・・・うん。私の荷物は何処に置いたらいい?」
少し止まってから
「何夫人。君の夫は心身共に健康だ。暫くは別々に住む予定はない」
彼は皮肉を言う。
この電話には全くとんでもなく酷い思いをすることになった。黙笙は携帯をきつく握りしめ最後に聞く
「いつ頃戻ってくるの?」
「・・・金曜の夜に」
「はい。待ってます」
黙笙は深く考えもせずに即座に口走ったが、言い終えてからこの言葉には裏の意味を含んでいることを意識して思わず息を殺す。
黙っていると吐き出すようなせわしない音が聞こえてきて黙笙は茫然とする。
彼はこのような時に電話に出ていた!
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以琛の言葉に「暫くは別々に住む予定はない」とあるんですが
ドラマの字幕には「暫く」っていうフレーズはないんですよね
有ると無いとでは受ける印象が全く違うような気がする。
あったら私なら五寸釘10本以上のダメージかな・・・
よくよく聞いてみると「暫時沒有・・・」って言ってはいるのね・・・
始めてドラマ見て字幕で「暫く」っていう字幕があったら以琛のイメージをさらに冷たく感じたと思う
なんかこだわってみた・・・
なんか刺さったんだよねこの場所が・・・(笑)