読書記録 -2ページ目

読書記録

ノンフィクションの読書記録(書評)

『盛り場はヤミ市から生まれた・増補版』橋本健二/初田香成編著(青弓社)

 

戦後の闇市(ヤミ市)を多角的に論じた学術書。

 

以下、個人的なメモです。

引揚者

テキヤ

戦勝国人(朝鮮、中国、台湾)

 

ケーススタディ

新橋 アリ

有楽町 ナシ

上野 ナシ

『唱歌の社会史』永澄憲史ほか(メディアイランド)

 

複数の著者による唱歌論であり、また座談会や唱歌の歌詞と解説なども収録されている。

先日読んだ『歌う国民』が興味深かったので、つづけて唱歌をテーマにした本書を読んでみた。

 

やはりこの本でも、近代国家をつくりあげていく上で、唱歌に託された役割について何度も言及されている。

近代国家、国民国家といっても、実際に人々は自分の生活圏を除いて国の様子など知らない。

国家とはあくまでも想像の空間である。

その想像を強力に手助けするものとして唱歌はつくられた、というのだ。

日本中の子どもたちに歌わせてイメージを植え付けるわけだから、唱歌にはほとんど固有名詞が出てこないという。

また歌の前半は季節感たっぷりに日本の情景を描き出し、後半になって国威発揚というか、帝国主義的な本音をあらわにするのも、唱歌のひとつの典型的なかたちだった。

 

『鉄道旅行のたのしみ』宮脇俊三(角川文庫)

 

宮脇俊三(1926年~2003年)は私のもっとも好きな作家のひとりだ。

ひたすら鉄道紀行を書きつづけた人だが、別に私は鉄道ファン、鉄道マニアというわけではない。

私にとって宮脇の魅力は、まず文章のうまさだ。

それも、「どうだ、うまいだろう!」という名文ではなく、名文であることを読者に意識させない、本物のうまさである。

またそこはかとないユーモア、ゆたかな歴史的知識も読んでいて楽しい。

というわけで宮脇の主だった著作はほぼ読んだと思うが、何冊か抜け落ちているものもある。

今回読んだのはそんな1冊だった。

この本は「旅」そのものではなく、前半は日本各地域の鉄道の特色を語るエッセイ、後半はさまざまな駅のルポルタージュで構成されているのだが、もちろん宮脇らしさは随所に発揮されている。