『鉄道旅行のたのしみ』宮脇俊三(角川文庫)
宮脇俊三(1926年~2003年)は私のもっとも好きな作家のひとりだ。
ひたすら鉄道紀行を書きつづけた人だが、別に私は鉄道ファン、鉄道マニアというわけではない。
私にとって宮脇の魅力は、まず文章のうまさだ。
それも、「どうだ、うまいだろう!」という名文ではなく、名文であることを読者に意識させない、本物のうまさである。
またそこはかとないユーモア、ゆたかな歴史的知識も読んでいて楽しい。
というわけで宮脇の主だった著作はほぼ読んだと思うが、何冊か抜け落ちているものもある。
今回読んだのはそんな1冊だった。
この本は「旅」そのものではなく、前半は日本各地域の鉄道の特色を語るエッセイ、後半はさまざまな駅のルポルタージュで構成されているのだが、もちろん宮脇らしさは随所に発揮されている。