『植物はそこまで知っている』を読む  2020年8月8日(土)

 

 ダニエル・チャモヴィッツ『植物はそこまで知っている 感覚に満ちた世界に生きる植物たち』矢野真千子訳2013を読みました。ダニエル・チャモヴィッツは、テルアヴィヴ大学教授、及び同大学マンナ植物バイオ科学センター所長。アメリカ合衆国ペンシルバニア州育ち、コロンビア大学を卒業後、エルサレム・ヘブライ大学で遺伝学の博士号を取得、と著者紹介には書かれていました。世界各国の大学で講演をされている人だそうです。内容は少し難しいのですが、最先端の植物研究のことが少し分かりました。

 

プロローグ

1章 植物は見ている

     植物学者ダーウィン

     成長をやめないタバコ

     日の長さを測る

     分子遺伝学から見た植物の視覚

     概日リズムの進化的な起源

2章 植物は匂いを嗅いでいる

     エチレンの信号

     食の好みにうるさい寄生植物

     葉は盗み聞きするのか?

     植物はコミュニケーションしているのか?

3章 植物は接触を感じている

     ハエトリグサの罠

     水圧で葉を動かす  

     接触によって活性化する遺伝子

     植物とヒトの「感じ方」

4章 植物は聞いている

     音楽と植物の疑似科学的な関係

     植物にもある「難聴」遺伝子

     植物の進化に聴覚は必要か?

5章 植物は位置を感じている

     上か下かを知る遺伝子を探せ

     人の耳石、植物の平衡石

     宇宙での実験

     釣り合いをとりながら育つ

6章 植物は憶えている

     ハエトリグサの短期記憶

     長期記憶、またはトラウマ

     エビジェネティクス

     世代を越えて伝わる記憶?

エピローグ  植物は知っている

 

 本格的な、植物研究をされている方が書かれた本です。論文ではなく、一般の人達に分かりやすく言葉を選んでやさしく解説をされています。植物と動物の遺伝子情報は、多くの所が共通していて、進化のどこかの地点で、生き方を違えてきているということが分かりました。

 この本を読んでから、少し前に買って置きっぱなしになっていたオジギソウの苗を、植木鉢にきちんと植え直しました。しばらく机の近くに置いて、オジギソウの動きの観察をしてみようかなと思います。植物は、見えているのか、匂いを嗅いでいるのか、触れられたことが分かるのか、聞こえているのか、覚えているのか、上下をどうして感知しているのか等を、科学的な研究を取り上げて紹介をしています。植物には脳がないので、記憶があるのかないのか、その記憶は、もしかしたら遺伝子に記憶していくのかどうか、考えさせられる話ばかりでした。人間にとっての、見える、聞こえる、記憶するなども、では一体どのようにどこに記憶しているのかとなると不思議なことばかりです。

 宇宙はどのように始まったのか、原子分子とは何か、生命がなぜ存在するのか、一瞬にして宇宙が消えることがあるのか等々、不確実な状況の中で、私たち生命が存在していることに、驚くばかりです。私がいることの不思議と、タンポポが咲いていることの不思議は、殆ど同じだけの不思議を抱えていることになります。