数学の超難問「ABC予想」を証明 2020年4月4日(土)
京都大学の数学者望月新一さんが、すごい論文を発表したと報道がありました。テレビで見ていると、「ノーベル賞が何個あっても足らないほどの成果」だそうです。取り敢えず、新聞記事からその概略を理解するようにします。(ネット毎日新聞)
●未解明だった数学の超難問「ABC予想」を証明したとする望月新一・京都大数理解析研究所教授(51)の論文が、同所が編集する数学専門誌に掲載されることが決まった。3日、京大が発表した。ABC予想は、素因数分解と足し算・かけ算との関係性を示す命題のこと。4編計646ページからなる論文は、斬新さと難解さから査読(論文の内容チェック)に8年かかったが、その正しさが認められることになった。有名な数学の難問「フェルマーの最終定理」(1995年解決)や「ポアンカレ予想」(2006年解決)の証明などと並ぶ快挙となる。
●望月教授は2012年8月、構想から10年以上かけた「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」の論文4編を、インターネット上で公開した。これを用いればABC予想など複数の難問が証明できると主張し、大きな注目を集めたが、既存の数学が存立する枠組み(宇宙)を複数考えるという構想はあまりに斬新で、「未来から来た論文」とも称された。加えて、1000ページを超える望月教授の過去の論文に精通しないとIUT論文を読み解くことは難しく、理解できた数学者は世界で十数人しかいないと言われている。
●「天賦の才能を持った人」望月新一・京都大数理解析研究所教授=京都大提供
望月新一教授は1969年3月、東京生まれ。5歳の時、父親の仕事の関係で渡米し、16歳で米プリンストン大に飛び級入学。19歳で同大大学院に進み、「数学界のノーベル賞」と言われるフィールズ賞受賞者のゲルト・ファルティングス氏に師事した。23歳で博士号を取得後、帰国し、京大数理解析研究所の助手に採用されると、96年に助教授、2002年には32歳の若さで教授に就任した。数論幾何学の業績は早くから認められ、45歳未満の研究者を対象に04年度に創設された日本学術振興会賞の第1回受賞者となった。これまでメディアへの露出を避け、近況をホームページやブログで時折発信している。
●公私にわたり親交の深い加藤文元・東京工業大教授(数論幾何学)の話・・「普段は気さくで『普通』の人。ただし、特に数学に関しては、物事を非常に深く見つめ考える天賦の才能を持った人」と評する。「(望月教授が提唱し、ABC予想を証明した)IUT(宇宙際タイヒミュラー)理論は、数学界の『革命』と言っていい。ノーベル賞が何個あっても足らないほどの成果だ」とたたえた。
●英ノッティンガム大のイワン・フェセンコ教授(純粋数学)の話・・宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論は全く新しい視点と、整数の足し算とかけ算の関係についての深い理解に根差している。今世紀、数学界で得られたいかなる業績より数段上の成果だ。それが日本から生まれたことはすばらしい。この成果は何百年後にも記憶され続けるだろう。
●ABC予想とは 1985年に欧州の数学者が提示した整数論の問題。「a+b=c」となる互いに素な(1以外に共通の約数を持たない)正の整数a、bとその和cについて、それぞれの互いに異なる素因数の積(d)を求める。このとき「c>dの1+ε乗(εは正の実数)」となるようなa、b、cの組は「たかだか有限個しか存在しない」とする予想。ABC予想が証明されると、「フェルマーの最終定理」など他の難問も簡単に導き出すことができ、数学界で今世紀最も重要な業績になるとされ、世界の数学者が証明に取り組んでいる。
●書名:『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』
著者名:加藤文元 発売日:2019年4月25日 定価:本体1600円+税
内容:望月新一教授による「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」。未来から来た論文とも称された内容は世界中に驚きをもたらした。望月氏と、議論と親交を重ねてきた数学者が、理論の独創性と斬新さをやさしく紹介する。
株式会社 KADOKAWA (代表取締役社長 松原眞樹 、本社:東京都千代田区)は、 ABC予想の証明を含む「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)」を解説した加藤文元氏による書籍『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』の緊急重版を決定しました。著者の加藤氏は、IUT 理論の提唱者である望月新一教授と議論と親交を重ねてきた数学者です。フェルマーの最終定理、ポアンカレ予想などに続く数学の最も難問とされてきた「ABC予想」。この予想を証明し、数学の思想上の転回をもたらす「未来からきた論文」とされたIUT理論について広く一般の読者にわかりやすく伝えようと書かれた作品です。また、IUT理論提唱者の望月新一氏による寄稿も収録しています。