読解力を高める学習 2020年3月22日(日)
AI時代には、読解力が必要ということが、新聞に載っていました。最近、モニターでテストを受ける、映像を見る、アクティブラーニングで話し合いが中心の学習になるなど、手で文字を書く機会が減ってきています。新聞記事によると、4年生で、自分の名前が漢字で書けない子どもが半分以上いるというようなデータもあります。さらに、子ども自身が使える語彙も、昔から比べるとかなり減ってきているようです。また、小学生から社会人まで20万人が受けているリーディングスキルテスト(文章や図表の意味理解を調べる)では、読解力は中学生までは穏やかな伸びが見られるけれど、高校生では殆ど伸びが見られないということです。結構有名な1部上場の企業の人でも中学生レベルということも珍しくないという状況が分かってきています。
これらの情報は、大げさではなく本当だなと感じます。かつて小学校の先生をしている頃は、小学校1年から毎日出合う漢字は、できるだけ使うようにしていきました。子ども達のノートの記名も、1年生の二学期からは漢字で書かせて、それを子ども達で配布するようにさせて、漢字に親しむ機会を増やしていました。名前の漢字が読めない子どもは、友達に聞いたり、先生に聞いたり、出席番号を覚えていて、それで本人を特定したりして、ノート返却をしていました。連絡帳にも毎日書く文字、例えば、算数、国語、体育、生活、図工、音楽、持ち物、体操服、水泳、連絡などは、どんどん使っていくようにしました。一気に増やすのではなくて、毎日一個ずつ、漢字で書く言葉を増やしていくようにしました。「先週は国語を漢字で書いたよね。今日から算数は漢字で書こうかなあ。たぶん出来ないだろうなあ。泣いてしまうかなあ。」とか言いながら、少しずつ増やしていきます。書き順が分からない場合は、先生が書く所をしっかり見るように言います。最初は間違いだらけですが、次第に正確に書くようになっていきます。毎日書くのですから、直ぐに覚えます。1年生の場合、連絡帳を書き終えると先生の所に持ってきて、印を押すようにしていました。書かないで帰る子どもがいるからです。連絡帳を書くというのは、教科の学習と同じぐらい大切な学習時間と思って取り組んでいました。また、中学年以上では、学校からの保護者向けのプリントを、帰りの会で誰かが読むようにしていました。これも、くりかえして根気よくやっていくと、読める子どもが増えていきます。漢字が読めること、書けることはとても大切です。中には苦情をいう保護者の声が遠くから聞こえてきます。毎月ある学級育友会の時に先手を打って、「中国の子ども達は、漢字ばかりを書いています。中国の小学生に負けてはいけない。」と言いながら、読める漢字、書ける漢字をできるだけ低学年の時期に増やすようにしました。総ルビの国語辞典は1年生の2学期から使います。国語でも算数でも生活科でも、毎時間必ずみんなで辞書を使うようにします。そうすると、4年生の頃から大人が使う国語辞典が使えるようになってきます。個人持ちの広辞苑を教室で使うのがブームになったこともありました。一気に自学の力が付きました。
小学校を退職してから大学生を3年間教えました。文章を書けない学生が多いことに驚きました。授業中寝ていたり、スマホを触っていたりするのは論外としても、自ら学ばない学生が多い状況も知りました。学生が悪いのではなくて、高校の教育、大学の学ばせ方がよくないことに原因があると思いました。私は教育方法論を教えていたのですが、上記の小学生のように、自分達で辞書を引きながら、参考書を持ち込んで、「学びの追究の場としての相互学習、独自学習の教室」が当たり前としてきた教育が、まったく伝わらないというような虚しさが感じられました。新聞記事にあったように、読解力が高校生以降伸びていないというのは、本当に学びのシステムがよくないということだと思いました。大学の教員、高校の教員に対して、「学生の学ばせ方の改革」を真剣にしていかなければ、日本は滅びると思いました。2020年度からの新しい学習方法は、アクティブラーニングというのは、さらに軽い学びの方向に進みそうです。「独自で学ぶ、グループで討議する、学びの成果を報告しあう、議論をする、団体研究に取り組む、個人で論文を書く」などの、学び方がどの教科でも行われるようにするべきだと思います。大学生には教えないというのを基本とし、基本図書、参考図書、最新論文などを示して、そこから自分達で追究し合える学びのシステムを創るようにしなければいけないと考えます。外国語も文学も、グループで読み合って、聞き合って、互いに学びを深めて、そこに先生が少し援助していくことで、大学生の学びの構築を進めてほしいと思いました。その子達に合った課題を示していくのが先生の仕事であって、学びの追究は学生自身が苦労することだと考えます。一人ひとりの能力を高める教育を目指して欲しいと思います。