井上流本の読み方十箇条 2020年2月9日(日)
今日は、この前読んだ井上ひさし『本の運命』から、「井上流本の読み方十箇条」を書き出してみたいと思います。索引は自分で作る、本は手が記憶する、戯曲は配役をして読む、などが参考になりました。
その① オッと思ったら赤鉛筆
「これは自分が知らなかった」というところ、「この人はこれが言いたいのか」という勘所、とにかく気持ちがちょっとでも動けば丁寧に印をつける。
その② 索引は自分で作る
索引というのは、本の命。自分で索引を作ってしまいます。本の扉とか見返しに、大切だという事柄、言葉をずーっとならべて、ページを書いておく。大事な本はそうやって読む。
その③ 本は手が記憶する
情報は「書き抜き帳」を作る。やや大きめの手帳を用意して、本でも新聞でもなんでも、これは大事だと思うことは書き抜いていく。あとで参照できるように、出典とかページ数とかも書いておきます。そんな手帳が一年に5,6冊になります。それに番号さえふっておけば、不思議に「あれは3冊目のあの辺にあったかな」って分かるんです。手が覚えているんですね。
その④ 本はゆっくり読むと、速く読める
最初は丁寧に丁寧に読んでいくんです。最初の10ページくらいはとくに丁寧に、登場人物の名前、関係などをしっかり押さえながら読んでいく。そうすると、自然に速くなるんですね。とにかく初めはじっくり読む。
その⑤ 目次を睨むべし
特に、専門書の場合、大切です。泥棒の名人が忍び込む前にその家の構えをじっくり観察するように、その構造を前もって見破る。
その⑥ 大部な事典はバラバラにしよう
分厚い事典は、カッターで切って、自分で勝手に三分冊、四分冊にしてしまう。こうして持ちやすくしておけば、必要な項目だけポケットに入れて、外で読むこともできる。僕の場合、東京へ出るのに横須賀線で55分かかりますから、ちょっと考えてみたい、調べてみたいというときには、そこだけ持って行く。言い訳じみますが、僕はだいたい同じ事典を2冊ずつ買うんです。一冊ばらしても、もう一冊はちゃんと大切にとっています。
その⑦ 栞は一本とは限らない
最近の文庫なんかは、栞ひもがないものも多いでしょう。だったら、自分で作っちゃえばいいというわけです。カバーを表紙に糊でくっつけちゃうんです。カバーって大事なんですけど、すぐ外れたりして邪魔っけでしょう。だから、この方法は、カバーが落ちないための防止にもなる。その表紙とカバーをくっつける時に、背中の部分にタコ糸を挟んで、一緒にくっつければ、出来上がりです。
その⑧ 個人全集をまとめ読み
これは個人的な興味なので、一般の方にとっては無理かもしれません。読みながらダイジェストを作り、見開きや扉に索引をつくる。あるいは、著者の言葉遣いや書き癖について気づいたことを小まめにメモしていく。そうすると読み終わったときには、評伝や作家論が書けるくらい、十分な資料が自然に抽出されている寸法になる。とにかく一人の作家が作りだした小宇宙へ一か月ぐらいどっぷり浸るというのは、実に贅沢。
その⑨ ツンドクにも効果がある
本との出会いは一期一会みたいなところがあります。買ってすぐ読まないでも、机の横に置いておけばいいです。不思議なことに、ツンドクをしておくと、自然に分かってくるんです。「これは読まなくてもいいや」とか、「これは急いで読まなきゃいけないな」とか。いつまでも「読め読め、読め読め」と言ってくる本もあります。
その⑩ 戯曲は配役をして読む
戯曲は読む人は依然として少ない。たしかに読みにくいんです。ところが、戯曲を楽しむコツがあって、それは自分でキャスティングすることなんですね。例えば自分の好きな俳優をハムレットにしてしまうんです。