昆虫館30周年記念シンポジウム 2019年11月30日(土)
橿原昆虫館が開館30周年を記念して、シンポジウムを開催していました。山口進さんの講演「見えない擬態を解明する ~ハナカマキリは2度嘘をつく~」を聞きました。80人ほどが参加していました。こぎつね幼稚園で一緒に虫取りをしていて今は小学生になっている虫好きこぎつねと、会場で出合いました。
ハナカマキリの擬態についてお話をされました。山口さんは、昆虫植物写真家です。ジャポニカ学習帳の表紙写真を40年間1人で提供をしているようです。もうかなり前になるのですが、ジャポニカ学習帳の表紙写真を集めた展示室の紹介と、山口さんの写真家としての活動について紹介しているテレビ番組を見たことがあります。今回は、ジャポニカ学習帳の表紙写真には一切何も触れることがありませんでした。
擬態には、隠蔽擬態(キノカワガ、クビキリギス、コノハムシ、ナナフシなど自然の中に隠れ込む擬態)、ベーツ擬態(毒のある虫に似た形や色に擬態)、ミューラー擬態(毒を持つもの同士がよく似た色や模様になる擬態)、ベッカム擬態(攻撃擬態)などがあるということです。
ハナカマキリは、これまでランの花の中で虫を待ち、寄ってきたハチを捉えると思われてきたけれど、山口さんは、ランの花にとまっているハナカマキリを野外で見たことがないということでした。ランの花の中に隠れる隠蔽擬態ではなくて、葉っぱの上であえて花を自分で演じている視覚擬態ではないかということです。さらに、花の蜜の匂いを出しているのではなくて、ミツバチの仲間を確認するための匂い(フェロモン)をハナカマキリが出しているということを、化学分析で証明をしたということです。これを化学擬態と言われていました。
これまで写真家は、ハナカマキリをランの花の上に止まらせて写真を撮ってきていて、みんながランの花に擬態しているというように思い込んでいたのですが、それは実は写真家の演出だったのかもしれないということでした。このことは、タイやマレーシアやインドネシアのジャングルを歩いて、ハナカマキリの実際を見てきた経験から到達した発見だということです。現地の人で、昆虫を取って生計を立てている人たちがいて、彼らは珍しいチョウやカブトムシなどを採集して売っているようです。珍しい甲虫やチョウは、かれらが取りつくしているようですが、ハナカマキリは販売流通していないので、近くにたくさんいたのが幸いしたと言われていました。
また、よく考えると、ランは、かなり高い木の樹上で木に寄生して咲く、蜜を出さない、咲く期間が短い、限られた虫しかやってこない、ランは最後に進化した植物であるということなどから、ランの花に隠れて虫を捕るということは、とても不自然だということです。
40分間の山口さんの講演の後、「チョウとフジバカマ ~万葉から令和に生きる~」と題した、パネルディスカッションがありました。講演をされた山口進さん、そして服部保さん(兵庫県立大学名誉教授)、中山義隆さん(石垣市長)、亀井忠彦さん(橿原市長)の4人をパネリストにして、宮武頼夫さん(元大阪市立自然史博物館館長)がコーディネーターで進められました。アサギマダラのこと、萬葉集に出てくる虫のこと、秋の七種(ななくさ)のこと、クロシジミのことなどが話題になり、飛鳥の昔は雑木林やススキの原が広がっていたのではないかと話されていました。