『センス・オブ・ウォールデン』の翻訳者 2019年9月11日(水)
2011年3月11日、東北沖のプレート境界で起こった大地震。関西でも船酔いをしているような揺れを感じました。信じられないような津波の恐ろしさが、事実として心に焼き付きました。1995年1月17日には、阪神・淡路の地震がありました。直下型の地震では、火事の恐ろしさが分かりました。震災を直接受けていない地域の人たちは、飛行機やヘリコプターから撮影されている映像によって、押し寄せてくる津波が分かり、火事の様子も映画を見ているように分かるのですが、被災地の人たちは、情報が受けられない中、不安で不自由な生活が続いていたことだと思いました。
2019年9月8日に東京都と千葉県の間を通り抜けた台風15号の災害により、千葉県では長く停電が続いています。猛暑の日々の中、毎日の暮らしが大変な様子が報道されています。老人ホームや病院など、生活的に弱者の方々が集まっている施設の生活は、平常時以上の支援が必要になるのですが、本当に大変だろうなと思います。そこで働いている人たちは、自分の家が災害にあっていても、いつも以上の仕事があることになります。支援、ボランティアが必要となります。
今、スタンリー・カベル『センス・オブ・ウォールデン』斎藤直子訳2005年法政大学出版を読んでいます。まだ読み始めて半分にも至っていないのですが、哲学的な難しい文章です。日本語なのに外国語を読んでいるような気分になる難解な内容です。しかし、少し読みなれてくると、この難解な内容を的確に訳している訳者の賢さに感心させられてきました。
齋藤直子さんは、東京外国語大学を卒業し、ハーバード大学で修士号、東京大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取得されて、現在(2005年)京都大学大学院教育学研究科の助教授をされている方です。プラグマティズムを中心とするアメリカ哲学・教育哲学の領域で論文を書かれている方だそうです。『センス・オブ・ウォールデン』は、ソローの『森の生活』を、カベルが哲学的に解説されている本です。ソローの自然の記述のその背景にある思想を、深く考察されています。カベルのことは、後日調べることにして、この難解な文章をよどみなく日本語に訳されている齋藤直子さんの素晴らしさに、本当にびっくりさせられました。すごい人がいるんだなと思いました。ネットで「齋藤直子さん」を調べると京都大学のページには、つぎのような紹介がされていました。
「プラグマティズムとアメリカ超越主義を中心としたアメリカ哲学の現代的意義を、「翻訳としての哲学」および「生き方としての民主主義」という観点から再評価し、たゆみなき自己と文化の完成を目指す「おとなの教育としての哲学」を提言することが研究課題である。国際プロジェクト「翻訳としての哲学と他文化理解:双方向的国際化に向けた哲学と教育の学際研究」を通じて、欧米の哲学者、教育哲学者との国際交流をフィールドに活動している。著書The Gleam of Light: Moral Perfectionism and Education in Dewey and Emerson( 2005)『;〈内なる光〉と教育-プラグマティズムの再構築』(2009年)。共編著(with Paul Standish)Stanley Cavell and the Education of Grownups( 2012);Education and the Kyoto School of Philosophy: Pedagogy for Human Transformation (2012)。訳書スタンリー・カベル著『センス・オブ・ウォールデン』(2005年)、ポール・スタンディッシュ著『自己を超えて:ウィトゲンシュタイン、ハイデガー、レヴィナスと言語の限界』(2012年)」