植物学の本2冊 2019年5月7日(火)
植物関係の新書本を2冊読み比べました。
大場秀章『はじめての植物学』2013ちくまプリマ―
塚谷裕一『植物の<見かけ>はどう決まるのか』1995中公新書
大場先生の本は、植物の形態について詳しく書かれています。「身近な植物を観察してみよう。体の基本的なつくりや営みを知ると、その巧みな改造の実際が見えてくる。植物とは何かを考える。」とあります。植物を観察していく上で、これまで気が付いていない植物の生き方を紹介されています。①植物のからだの基本的なつくりと営み、②大地に根を張って暮らさねばならないことからくる制約、③巧みな改造の実際、を中心にそれぞれの特徴を述べられています。
第1章 植物らしさは、葉にある
第2章 大地に根を張って暮らす ――植物が生きる条件
第3章 光合成 ――葉で何が起きているのか?
第4章 炭水化物工場としてのかたち
第5章 植物の成長を追う ――胚軸のふしぎ
第6章 草原をつくる単子葉植物
第7章 巧みな貯蔵術
第8章 木とはなんだろう
第9章 植物たちの生存戦略
第10章 種子をつくる
第11章 花は植物の生殖器官
塚谷先生の本の内容は、「花の色、葉の形、茎の長さなど植物の<見かけ>はどのように作られているのか。種の多様性はどうしてうまれるのか。遺伝子による制御という視点から、疑問が解明されつつある。そのカギを握るのが突然変異の研究である。栽培品種作出にも重要なこの研究は、新材料アラビドプシス(和名シロイヌナズナ)を得て世界的ネットワークへと拡大した。野外研究とバイオテクノロジーの融合が生んだ遺伝子解析最前線の息吹を生き生きと伝える。」とあり、とても難しい本でした。分子植物学者の生活や日常の研究風景が書かれているところは読めるのですが、実際にされている研究内容は、論文内容の紹介になるので、ちょっとついて行けないところも多くありました。できるだけ専門用語を減らして書いているらしいのですが、難しいです。先の大場先生と共に、ヒマラヤの中国奥地に分布するアラビドプシスを探しに行かれた時のことも書かれていました。「アラビドプシスはやはり寒冷な気候を好むグループなのである。これらの地域は、今でも東大総合研究資料館の大場秀章助教授のグループをはじめ、各国の研究者が大きな調査隊を編成して調査中の地域であり、あらゆる意味で不明の点が多い。これら地域の調査が進まない限り、アラビドプシス属のコレクションはおろか、戸籍調査すら進まないであろう。」と、分子植物学者もフィールドへと出かけていました。
1.アラビドプシスとは何か
2.白い花を赤くする
3.葉と花がわかれる時
4.形を作る遺伝子
5.新しいテーマを求めて
6.葉の形を探る
7.アラビドプシスのこれから
どちらの本からも、とても高度で膨大な知識がベースに書かれています。一般の方に向けの新書ですが、受け手の側の読み方次第で、多くの事が学べることが分かりました。何度も読まないと理解できないことばかりです。