自己を再構成する学び方 2018年12月14日(金)
金曜日は、大学生のノートを見る日です。140人もいるので、読んでいいなと思う所に線を引いてあげたり、星印や丸印を付けてあげたりするのに半日かかります。次に、読んだノートの中で、みんなに知らせてあげたい「ふりかえり」の文章を生活科だより「こぎつね生活」に打ち込み、そして、ノートを出席番号順に並べなおし、それぞれのノートの評価を一覧に書き写すのに、また、半日かかります。こんな大学の授業の仕方をしていると時間がかかりすぎてとても大変なのですが、私はこれ以外、学生を育てていく方法が思い当たりません。15回の講義の過程で、毎回少しずつ学生を育てるという方法です。小学校の先生の時も、ずっとこのようにして、子ども達を育ててきました。140人というのは、小学校の4クラス分の学生なので、かなり多いなと感じています。
最初の頃、大学生に「学習のふりかえり」を10行書きましょうと言うと、10行も何を書くの、ありえない、書いたことないと、言います。そこで、書き方を教えます。今日の学習の中で気に入ったこと、心に残った文章を書き出し、それがなぜよいと思ったのかの考えを書くように伝えます。書きたいことを3つぐらい見つけると、10行書くことができます。それができるようになってきたころ、次は、自分の経験と突き合わせて共感したことを、経験や記憶から引き出しながら、自分の体験や経験を具体的に書くように伝えます。
体験や経験を書けるようになってくると、「学習のふりかえり」が、次第に読み物になります。そうなると、学生が育ってきたということが感じられます。それは、自分のことをふりかえり、これまでの生き方、経験、考えなどを語りながら、今日の学習をとらえることができるようになってきたということです。主体的に学び始めたということです。しかし、指導したら一気に140人がそのように書けるのではなく、毎回10人ずつほど、自分を語りながら学びに向かう学生が育ってきます。自分の事を語らせるというのは、学生と信頼関係をつなぐことが大切です。手間がかかるのですが、学生の生活や育ちや思いを語らせながら主体的に学び始めさせるには、「学習のふりかえり」をしっかり読み、認めたり褒めたりしながら育てることが大切なのです。また、その中のよさを、互いに共有させていくことが大切だと思っています。そのため、ノートを読んで、書き出すという膨大な時間をかけています。
今日の、まる一日の時間がかかってしまうのが分かっているので、読み始めるまではいつも億劫なのですが、読んでいくとそれぞれの学生の思いや、感じ方や、育ちが見えてきて、引き込まれていきます。懸命に生きている様子も伝わってきます。それぞれの学生の個性的な育ちが現れている文章を読んでいると、一人ひとりの存在が、本当にいとおしくなってきます。
学びは、自己の中の育ちをふりかえり、自己の経験や体験を学び直しながら、成長していくものだと思います。そのため、自分自身を語らせながら、自己の再構成をさせるように育てる事が大切だと思います。目の前に新しい知識を与えて、記憶させて付け足していくことが教育ではなく、自分自身が、これまでの育ちの経験の中に学びを埋め込んでいくことが大切です。知識の丸暗記は、体に余分な脂肪を付け足すようなものです。これまで育ってきた体の中の、筋肉や骨や臓器の隅々まで栄養をいきわたらせるような学びをさせたいものです。