学びに向かう興味から教育は始まる 2018年12月11日(火)
久しぶりに大泉緑地へ歩きに行きました。大泉緑地は、一周3キロの周回歩道がある大きな公園です。いろいろな人がいます。ベンチで寝ている人、池で釣りをしている人、一人でお弁当を食べている人、マラソンの練習をしている人、歩いている人、夫婦で歩いている人、自転車でトレーニングをしている人、子どもと遊んでいる人、ゲートボールをしている人、本当にさまざまな過ごし方があると思います。大きな望遠レンズを付けたカメラを持って歩いている鳥の写真を撮るグループの人達もいます。猫は、陽だまりで寝ていて、水鳥は池で泳いでいます。人の生き方、興味、生活は、本当に様々です。
生活科の大学の講義をしていて、教育は教えるのではなくて、引き出すということを、今更ながら実感しています。私が長く務めた奈良のこぎつね小学校の授業実践を学生に知らせるのが中心ではなく、学生自身に、生活科の授業を、いろいろな方法で探させて、それを交流させることに力を入れてきました。学生たちは、自分の子どもの頃に受けた生活科や、ネットに出ている実践事例や、本に書いてある生活科など、いろいろ自分の興味のあるところから報告をしました。一人ひとりの内容は、たった一つですが、それが140人分も集まると、本当にすごい情報になります。特に、地方から出てきている学生は、海辺や、山間部での生活科を報告してくれました。ウミガメを保護して海に戻す、茶摘み体験をする、山で遊ぶ、登山をする、特産品の野菜を育てる、伝統工芸を受け継いでいる方から話を聞くなど、私一人がとうてい話すことができない内容が多くあり、驚きの連続です。
その学生の中の一人ですが、二回欠席をしていた学生が、「ウガンダに行っていて、出席できませんでした。どうしたらいいでしょうか。」と言ってきました。私たちが、日々日常の生活をだらだらと過ごしている時に、この若い女の子はウガンダに2週間行っていたんだと思うと、人の可能性というのは、すごいなと思います。奈良のこぎつね女子大で教えている時も、「2年間、ブルキナファソに行くことになりました。教育関係でいくのですが、なにかヒントはありませんか。」と聞かれたこともあります。どちらも女の子ですが、行動力がすごいなあと、感心するばかりです。
教育は、教えるより引き出すことがとても大切です。その子の生き方、学び方、興味を持ち寄り、それを交流し、そこからさらに自分の追究を深めさせることが教育だと感じます。大学の生活科の授業では、「商店街さんぽ」「学校探検」「図書室見学」「秋の公園」「近鉄沿線紹介」の報告を、劇形式で発表しました。それぞれ、何らかの行動を起こし、聞き取りをしてくれていたり、資料を集めたりしていました。かわいい女の子が聞き取りに行っているので、お店の方も、親切に対応して下さったようです。発表は、実物投影機の下にスマホを置いて、写真や動画を写しながら発表をしていました。新しい発表の形式でした。また、私には分からない感覚ですが、20歳前の女の子の興味の所では盛り上がり、それも大事なことなのだなと思いました。小学校1年生が、うんち、おしっこという言葉だけで、ゲラゲラ笑うのと同じで、その年齢が楽しいことも大切だと思いました。
それぞれの年齢で、それぞれの興味で人は生きているということ、そこをさらに伸ばし育てて、世の中や学問に対して、自ら目を開いていくことが、教育であると感じました。教育とは、教えるよりも、学びに向かう行動を支援するしかないように感じています。