『目からウロコの自然観察』を読んで   2018年11月3日(土・祝)

 

 図書館によく通っている人が、健康寿命が長いということをAIが導き出したと、テレビで伝えていました。最近ビックデータ解析により、コンピュータがいろいろな視点からのデータを導きだしているようです。コンピュータのデータ解析に、翻弄させられる時代になってきているのではないかなと思います。テレビが伝えている内容は、健康寿命が長い県、地域は、図書館が多い、本をよく読んでいるということと関係があるということです。運動をよくしている人、歩いている人というのではなく、本をよく読んでいる人という結果は意外性があり、また、そうなんだと思う内容でした。知的に生活をしている人が、健康寿命が長いということでした。

 

 『目からウロコの自然観察』

 唐沢孝一さんが書かれた中公新書を読みました。2018年4月25日初版の本です。高校の生物の先生をされていて、鳥の研究を中心に野外活動を続けてこられていました。現在NPO法人自然観察大学学長をされています。1943年生まれの先生です。鳥のことを中心に、多くの自然観観察の本を書かれています。

 「筆者は、退職後にようやく時間的なゆとりができ、2013から17年の5年間、江戸川河川敷で鳥類調査をほぼ毎日実施することができた。早朝の2時間半~3時間にわたり鳥類の種類、個体数、地図上の位置などを記録した。その中から、ヒバリの観察データのみを抽出してみると・・・」

 「庭に植えたヒガンバナの群落で、開花した花茎の本数を毎朝調べてみることにした。・・・2005~17年の(11年間)の調査結果が次のようである。・・・11年間の記録を平均した満開日は、9月23日であった。」

 「JR市川駅近くのケヤキ並木では、9月中旬の最盛期には7000羽ものスズメが観察された。集団ねぐらに飛来するスズメの個体数を2012年12月から2014年7月の約1年半にわたり調べたところ次のようになった。・・・」

 「我が家の前にある2本の電柱にはそれぞれ2か所の単独ねぐらがある。2013年11月~14年4月の半年間、ほぼ毎夕、毎朝、スズメの出入り時刻をチェックしたところ、次の結果が得られた。日の出の約12分前にねぐらから出て、日没の約8分後にねぐら入りしている。・・・」

 また、「はじめに」には、自然観察で大切にされている視点が次のように整理されています。「第一は、何だろう、なぜだろうという好奇心である。疑問に思ったことを、時間をかけて自分の目で観察してみると、新しい発見があり、ますます興味が深まっていく。第二には、観察の視点である。同じリンゴでも、2つに切ってできる断面は、切る角度によって無限に変化する。よく知っている筈の生物でも、視点を変えてみることにより、それまで気付かなかった新しい世界が見えてくる。第三には、その生物の立場に立って観察してみることである。どんな生物にも様々な事情があり、不都合な現実と辻褄を合わせながら懸命に生きている、という姿が見えてくる。」

 この本の中には、膨大な時間をかけて観察されたことから、たった一行の分かったことが書かれている内容が、いくつもありました。本物の観察者の生活の姿が読み取れる素敵な本でした。 

 本文は、春、初夏、夏、秋、冬と、章に分けられています。それぞれ、次のようなテーマが取り上げられていました。

春・・・雑草観察、カタクリ、ギフチョウ、アカメガシワ、ニホンアカガエルの産卵、ヒキガエル、

メジロ、ヒバリ。

初夏・・空き地の雑草、這い上がる植物、ジャコウアゲハ、ホタル、クモ、ツバメ。

夏・・・サルスベリ、ツユクサ、オシロイバナ、北上する昆虫、トンボ、ヤモリ・トカゲ・カナヘビ、

アオバト、ツバメのねぐら入り、高山の鳥。

秋・・・ヒガンバナ、タイヌビエ、チカラシバ、ひっつき虫、ヘッジロー、ドングリ・クリ、ナツヅタ、アキアカネ、カマキリ、ジョロウグモ、サギ、モズ、スズメ、ヒヨドリの渡り。

冬・・・霜柱、冬芽、ホソミオツネントンボ、ムササビ、カモ、レンジャク・ヤドリギ、アトリ、

魚つき保安林。

 

 これらの生き物は、今、こぎつね達と記録している「きつねTのこぎつねだより」のブログにもよく登場してきている内容ばかりなので、とても興味深く読み進めることができました。しかし、私と違って、ご自分の長期の調査から得たデータが、あちこちに書かれていてすごいなと、感心するばかりです。