話すことから学習を創る 2018年10月19日(金)
小学校1年生の学習のスタートも勿論ですが、いろいろな学習のスタートは、書き言葉をあまり使わないで、話し言葉を中心に学習を創っていくようにすることが大切だと思います。
孫の成長を見ていると、言葉や考え方の獲得は、もちろん話し言葉から入っていきます。また、幼稚園や小学校に行くのがいやだとぐずっている子どもは、自ら話すことが好きで、先生の話を聞かされるのがきらいだということがあるようです。いろいろさせられるより、まず自分が話をしたい、自分が行動したいというのが、その子達の気持ちのようです。
1年生の学習も、話し言葉を豊かにするところから学習を始めます。4月当初は、毎日全員に少しずつでも自分の思いや考えを話させるようにします。教科書を読むだけ、文字を書くだけ、計算をするだけで、学習をしたと考えるのではなくて、生活の中で自分が見つけたことや、興味のあることを話させるのが、大切な最初の学習です。小学校に入ったからといって、直ぐに文字を覚えたり、計算をしたりする作業に集中することは、話し言葉で、自分の生活や自分の考えを語ることを学ばないまま、部分的な作業の学びの世界に入ってしまうことになります。
文字を書く、教科書を写す、計算をするというのは、かなり作業に近い活動です。脳の中が、全生活に向けて動いていない状況なので、賢くなりません。だまって、静かに、作業をすることは、まだ幼い子どもにとっては学習ではありません。活動をしながら、自分の全生活から言葉や考え方を紡ぎ出すような学び方が、賢い子どもを育てると思います。子ども達の朝の元気調べの時、お友達と同じ内容にならないように微妙に自分の話を調節している時の子どもの頭の中や、自由研究発表の後、あらゆるおたずねに対応している話し合いの場面では、即興的な対応を通して多くの思考力を使っています。脳がフル回転して対応しようとしているのが聞いている教師にも伝わってきます。学習のふりかえりを言う場面でも、その場で急に指名されて話をする場合、かなり多くの記憶を集中させて話しているのがわかります。
中学、高校、大学の学習は、もしかしたらこの話し言葉の部分の学習がおろそかになっているのかもしれません。だまって静かに座って、頭に知識を注入しているだけの学習になっているのではないかと考えます。中・高・大学でも、もっと話し言葉で学ぶ部分を大切にしなければいけないのでしょう。登園をぐずっている園児は、実は、先生の一方的な話を聞きたくないというのが真実で、それを上手に乗り越えているような園児や小学生は、もしかしたら自分から話すことをやめて、聞くことに徹するようになってしまった子ども達なのかもしれません。
<頭がフル回転している話し言葉による学習の場面>
①自分の生活の中で、最近興味があったことを話す。
②学習のテーマから、そこに自分の学びたい「めあて」を考えて発表する。
③文章を読み取って、それがなぜ印象的なのかを発表する。
④自由研究の発表をして、おたずねを受けてそれにこたえる。
⑤いろいろな学習場面で、「分からないこと」を見つけて、おたずねをする。
⑥学習のあと、学習のふりかえりを話す。
自分の脳の中をぐるりとリサーチして、そこから何らかの言葉を選び出し話すことは大切です。子どもの脳は、常に隅々までリサーチしながら成長します。脳は注入だけをするための、静かな知識の入れ物ではないのですね。それも、先生の声よりも、子ども同士の声の方が、出入りが自由なようです。学び合いが大切です。大学生も、私の書いた「こぎつね生活」のお便りを、私が読むと寝てしまうのですが、学生が読むと声の波長が合っているのか頭に入りやすいと言います。
大学生の15回の講義も、最初から5回目にかけては、自ら生活でみつけたことを話す、考えを話す、「学習のめあて」を話す、自由研究を話す、おたずねをする、ふりかえりを話す、それらの学びを自分達で進めるというような、話し合い学習の基礎フィールドを創りました。並行して、生活をしっかり見つめさせるための日記を書く、自由研究を書くことも進めました。これから、「生活科研究」に入ります。自ら調べて、話し合い、探究を深める学習へと入っていけます。