こぎつね生活② 2018年9月4日(火)
昨日から、晴歩雨読を書く朝の時間に、大学の資料作りをしています。9月末から始まる、大阪のこぎつね女子大学の資料です。昨年は、初めて取り組む大学なので、学生の様子、反応など、全く予想がつかないので、事前に資料を作ることができませんでした。とても大変な日々でしたが、授業を進めながら資料作りをしていました。今年は、学生の様子がほぼわかっているので、昨年苦労をしながら作った資料を基に、事前に資料を準備しておくことができそうです。
今世紀最大の台風が、今日の昼頃、四国、近畿に上陸し、通過していくようです。朝はまだ、バルコニーで仕事ができました。雲はかなりの速さで動いていますが、地上の風はまだ、あまり吹いていません。小学校はお休みです。不気味な静けさがあります。
朝の会はすべての学習・生活の基盤
1.朝の元気調べ
こぎつね小学校では、朝の会を毎日しています。朝の会は、単なる出席確認だけでなく、今日の学習の一番大切な時間であると考えます。朝の会の中の「朝の元気調べ」の活動は、一人一言、全員が話す取り組みです。朝、登校してくる子ども達は、「先生、先生、あのね。・・」と、いろいろな情報を持ち込んでくれます。一人ひとり聞いてあげるとよいのですが、40人全員の一言を、先生の周りで子どもが自由に話すことを聞いてあげるのは不可能です。そこで、朝の会の元気調べで、日直が「〇〇さん」と名前を呼び、「はい私は元気です。きのう、私の家のミカンの木に、アゲハチョウが卵を産んでいるところを見ました。」「はい私は元気です。日曜日、家族で生駒山に登りました。」・・など、一人ひとりの生活の中で見つけたこと、経験したこと、思ったことを発表します。
全ての活動がつながりながら、子どもたちは成長していきます。一部の学習だけで育つことはあり得なくて、全生活的に成長することが大切です。特に、朝の挨拶、掃除、歌、朝の元気調べ、朝の発表は、学びの基礎基本です。
1年月組 6月14日 「朝の元気調べ」 (部分掲載)
日直:これから朝の元気調べを始めます。ND君 (以下、日直の指名発言を省略)
ND:はい、僕は元気です。べっ甲飴の作り方を調べてきました。後で発表します。
ST:はい、私は元気です。太陽の惑星を調べてきました。水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星で、惑星とは、太陽の周りを回っている天体です。
MS:はい、私は元気です。平城宮跡でもらった鹿の角を持ってきました。後で発表します。
YZ:はい、私は元気です。今日の朝、ママに叱られました。
先生:何で、しかられたの。
YZ:朝ご飯、ちゃんと食べなかったから。
KG:はい、私は元気です。前に、昔話でおかいこさまというのがあって、その言葉を知りませんでした。なので、私は、かいこのことを調べてきました。後で発表します。
YS:土曜日、キャンプに行って、アメンボと魚を取ってきました。後で発表します。
HT:今日、私は元気です。「ぜいたく」という言葉を辞書で見つけました。
KZ:はい、僕は元気です。わたしのしごと館というところで、腕時計を作ってきました。
YD:はい、私は元気です。虫こぶについて調べてきました。
UD:はい、僕は元気です。昨日、奈良町に行ってきました。
IJ:はい、私は元気です。金曜日に、鹿は何年前からいるのですかと聞かれたので、土曜日と日曜日に調べました。1900万年前の鹿の足跡の化石が、兵庫県豊岡市にあったそうです。
SO:はい、私は元気です。土曜日に家族と奈良町さんぽに行ってきました。
TU:はい、私は元気です。昨日お母さんとお姉ちゃんで大阪に行って、マンホールに大阪城が描いてありました。
先生:奈良って、鹿の絵があるよね? また調べようね。
HS:はい、私は元気です。今日、柿の葉寿司は何種類か調べてきました。 ・・・
毎日続けていると、「はい私は元気です。今日の国語のごんぎつねに出ているヒガンバナを持ってきました。後で紹介します。」「はい私は元気です。今日の理科の空気鉄砲の実験で、お父さんが竹で空気鉄砲を作ってくれたので、あとで紹介します。」「はい私は元気です。来週学級の奈良さんぽで行く東大寺へ、昨日お母さんと行きました。詳しく調べたいことを見つけてきました。しごとの時間(総合的な学習)に発表します。」などと、今日の学習が朝の時間に始まります。私たちは、「学習即生活、生活即学習」という言葉を大切にしています。学習は生活であり、生活そのものが学習であるということです。生活場を学習にしていく窓口として、「朝の元気調べ」が存在していると考えます。生活を学習の中に取り込む、生活の学習化の時間です。
朝の会は、8時25分~30分の5分間と、その後15分間の清掃が終わってからの、8時50分~9時10分の20分間です。朝の会では、①なかよし委員会(掃除の時間中に、各クラス代表が集まり、話し合いがもたれている。1年だけは6年生の1年係が出席している)からの連絡、②学級の係からの連絡、③元気調べを、行います。どうしても朝の時間に行事が入って「朝の元気調べ」ができない場合、国語や算数の時間から少しもらってでも、必ず行うようにします。言いたいことを持ってきているので、話さないとモヤモヤしたまま過ごすことになるからです。そんな、大切な「朝の元気調べ」の時間なのです。
2.朝の元気調べの意義
このように毎日取り組んでいる朝の元気調べは、特に低学年では、子どもの追究力、意欲、活動を育てます。一人ひとりの生活の様子、健康状態も、話し方、話す内容で分かります。この子は体調がよくないな、この子の家庭は今大変そうだな、最近生き生き学校に来ているな、学習のリズムが崩れているな、など、子どものいろいろな状況を理解できるのが、朝の一言です。
また、こぎつね小学校は、学習も生活も、子ども達が運営する学校です。この朝の元気調べも子どもが進めます。先生は子どもの一言をメモしながら話を聞きます。朝の元気調べの一言を聞きながら、今日の学習の進め方を、子どもの持ち込みや意欲を参考に考えたりもします。すべての学習が、ここから始まるようになると、学級はとても自立した状況になっています。
「朝の元気調べ」の活動を、あちこちの学校指導に行って紹介するのですが、なかなかうまく運営できない先生がいます。それは、子ども達が話している時、宿題の〇付けをしていたり、日記を読んでいたり、その場にいなかったりというようなことがある場合です。基本的に、子どもは大好きな先生に一言伝えたいのです。一生懸命聞いてあげるのが、先生の朝の元気調べの時の仕事です。
また、昨年の学生のふりかえりに、「生活科の学習ではなくて、何をしているのかわけが分からない」と、書いている人がいました。小学校1年生でも、4月当初、私の学級は、朝、登校してきて、朝の会で全員がお話をして、少し遊んで、そして終わりの会をして下校をするというような毎日が、2週間ほど続きます。それは、生活を学習に取り込むための学習をしているのです。自分の言葉で生活を語る学習をしています。生活科を始めるには、自分の生活を記録し、そこに学びを発見し、それを語り合う所から始めることが大切です。みなさんが先生になったとき、子どもの生活を学習に取り込みながら、学校の学習が進められる先生になってほしいからです。
3.朝の元気調べを記録する
朝の元気調べでは、1年生からお友達の一言をメモするようにさせます。最初は殆ど書けない子どもも、次第にみんなの一言が記録できるようになります。書く力は、空気中に飛んでいる言葉をメモするところから身に付けます。板書を写すのではなくて、話し言葉を聞き取り、それを文字にする能力を付けるのです。メモを書く力は、聞くことと考えることを同時に行います。聞いたことを理解し短く要点を書きとっていく力です。
多くの生徒や学生は、メモをとる力を付けていません。学びは、自分で聞いたことや、考えたことをメモすることが実は大切なのです。板書を写す力は、本を見れば分かることです。自分以外の多くの人の考えを聞き取るところから、学習は始まると思います。
1年生から聞き取るノート作りをしていくと、奈良さんぽ(学級のフィールドワーク)で、お寺やお店の方がお話してくださったことも、書きとれるように育ちます。生活から学ぶ力の、とても大切な能力です。毎日、朝の元気調べをメモすると、1年生の後半になると、ほぼ全員が書きとれるようになります。小学校の先生は「お友達の意見を聞くときは、顔をそちらに向けてしっかり聞きましょう」と普段言っている人が多くいますが、私は「しっかり書きとりながら聞きましょう」と指導します。どちらが良いかは、一年後に結果として現れます。聞いているふりをして育った子どもと、懸命に書きとってきた子どもの聞く力は、歴然と違っています。聞きながら、メモをしながら、自分の意見を言おうと左手を挙げている子どもがたくさん育ってきます。
国語や算数などの学習ノートにも、お友達の意見を書くようになってきます。板書よりも詳しいノートが出来上がります。学びの多い、素敵な学習ノートが成長しはじめます。
4.元気調べを積み上げると
私の学級は、40人いました。毎日元気調べをすると、年間200日の登校日だと8000の内容が持ち込まれ子どものメモの中に書き留められています。書けば記憶になります。特に、言葉を獲得していくときの子どもの記憶力はすばらしく、いつ、だれが、何を言っていたと、覚えていくようです。言葉や世界が、ぐんぐん広がる時間となります。また、日々の授業も、朝の会で持ち込まれた情報と関連して、とても立体的な学習へとなっていきます。特に、生活科や総合的な学習などは、この朝の元気調べがすべてだといえます。
日記の活動も、こぎつね小学校では取り組んでいます。毎日、日記を子ども達は書いてきて、教師は返事を書きます。その日記も、日頃メモがしっかり書けている子どもは、話すように書けるようになります。話すことと書きとることがこのように関連してくると、書く活動は、話すように書けるようになってきます。
<今日の学習>
1.朝の元気調べのビデオを見る。
2.こぎつね生活を読んで、3つ大事なことを書き出す。
3.書いてきた日記を見ながら、朝の元気調べをする。
4.朝の元気調べのよさについて考える。
5.学習のふりかえりを書く