花壇の花 2018年8月7日(火)

 

 若い頃には不可能でしたが、歳がいくと花のお世話ができるようになってきます。

 小学校の理科専科をしているころ、学校中の花の管理をずっとしてきました。体育館前や校舎前の花壇の花、畑の栽培など、理科教材としての各学年の栽培植物のお世話をしていました。また、玄関の花も中心になってたくさん管理していました。いろいろ栽培活動をしてきて分かったことは、子ども達と一緒にすることは可能ですが、花係として子どもに任せるのは、ちょっと不可能ということです。若い学級担任の先生は、学級園や畑に、種や苗を植える時は、いろいろ事前学習をして、イベントとして学級全員で植えにくるのですが、あとは子ども個人に委ねたり、畑係、理科係にお世話を任せたりします。それが、子ども主体の教育だと思っているようです。しかし、毎日の水やりや、成長に合わせた世話は子ども達には不可能です。子ども達は、毎日、新しい活動的な学習をしていて、長期にわたる花の世話、畑の世話をやり続けることができません。プール活動、劇作り、音楽会、遠足など、日々興味のあることが続き、子ども達はそれぞれに集中してしまいます。多くのやるべきことを、上手に時間を使い分けて、並行して継続的にやり続けることは、子どもにとってはかなり難しいことのようです。また、幼い子どもは、雨の日でも、傘をさして水やりをします。まだ、そのような思考レベルの子どももいて、初めて育てる植物に対して、生き物として見通しを持って栽培できることはとても無理なようです。先生が、毎日見に来られている畑は、それなりに育っていきますが、先生が植える時だけ来て、後は、子ども任せの学級の畑は、すぐに草が生えて荒れ果てていきます。理科専科をしている時、朝の掃除の時間に、畑近辺の子ども達と畑の草取りとすると、「子ども達が気付いて行動することが大切で、先生が手を出してほしくない。」と、言われることもありました。ごもっともな正論ですが、失敗体験をさせることは、教育上よくないなといつも思いました。何度も、毎年チャレンジすることができることであれば、失敗体験も必要ですが、自分で畑の世話をしたり、植物を育てたりする経験は、大人になるまで、今後ほぼありません。先生も協力しながら、成功体験をさせるほうが良いように思いました。

 学級の花も一緒です。附属学校は、公開研究発表会が年に2回あり、その都度、教室には、花がきれいに飾られます。しかし、研究会が終わってからその花を保ち続けている学級は、とても少ないのです。例えば2月の研究会の時には、シクラメンがあちこちの教室に飾られますが、研究会後、どこの教室のシクラメンもほぼ枯れていきます。シクラメンは、水を切らさないようにして、太陽に当ててあげるだけで4月ごろまで花を咲かし続ける植物です。2月の研究発表会後の各教室のシクラメンを見ると、悲しくなってきます。学級の学習も、公開研究会の当日だけのショウタイムになっていないか、心配になります。教室でたまたま見つけた、すっかり葉っぱまでしおれてしまったシクラメンの鉢をもらい受けて、理科室で水をやり太陽に当てて、花柄を丁寧に取るお世話をして、どの鉢も復活させることをよくしました。理科室には、シクラメンの花がいっぱいになってきました。

 また、公開研究会の時は、教室では参観の先生が入りきらないので、大きい部屋で協議会をされる先生もおられます。そのお部屋にも、豪華な切り花が飾られることがよくあるのですが、先生は協議会を乗り切るだけで精一杯で、花は翌日には枯れ始め、3日ほどすると水がなくなり、まったく枯れてしまっていることがよくありました。かわいそうだなと思いました。そこで、研究発表会の後は、それらの花を玄関ホールに集めて、水を切らさないように一括管理をしてあげるようにしました。花の寿命の2、3週間は、きれいに咲き続けました。さらに卒業式や入学式の式場に飾られる花も、式が終わった午後には、大きな花瓶から抜いてしまって、玄関ホールに移動させると、お世話をしながら長く綺麗な花を楽しむことができました。附属に転任した当時、卒業式や入学式に飾られた大きな体育館の花瓶の花は、誰も水を入れにいきません。立派な桜の枝や切り花が、舞台の隅でどんどん枯れていく姿をいつまでも見続けることになりました。体育館掃除の子ども達は、下に落ちた花びらの掃除をするだけで、花瓶の中の枯れた花の掃除までしません。かなり枯れて、水が腐ってきてはじめて、用務員さんが片付けるというような状況でした。

 隅々の生き物の生育について気になるようになると、枯れ始めている子ども、元気がない子どもの姿も目に付きます。毎日続けて、声をかけて世間話をしたり、一緒に活動をしたりすると、原因がわかってきました。

 我が家の庭は、今は大丈夫です。とても花が元気です。それは、朝晩の水やりと、花柄取りをしているからです。ウサギのぽん太もおだやかです。人の世話を必要とする飼育栽培されている生き物は、規則正しい管理が大切です。子ども達も、お世話をされる存在です。大人が規則正しく関わり、成長に適した環境の中で、子育てが行われることが大切です。飼育栽培している人が、規則正しい生活ができていないと、飼育栽培されている生き物は弱っていくことが分かります。