上高地二日目 2018年7月27日(金)

 

 一日目の上高地散策の後、一度上高地を出て白骨温泉に宿泊をしました。白骨温泉は白濁した泉質で、とても温泉気分を味わうことができました。台風12号が、異例の東から西へ動きながら近づいてきているので、天気が急変するかもしれないと予想されていましたが、旅行二日目も、上高地へ行くことにしました。

 再び平湯温泉のKKRの宿舎の駐車場に車を置かせてもらい、9時のシャトルバスで上高地へ向かいました。今日は、大正池バス停で降りないで、終点の上高地バスターミナルまでバスに乗りました。バスターミナルから歩き始め、昨日渡った河童橋へ行きました。今日は、ここから北の、明神橋までの往復を歩くことにします。最初に、河童橋近くにある上高地ビジターセンターに立ち寄りました。写真展示やビデオ放映、資料の販売などをしていて魅力的なところですが、午後から雨になるかもしれないと思うと、明神橋まで行って河童橋まで戻ってきてから詳しく見ようと考え、早々に歩き始めました。

 このビジターセンターの北側は、小梨平キャンプ場になっていて、いくつもテントが張られていました。貸テントもあるようで、係員の方が掃除をされていました。ここに泊まると高いホテル費用は節約できるので、長く旅をしている人にとってはいい場所だと思いました。トイレや食堂も整備されているようです。海外から来て日本中を歩き回っている人は、自分でテントを持ち歩いて、長く旅行をされていることを、テレビで見たことがあります。

 このキャンプサイトを抜けて北へと歩きました。梓川の東側を歩く道は川から離れていて、ずっと林の中を通ります。昨日歩いた大正池から河童橋への散策路に比べて、人はそれほど多くありません。しかし、これから穂高に登山する人、また登山をして戻ってくる人が通る道なので、大きなリュックを担いだ人とすれ違います。山道で人とすれ違う時、「こんにちは」と、声を掛け合う習慣があるのですが、登山から戻ってくる人は疲れているようなので、挨拶をする機会でも、つい無口になってしまいます。リゾート気分で歩いている私たちには、登山者は挨拶をしないだろうなと思います。外国から来られている人たちも多く歩いています。その人たちには、必ず挨拶をするようにしました。「こんにちは」と日本語でいうと、多くの外国人は「こんにちは」と挨拶を返してくれました。一人だけ「good morning」と、英語で返された人がいました。東洋系の外国人は、こちらから挨拶をしても、スルーされてしまうこともありました。

 河童橋から明神橋までまずは、片道3.8㎞の林の中の道を歩きました。チョウや、セミの抜け殻、サルの親子を見つけて、写真を撮りました。木漏れ日が遊歩道を、水玉模様に飾っています。丸いカツラの木の葉も、青空をバックに緑の水玉模様に広がっています。大阪の38度からは天国のような、20度ほどの気温です。とっても爽やかな林間歩きができました。二日目なので、少し上高地さんぽも、慣れてきました。

 明神橋の近くには、休憩所があり、トイレもありました。河童橋周辺程人はいませんが、それなりに観光客が通ります。ここでは、明神橋を西へと渡り、穂高神社奥宮にお参りをしました。河童橋への戻り路は、梓川の西側を歩きました。川沿いの湿地帯を通る道なので、木道になっている部分も多くありました。湿地帯の水はとても透明で、遠くの水面は瑠璃色をしていて、立ち枯れの木々がその中に立っています。人の手が入っていない、自然の美しい姿が見られました。いつも愛読している本の著者高田宏さんが、上高地は人が多いので行くことを避けていたが、行ってみるとその美しさに心打たれたと書かれていたことを思い出しました。高田さんの言う通り、人が多いのですが、その景色は本物です。再び焼岳が噴火したり、集中豪雨が降ったりして、壊滅的な大惨事になると思われる上高地の自然ですが、そのような災害的な変化を繰り返しながら、美しさは更新されているんだなと思いました。

 上高地二日間でいろいろな生き物の写真記録ができました。主な植物は、トリカブト、クサボタン、ソバナ、タマガワホトトギス、メタカラコウ、ヨツバヒヨドリ、ホタルブクロ、クガイソウ、ウツボグサ、ウワミズザクラの実、オオハナウド、サラシナショウマ、マルバダケブキ、ノアザミです。チョウでは、コシオドシ、エルタテハ、ヒカゲチョウ、ヒメキマダラヒカゲ、ミドリヒョウモン、アサギマダラ(写真はなし)などを見ました。その他、ニホンザル、カモ、アメマスなどの写真を撮ることができました。これらは、ブログ「こぎつねさんぽに出かけよう」に掲載しました。また、車で走っている時、ニホンカモシカが道路上にいたのですが、カメラを準備する間に山の中に入ってしまいました。

 再び河童橋まで戻ってきました。もうビジターセンターに行かなくても十分自然を満喫できたので、そのままバスターミナルに行きました。平湯へ行くバス乗り場には、たくさんの人が並んでします。1時30分発のバス一台には乗りきれない人数だったので、臨時バスが出ることになりました。無事、その臨時バスに乗ることができました。

 2時過ぎに、平湯温泉に戻ってきました。明日はおそらく台風に追いかけられながらの帰宅になるので、今日中に、飛騨大鍾乳洞へ行くことにしました。車で30分走ったところにその鍾乳洞はあります。パンフレットには、「岐阜県高山市丹生川町の飛騨大鍾乳洞は、日本全国に約80か所あるという観光鍾乳洞の中でも、日本一の標高900mに位置し、1965年に大橋外吉により発見されました。このあたりは2億5千万年前には海だったため、海の中のサンゴなどから石灰石ができ、長い年月の間に雨水に溶けて、鍾乳洞がつくられていきました。膨大な時間と大自然が作り上げた驚異の芸術鍾乳洞をお楽しみ下さい。」と書かれていました。長い急な階段や、横を向かないと通れない細い通路もありましたが、全長800mほど、30分間の鍾乳洞歩きを楽しみました。鍾乳石がとてもよく保存された、素晴らしい鍾乳洞でした。

 「2億5千万年前」ということは、古生代ペルム紀(二畳紀)から中生代三畳紀の頃に堆積した石灰岩だということです。ウミユリの化石が、鍾乳洞内で見られました。ネットには、「岐阜県内にあるほかの鍾乳洞と同様に、美濃帯堆積岩類の石灰岩で形成されており、その中には当時のサンゴ礁に生息していた生物であるウミユリやフズリナの化石が多く含まれている。」とありました。

 大学生の頃、地学実習で岐阜赤坂の石灰岩石切場に化石採集に行き、何種類かのフズリナ化石の岩石プレパラートを作ったことを思い出しました。また、高校生の頃、岐阜県円原川の上流の観光鍾乳洞になっていない鍾乳洞にも調査研究で入ったことがありました。廃校になった小学校に寝泊まりして、一週間毎日もぐって鍾乳洞内の地図の作成をしたのも、今回見た石灰岩と同じ時期のものだったのだろうと、いろいろ過去の体験とつながってきました。

 

▼台風12号は、神奈川、静岡沖を東から西へと進み、三重県から奈良、大阪、兵庫を通り、少し前、水害で大変だった岡山、広島を通るコースを進む予報。