見通しを持つこと 2018年3月8日(土)
これから先の計画をすることについて考えてみます。毎年、春になると、新しい一年間の学習の進め方を決めます。授業の進め方、行事などについても、一年分の方針を持ちます。特に、お便りや学習の記録の仕方を決める時は、書式にこだわります。毎週書き続けるお便りは、時間的にも大変な仕事なので、よい書式が持てると、それで成功するかどうかの見通しがつきます。どの大きさの用紙に、どのように書いて、年間で何枚ぐらい書いていくかという思いを持ちます。この毎週のお便りが成功するということが、学習の安定、日々の生活のリズム、実践の積み上げとなります。お便りを書くこと自体が、日々見通しを持って生活をすることの中心になります。
地図を見ないで歩けるコースは、初めての道を地図を見ながら歩くときと比べてとても楽です。疲れているとき、忙しいときは、地図を見ながら新しい道を探しながら歩く散歩はできません。道に迷うと、大きなエネルギーを使うことが分かっているからです。お便りも、書式を決めていると、全体の道のりは分かっているので、その週に関係のあるテーマや身近な事柄について、いくつかの手法を用いて記述していけば書くことができます。ずっと続けていくことに関しては、書式がとても大切だということです。特に、とても忙しく、突発的な出来事も多い学校現場で、書き続けるには書式が大切なのです。
歩く時の書式は、同じコースを歩くことから、独自の歩き方へと進化します。駅から駅へと歩くという歩き方を発見すると、それは一つの書式となります。駅と駅をつないで10㎞以内のところを探すという歩き方です。同じ道を歩くことは楽なのですが、それでは、時間とお金を使っているのに新しいことに出会うチャンスが少なくなります。そこで、駅から駅へ歩くという一筆書きの書式をやっていこうと決めると、たくさんの歩くコースが見えてきます。ずっと続けて取り組むこともできるようになります。疲れている時は、駅と駅をつなぐ迷わない広い道を歩きます。元気な時は、街道を探しながら、細い道を歩きます。
これまで毎日、朝は学園前のスタバで1時間、コンピュータを使って文章を書いてきました。これも、生活の書式の一つです。同じ時間、同じ場所に座って、1時間文章を必ず書く。書かなければならないテーマは、お便り、講座のテキスト、原稿といろいろですが、1時間コンピュータに向かう習慣は、書くという作業に見通しを持つことができ、さらに期限が迫ってきているものに関しては、さらに時間を使わなければならないことも分かってきます。生活に見通しを持つということは、同じ場所、同じ時間に、必ずすることを決めることが大切だということなのでしょう。村上春樹さんは、朝の4時から9時の間に原稿を書くときめておられるようです。同じ時間に同じことをすると、成果が積みあがるということです。生活の書式をいくつか持つということは大切です。しかし、あまりたくさん持ちすぎると、自由度がなくなるので、これだけはという究極の書式を少し持つことが大切なのでしょう。
学びに見通しを持つことは、決めたことをやり続ける出発点です。時間と場所を決めて、必ず続けることを決めると、必ず成果として積み上がるということです。書き続ける事、歩き続ける事を、どのように一年間の生活の中に組み込んでいくかは、時間と場所と、取り組み方の書式を決めることであるということが分かります。これが、見通しを持つということになります。同じように、語学の習得、読書も、絵を描くことも、毎日、時間、場所を決めてやり続けると、必ず成果は上がるものです。(ここまで、この文章は、スタバで1時間の作業です。場所と時間を決めれば、1時間で、A4で1枚は、書けます。)
人の生活は、基本的に自由です。しかし、全てを自由にしておくと、常に新しいことに出会うごとに判断を迫られて、とても疲れることになります。また、日々の出来事に流されて、主体的でない人生を生きていくことになります。いくつか自分の生きる目的として、やってみたいことを持っていると、生きがいとなります。人は生きがいを持たないと生きていけないと思います。病気になって、活動力が落ちると、自分の決めたことが出来なくなるので、気分も落ち込みます。今の自分にできる範囲の、毎日の積み上げる課題を持つことは、健康な人生の見通しを持つことにつながると思います。
発達障害について書いている本を読んでいます。自分の中のこだわり性の部分が、その書かれていることに当てはまり、読んでいていい気分ではありません。何かにこだわりを持つこと、それに集中することが発達障害だと言われると、全ての事が出来なくなります。仕事も、趣味も、スポーツも、全て発達障害に入れられてしまいそうます。一つのことに集中することが発達障害ではなく、全体のバランスを考えて、また、他人の気持ちを考えて行動できない人のことなのでしょう。集中力の高い人は、人の気持ちを考えられないと言われる人が多いので、一日の生活の中で、自分の集中のために使う時間と、他の人のために使う時間、他の人との関わりに使う時間の使い分けが、大事になるのかもしれません。発達障害の人の治療は、このあたりのバランスを取ることを訓練しているのだと思います。
学校の教育も、このバランスをとることを身に付けるような活動をしています。朝の元気調べでも、一人が延々と話をするのではなく、時間配分を考え、3つの文章で短く話すという課題は大切です。また、自由研究など、自分の成果を自分の言葉で、クラス全体やグループの人に伝える学習も、全体と個人のバランスを取る活動になっています。さらに、劇や音楽やイベントの活動では、その子の特性に合わせて役を演じさせることで、その子なりの自己実現が可能です。脚本の無い劇を創ることは、その子達の生きる特性をそのまま表現させる劇です。大きく場の設定はあるのですが、表現はその子なりに考えさせます。全体を見通す力、そして、自分の特性にあった自己実現の場を持たせることが、自分の生きる世界を実現していくことになります。個人の特性が認められる経験は、とても大切です。特に自由研究の発表は、幼いころ、たくさん取り組ませることようにします。
最近、喫茶店で仕事をしていると、周りの席で、ずっとネット通信をしている人の姿が気になります。また、歩きながらずっと話し続けている人も多く見かけるようになりました。孤独になれない、自分の時間を自分で生きられない人が増えてしまっているのでしょう。それは、たぶん、今、自分がしたい事を持っていないからなのだと思います。人との関係性ばかりを気にしていて、自分のこだわりのある取り組みをしていないからなのでしょう。自分の人生に見通しを持ち、それに向けて、何をしていけばよいのかについて、取り組みをすることです。もっと、読書をしたり、何かを書いたり、考えたりしたらよいのにと、思います。世の中を生きていく上で、学習も、就職も、食べることも、病気も、死ぬときも、一人で頑張らないといけないときがあります。そのために、一人で自分のために頑張らないといけない時があるということを、自覚することが大切です。大学生の生活、特に女子学生を見ていると、人との関係性が世の中のすべてのように思っている人が多くいるようです。基本的に、個人の学習は個人が創る、能力は個人が発揮する、一定の目標に向けては周りの人は競争する相手であるということの自覚が大切です。自分一人の時間を大事にして、その時間の使い方について、自分が計画を立てて見通しを持つことがとても重要だと思います。