でんぷんの観察 2016年8月12日(金)
小学校の実験観察の中で、多様な素材を扱うことができる理科観察は、意外に少ないものです。今回、枚方教員センターの講座(8月3日)、奈良市理科部会研修会(8月10日)で取り上げた「でんぷんの観察」は、多くの種類のでんぷんを簡単に準備できるので、調べ方や比較の観点が多様になり、それぞれ観察者が創意工夫をして主体的にかかわることができる活動になりました。
「でんぷんの観察」は、最近教科書では、子どもが必ず取り組む観察にはなっていなくて、「やってみるといいね」というような取扱いです。そのため、顕微鏡観察は、「メダカの単元」でプランクトンを見る活動で初めて出合うので、顕微鏡の活用の習得がうまくできません。プランクトンの観察では、ミジンコ以外はかなり小さく、300倍、500倍での観察が必要になってきます。ケイソウ、イカダモ、ワムシ、ゾウリムシ、ツリガネムシなどの観察は、高倍率にしたり、さらに動物プランクトンは動き回ったりして、たった1時間の観察では、焦点を合わせることすら難しいのです。私のこれまでの経験では、ミジンコ以外で、比較的大きい線虫を見て、「気持ち悪い」と、いうような感想を子ども達に持たせて、観察が終わってしまうことがありました。
そのため、プランクトンの観察以前に、①花粉の観察、②でんぷんの観察など、動かない物、見やすいものの観察をして顕微鏡の扱いに慣れてから、③プランクトンの観察をさせるようにしたいと考えます。
花粉は、セロテープで花粉を採集し、その花粉のついたテープを、スライドガラスの大きさに切った白、又は黒の画用紙に貼りつけて、透過光でなく、反射光で観察をします。反射光なので、色が分かりやすく、花粉が立体的に観察できます。スライドガラス、カバーガラスを割ることを気にしないで、次々に、花粉に焦点を合わせることができるので、子ども達は、顕微鏡観察が大好きになります。さらに、観察した紙のプレパラートを持って帰ることができるので、個人的に顕微鏡を持っている子どもは、さらに家で観察を深めることができます。
でんぷんの観察は次のような準備をします。まず、スーパーマーケットで、いろいろな粉をそろえます。それを、100円ショップで売っている小さな容器に小分けして、ラベルを付けて理科室に持ち込みます。袋のままは持ち込まない方がいいです。100円ショップには、小さないろいろな形状の容器があります。粉を扱うとき混ざってしまわないように、スプーンも50個100円で買いました。
いろいろな粉類だけでなく、でんぷんが含まれていそうな身近な食材なども、いろいろ集めます。それぞれ集めたものは、顕微鏡で見る前に、でんぷんを含んでいるかどうかを調べます。ヨウ素でんぷん反応の実験には、卵パックを使います。粉や調べたいものを少しずつ一つひとつの凹みに入れて、薄いヨウ素液をかけると、でんぷんがあるか無いかを調べることができます。トレイの上や、スライドガラスの上よりも、ずっと能率的にきれいに進めることができます。
<準備物>
芋・・・ジャガイモ、サツマイモ、小芋、山芋、
芋以外・・・バナナ、カボチャ、チューリップ球根、ニンジン、キュウリ、ダイコン、
種・・・大豆、小豆、インゲンマメ、ひまわり、カボチャ、ピーマン、スイカ、コメ、麦、
ドングリ各種、栗、枝豆(柔らかいもの)、
トウモロコシ(乾燥した種・朝取りの柔らかいもの)
粉・・片栗粉、くず粉、小麦粉、そば粉、タピオカ、黄な粉、
わらび餅粉、パン粉、コーンスターチ
<用具・薬品>
顕微鏡、スライドガラス、カバーガラス、ビーカー、ペトリ皿、
ピンセット、メス、包丁、小さじ、乳鉢、乳棒、硬い種を割るペンチ、台ふき
卵パック、ヨウ素液、スポイト、粉を入れる容器、ラベル、
<手順>
⑴ ヨウ素液は、濃さの違う3種類ぐらいを作る。
⑵粉は、ペトリ皿で少量を水に溶かして使う。でんぷんが混ざった一滴をスライドガラスの上にのせて、カバーガラスをかぶせてから見る。ヨウ素液で色のついたでんぷんを見る場合は、薄いヨウ素液を使う。
⑶種は、硬い物と、水につけて柔らかくした物、枝豆やトウモロコシなど新鮮な物などを準備する。
⑷芋などのでんぷん調べは、断面を切って、その断面にヨウ素液をつけて、でんぷんがあるか調べる。
その断面のでんぷんを顕微鏡で見る時は、小さな断面をスライドガラスにこすりつけて、カバーガラスを付けてみる。
⑸スケッチを描くのが基本だが、スマホで顕微鏡写真を撮ることも伝える。
まず、自分なりにしたい事から始めてもらいます。これは、素材が選択できるので、自ら「めあて」を持って、取り組むことになります。させられる観察ではなく、自ら進める観察です。
A3の記録用紙に、結果、考察を書くスペースを準備します。予想をしてから取り組むように伝えます。最初10分間ほどは、先生方でも動き出さないのですが、次第に活動をしながら、面白さが分かってくるようです。
ジャガイモでんぷんの顕微鏡観察
ヨウ素液で色がついている
・・・◆8300万年前の巨大カルデラの跡◆・・・
兵庫県赤穂市周辺で、巨大噴火でできたカルデラの痕跡を発見したと、新聞発表(2016年8月9日)がありました。東西21キロ、南北16キロで、阿蘇のカルデラに匹敵するような規模です。驚いて、新聞を食い入るように見てしまいました。現在はカルデラの形状は浸食で失われていて、火口の場所も分からないと書かれています。他にも白亜紀の頃のカルデラは6か所ほど発見されていて、琵琶湖の南側にもあったと考えられています。姫路城のお城の石垣は、この赤穂市周辺の巨大火山の火山岩が多いのでしょうか。今度調べてみたいと思います。
現在は、瀬戸内海から近畿にかけては活火山がないので、そのころの風景が想像できないのですが、阿蘇や霧島のような大きな火山が姫路あたりにあり、さらに琵琶湖のあたり、もしかしたら、大阪・奈良のあたりにもあったのかもしれません。二上山、耳成山、若草山、室生地域などにも、1000万〜2000万年前の火山岩があるので、紀伊半島の真ん中にも大きなカルデラができるような火山が埋もれているのではないでしょうか。
(*^▽^*)