新しい指導要領の方向性 2016年8月2日(火)
次期指導要領の改訂に向けて、文部科学省で行われている中央教育審議会から、基本方針が出されました。小学校教育の理科教育から見て気になる次の3点について、考えをまとめてみました。
◎アクティブラーニングとしての学習を進める。
◎プログラミング教育を理科や算数や音楽などの教科の中で実施する。
◎英語は、3,4年が1時間の活動、5,6年が2時間の教科となる。
⑴アクティブラーニング
アクティブラーニングは、日本の教育の多くの中学、高校、大学の授業が、講義形式になっている現状からの方向転換として提案されています。知識については、世界的によい到達度であると言われていますが、さらなる思考力、発想力、創造力をつけるために議論の中で追究力を育む活動的な学習にすべきだというものです。アメリカの大学では、80%もの授業が、この討議による形式になっているとも言われています。学びの過程で習得した生きた知識、さらにその知識を活用していく探究の過程を大切にする学習にしていくということです。
このアクティブラーニングで大切なことは、先生は、子ども以上に学ぶ人であり、さらに先生を超えるような子どもの育成を目指すことです。小グループで話し合う、全体で話し合う、先生と話し合うなどを通して、①生活や経験から追究の問題を作る、②問題をいかに追究するかの方法を検討する、③多様で、個性的な追究活動を進める、④結果を見て多面的に考え合うなど、多様な場面でどのようにアクティブラーニングを活用していくかの方法論が、これから試行錯誤されていくのだと思われます。
これまで私のいたこぎつね小学校は、基本的にはアクティブラーニングの形態を取り学習を進めてきているつもりですが、それでも、先生から言われた活動を、先生のレールにのせられてしているだけというのも多くあり、これを機会に、根本的に見直す必要もあります。動いている、実験をしているからアクティブなのではなくて、その実験や観察に至るまでの問題作りの過程が、みんなで話し合い、自分達の追究として活動が主体的に進められなければならないと思います。独自学習からの相互学習が本当に実施されているかということが課題です。
⑵プログラミング教育
分かりにくい分野の動きです。これは、近い将来、コンピュータのプログラムを作る人が不足してくると言うところから、動き始めた課題なのでしょう。実際の社会の要望に対応していく動きです。さらに、これからの国際紛争、防衛に関しても、まずはコンピュータ上の戦いになるので、その人材の育成にも慌てているということです。公認ハッカーを育てるというようなことにも当たるのかもしれません。
「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」より提案があり、指導要領にプログラミング教育が反映するように、実施の具体化が進んでいます。しかし、「コーディング(プログラミング言語を用いた記述方法)を覚えることがプログラミング教育の目的である」との誤解や、「小さいうちにコーディングを覚えさせないと子供が将来苦労するのではないか」といった保護者の過熱ぶりや、「コーディングは時代によって変わるから、プログラミング教育に時間をかけることは全くの無駄ではないか」といったような専門家の反応もあります。このプログラミング教育は、『子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。』と文科省は説明しています。
また、理科教育に言及している部分では、「例えば、身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることをとらえる学習を行う際、プログラミングを体験しながら、エネルギーを効果的に利用するために、様々な電気製品にはプログラムが活用され条件に応じて動作していることに気付く学習を取り入れていくことが考えられる。例えば、外が暗くなると照明の明かりが自動的に明るくなったり、一定の時間が経過すると自動的に消えたりすることなど。」と述べられていて、さらに「実施に当たっては、プログラミングを体験することが、理科における学びの本質である自然事象について問題を見いだし、より妥当な考えを導き出す学習過程として適切に位置付けられるようにすることとともに、子供一人一人に探究的な学びが実現し、一層充実するものとなるように十分配慮することが必要である。また、実際の実験・観察をおろそかにすることがないように留意することが必要である。言うまでもないが、生物を模したコンピュータ上のモデルやロボットの動きを見ることで、生物に関する学びに代えることはできないことなどは、改めて確認しておく必要がある。」と文科省は言っています。
何をどのようにすればよいのかというものは余りなく、これから、現場が実践研究を進めて、具体的な教育効果のある事例を出していくことに意味があると考えているようです。また、関連の資料を読んでいると、「プログラミング的思考」という言葉が使われていて、実際のコンピュータを扱うのではなく、コンピュータ的な思考を、数学や理科の中で体験し思考力を育てるものでよいとも書かれています。例えば、1、2、4、8、16のカードを5人が持ち、そのカードの組み合わせで32までの数字が表現できることをカードの表と裏の表現に置き換えるということは、0と1の5つの組み合わせで、32の数字を表現できる体験をするなどが言われています。
小学校の先生方は、まじめに研究し、実践事例を出すので、その成果が、中学校、高等学校へと普及し、次の日本の産業と防衛を支えていくのでしょう。これから小学校現場はとても困る状況にあることが分かりました。
⑶英語教育始まる
小学校で、教科としての英語教育が始まります。義務教育で習得する英単語も、現行の3000語から5000語に増えるらしいです。小学校で習得すべき単語も決められるのでしょう。理科教育との連携で、虫や花の名前、実験道具などの英語表記などが、関連させられるかもしれません。実際の学習と対応した場合、記憶しやすいものだと思われます。私自身、やはり地質見学で海外に出かける時、英語の資料がスラスラ読めるといいのにといつも感じます。家にも英語で書かれた地質関係の資料があります。写真が多いので、見ているだけでも楽しいけれど、やはり読めるとさらによいと思います。中学校から大学まで長く英語教育を受けてきたのに、殆ど読めないというのは困ったものです。今年は退職したので、年に数冊でも、地質の英文の本を読んでいきたいと思います。本当は、小説も読めるとよいのでしょう。しかし、なかなか難しい。やる気の問題ですが・・・。