大学の講座が始まる 2016年4月1日(金)
こぎつね小学校の副校長を最後に、平成28年3月31日、小学校の教師の仕事から退職しました。4月からは、午前中はこぎつね幼稚園に席を置き、幼児の科学教育と、幼小一貫教育の支援と、文部科学省研究開発学校指定研究の支援をすることになりました。毎日4時間、幼稚園と小学校の教育について、考えることができます。これまでの経験を生かして、幼児教育に少し貢献できたらいいなあと思っています。そして、火曜日の午後は、奈良こぎつね短期大学で、木曜日の午後は、大阪こぎつね大学で、これから教師を目指している大学生と一緒に、教育について考え合うことができます。また、京都こぎつね大学へも、院生の指導に行きます。これまでの小学校勤務と違って、月、水、金の午後は、自由に使えます。38年間、朝から晩まで、1年中ずっと子どもの教育に関わってきた者にとっては、とても自由度のある生活になりました。ゆっくり時間をかけて、教育、文化、これから先生になる人の指導について考えていくことができます。本を読んだり、書いたり、いろいろ各地を歩いたりもできます。楽しみです。
これまでの経歴の紹介。38年間、小学校教諭として、小学校理科教育について研究を進めてきました。堺市では、科学教育研究所(4年間)、公立小学校2校(12年間)に務め、先生をしながら、地学教育研究会、初等理科教育研究会などで、仲間と共に多くの取り組みを進めました。38歳の時、奈良こぎつね小学校に転任し、22年間、主に理科教育を中心に、「子ども主体の教育」について研究を進めました。その間、小学校の理科教科書の執筆、ソニー科学教育財団の運営企画委員、奈良県小学校理科教育研究部の指導委員なども務めました。また、西日本の各地の研究校の指導や、教育委員会からの要請による教育講演などにも関わってきました。こぎつね小学校の仕事では、本の出版の編集、百年誌の編纂、文部科学省への研究開発学校指定のための論文作成にも取り組みました。教職の教科教育方法理科の講座、教育実習などで、奈良こぎつね女子大学の学生を指導しました。
小学校では、担任をしたり、理科専科教諭をしたりと、多くの子どもたちと学習を進めました。その時、「学習は子ども自身が自分でするもの」「自分で考え、学びながら、力をつけることが大切」「先生は、環境を整えたり、状況を作ったりして、お手伝いをする」という教育観を大切にしました。これは、「子ども自ら」と言っても勝手に自由にさせることではなくて、教える教育よりとても難しい教育方法です。教師にとっても子どもにとっても、我慢と忍耐の必要な方法です。子どもの生活リズムでの学びを見守り、子どもが自律した学習力を身に付ける学習法です。分かりやすく言うと、自分で話したことは印象に残るが、人から聞いたことはすぐに忘れるということ、また、連れていってもらった旅行は印象が浅いが、自分で計画を立てて行った旅行はいつまでも細部まで覚えているということと同じです。学習は印象深く、自ら進めて、学習力をつけるように進めていきます。
自ら学ぶ学習には、2つあります。独自で学ぶ学習(独自学習)と、みんなで学び合う学習(相互学習)です。独自学習は、自分で資料や事実に向かい合い、自分のノートにしっかりまとめて、考えを構想する学習です。自分なりの学ぶ力をつけるには、一人で時間をかけて取り組むことが大切です。相互学習は、独自学習で自分なりに考えを深めたことを持ちより、協働的に「おたずね」を出し合って、高め合う時間です。ここでは、話し合いの中で分からないことは、すぐに調べるための辞書や参考書も持ち込み、新たな追究を仲間と共に進めることが大切です。そして、相互学習の後に、個人でもう一度、さらなる独自学習を進めて、自分の納得のいくノート作りをして、自らの学びを整理していきます。学びの最初には、先生の指導があるのではなく、必ず独自学習がある学び方です。独自-相互―独自の繰り返しにより、自律的な学びを身に付けていきます。これから世の中に出て仕事をするとき、この学び方はとても重要な力になると考えます。
先生という職業は、とても創造的で、常に子どもと共に学び続けられる探究的な仕事です。先生に必要な力として秋田喜代美(東京大学大学院教授)は、専門家としての教師として次のことを挙げています。
① 教職に対する責任感、探究力、教職生活全体を通じて自主的に学び続ける力(使命感や責任感、教育的愛情)
② 専門職としての高度な知識・技能
・教科や教職に関する高度な専門的知識(グローバル化、情報化、特別支援教育など、その他の新たな課題に対して対応できる知識・技能を含む)
・新たな学びを展開できる実践的指導力(基礎的・基本的な知識・技能の習得に加えて思考力・判断力・表現力等を育成するため、知識技能を活用する学習活動や課題探求型の学習、協働的学びなどをデザインできる指導力)
・教科指導、生徒指導、学級経営等を的確に実践できる力
③総合的な人間力(豊かな人間性や社会性、コミュニケーション力、同僚とチームで対応する力、地域や社会の多様な組織等と連携・協働できる力)
「人を育てる仕事としての教師の仕事は、具体的にどのようなものであり、いかなる専門性が発揮されるのか、どのように授業やカリキュラムを創るのか。生徒を育てる専門家として、時代の中で教師は実際にこれまでどのように生きてきたのか、そしてこれからどのように生きていくのか、その具体的事実を大切にしていきたい。」
秋田先生が述べているように、学び続けることのできる人が教師になるとよいのでしょう。児童、生徒に学ぶことの楽しさを伝え、先生が学び続ける姿を見て、子どもも「学ぶということ」を学びます。私は、子どもの頃の石集めマニアを最初とし、大学では地質学・岩石学を学び、卒業して教師になってから科学教育研究所に勤めることができました。その後、堺市地学教育研究会を中心として、毎年、日本各地の地質、火山、化石観察に出かけ、さらに数年に一度はハワイ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国などの海外の大規模な地質見学にも出かけました。子どもの頃の趣味、そして大学での学びが、その後の教師生活の原動力となりました。