子ども主体の学級学年の組織について 2017年6月22日(木)

 

現在、宿泊学習について、企画を考える学習をしています。新任の先生として、深い学びのある宿泊学習の計画と、保護者説明会の資料を書いてください。保護者にとって安全安心で、なおかつ、子ども達が楽しく主体的に学べる活動を考えましょう。ここでは、この計画案の学習に並行しながら、宿泊学習が主体的に進められるような学級、学年の組織について考えてみましょう。 

校外で子ども達が主体的に学習を進めるためには、子ども自身が目的を持っている必要があります。それは、日々の校内での子ども主体の学習が成立していて、さらにその延長線上に校外学習があり、校外に行って調べてみたい、自分達で旅行の生活の企画運営をしてみたいという、意欲と目的があることが大切です。全員が何らかの係を担当し、互いに協力しながら、その担当の係の目標を達成させていこうとする相互扶助の精神が育っていることが前提です。それには、日々の学級の組織と、学年の組織された活動が大切になってきます。

 

①学級の組織

 ア、日直

  学級の運営は、日直が中心になって、朝の会~帰りの会までの一日の学級の暮らしについて責任をもって進行します。日直は、全員が順番に回ってきますので、全員がクラスの生活リーダーとして、およそ月に1度、責任をもって学級の暮らしについて考える機会を持ちます。

 朝の会(20分) 挨拶→元気調べ→委員会からの連絡→今日の目標

 教室の移動   音楽、図工、体育、理科、情報などの学習は、授業の始まる5分前に教室に並んで移

動します。例えば、音楽係は先に特別教室に行って、先生と打ち合わせをするので、

日直が、遅れないように並べて移動します。

 昼休みの清掃  掃除は朝にするので、給食後の昼休みに、日直は教室に残って簡単な掃除をします。

 帰りの会(10分)連絡黒板を書くのは明日の日直が進め、今日の振り返りなどの帰りの会の進行は、今日の日直が進めます。

 戸締り     片づけ、整頓、戸締りを、今日の日直が担当します。

 

 イ、学習係

  国語、社会、算数、理科、体育、図工、音楽、家庭科、情報、英語など、全員がそれぞれ入りたい教科の担当をして、授業の進行、板書、ドリルなどの計画、提出物集めなど、先生と相談しながら、主体的に学習進行をします。

 

 ウ、生活係

  生き物係、花係、出席記録係、新聞係、図書係、レクリエーション係、掲示係、配布物係、遊び時間係など、子どもが必要と思う係を提案し、みんなで分担して担当します。週に1時間ある特別活動の時間に、それぞれの係からの連絡を行い、学級全体に向けての取り組みを進めさせます。

 

 エ、給食係

  小学校では当然、全員が分担しながら給食当番を進めます。子ども達でいくつかのグループに分けて順番に担当するのは当然のことで、各グループの中の細かい分担は、毎回その場で子ども達が気配りをしながら決めていくようにしていました。牛乳係、おかず係とかを先生が細かく決めないで、子ども達が毎回瞬時に、その時々に考えながら、自分は今、どのような動きをすればよいのかを判断し、より早く安全に、給食が配膳できるようになるかを常に考えさせるようにしました。 

 

②学年の組織

 ア、遠足、社会見学、宿泊学習等の運営委員会

  遠足の他に、社会見学や宿泊学習、そして修学旅行などがあります。それらの運営委員を各学級から選び、さらに、学年全員を、班長、学習係、移動係、食事就寝係、保健係などに組織化し、その代表会議を組織します。集まりは、特別活動の時間を中心に、係の打ち合わせなどは昼休みなどの時間を使って、話し合いを進めます。手間ですが、3年間毎回組織化をしていくと、修学旅行の頃には、全て子どもが進めるようになります。先生の、意欲、根気、見通し力が大切です。

  社会見学では、現地での聞き取りに向けて事前学習が大切です。その事前学習会を組織するのも運営委員や学習係の仕事です。当日の挨拶、お礼の言葉の準備、後日のお礼状の送付まで、気を使います。

 

 イ、運動会運営委員会

  運動会は、小学校の頃から毎年取り組んでいることで、行う種目もほぼ決まってきているので、その中での工夫を、子ども主体の組織で進めます。練習も運営委員を中心に進めます。先生は、最初の方針や今年の状況を伝え、運営委員の児童達が中心に、演技や競技のテーマや練習計画を立てて、みんなに伝えていきます。

 

 ウ、学習発表会運営委員会

  学習発表会は、劇、群読、合唱、合奏、運動(跳び箱、マット、縄跳び、ダンス)などに、取り組んできました。また、自由研究から発展した、理科研究の発表会を、ポスターセッション形式で進めたこともあります。その他、芸術展覧会、個人の特技の発表会なども、企画しました。

  司会進行、はじめのことば、おわりのことば、プログラム作り、時間管理、保護者への招待状、会場作りなど、やるべきことがたくさんあります。

 

 エ、学年体育運営委員会

週3時間の体育のうち、1時間を学年合同体育とし、運営委員が中心になって、いろいろなスポーツ大会の企画をします。スポーツテスト、縄跳び大会、綱引き、陸上記録会、サッカー・バスケットボール球技大会、アスレチック競争など、個人、グループ、学級、クラスを越えたグループなど、いろいろなチームを組みながら、学年のなかよしを高め、楽しく運動ができる企画を考えます。

 

 オ、人権学習会

  人権の学習は、各クラスの話し合いをもとに、学年全員が集まって、話し合う機会を持ちます。その時も、企画、司会、進行を子どもの運営委員が進めます。いじめ、差別問題など、学級内だけでは解決できないことを、より大きな集団で意見発表したり、討議したりすることで、社会的な問題として考えていくようにします。先生方も、複数が関わるので、いろいろな立場や考え方から、意見を述べることができます。

 

 カ、地域見学、地域調べ学習の運営委員

  社会科や総合的な学習の時間の一部を、学年全員で取り組むと大きな活動ができます。校区の歴史調べ、伝統産業調べ、工場調べ、農業調べ、水産業調べ、お店調べ、畜産調べなどを、社会科の学習と合わせて、調査と記録を作り、共有してきました。一緒に見学に出かけることもありました。また、各地の暮らし調べでは、いなかの祖父母、親戚に手紙を書いて、雪国の暮らし、暖かい地方の暮らし、山の暮らし、海辺の暮らしなどについてお返事をもらい、資料にして、読み合いました。八百屋さんで、4月から7月まで、野菜の入っていた段ボール箱をいただき、月ごとに廊下に掲示していきました。野菜の産地が九州地方から次第に四国、近畿へ、さらには信州高原野菜へと変わっていく様子を、子ども達の力で見つけることができました。

 

 キ、自然調査委員会

  地域の植物と昆虫を6月〜8月にかけて調査をしました。学年全員で虫取り、植物採集をするので、凄い行動力です。100人以上の子どもが真剣に、狭い校区の虫取りをすると、あらゆる植物や昆虫を記録することができました。それらを標本にしました。また、9月に出かけた、自然豊かな海辺のところで1時間ほど、植物と昆虫の採集を集中して行いました。小さな町工場の多い都会の自然と、和歌山の豊かな自然との比較研究をすることができました。

 

 ク、卒業委員会

  卒業式の企画運営を中心に考えると共に、卒業に向けて、卒業記念として、地域の風土記、古事記、地域カルタ作りを進めました。4年生から一緒に学んできた教師と子ども達が、3年間の学習の総まとめとして、卒業記念研究をしました。

 

 

行動しながら学ぶ 

2015年9月「こぎつね小学校 学校だより」

 夏休みは、行動しながら学びましたか。私はお出かけが殆どできていませんが、学校への行き帰りの電車と喫茶店でコーヒーを飲みながら、少しは読書をすることはできました。

 最近、歩くことが学問になることを書いた本を読みました。鶴見良行さんは、「私たちがアジアを知るのにいちばん大切なのは、演繹的な推進力よりもシャーロックホームズ的な観察力だと思っています。歩いてわかったこと、瑣末な体験の積み重ねが、新しい学問をつくっていくと私は思っています。」と書いていました。鶴見さんは、バナナ、ナマコ、エビなどの流通について、東南アジアの国々を実際に歩いて、現地の生産者の生活から日本人の食卓に上がってくるまでのいろいろな問題点を、見て、聞いて、克明に書いていきます。昼間は現地を歩き実際に見て、生産者や村人に出会って話を聞き、写真やノートにメモをして、夜には昼間のメモから文章に起こすという積み重ねで、学問となっていきます。

かつて、担任をしている時の「奈良さんぽ」の実践も、こんな風だったなと思い出されます。奈良公園周辺のお寺から始まり、飛鳥、斑鳩へ、さらに大阪、京都(東寺)、滋賀(比叡山)、和歌山(高野山)へと、子どもたちは独自学習をして「おたずね」を準備し、現地で見て、聞いて、メモをして、家に帰ると日記にその記録を文章に起こすという学習生活を長くしました。また、動物園、水族館、自然史博物館、昆虫館などに行った時も、素晴らしい報告記として、日記にその記録が残されました。

 行動しながら学ぶとは、歩くだけではありません。図書館にこもって、自分の興味ある作家の本を読む、テーマを決めて調べ学習をすることも行動です。さらに、天文学者が毎夜天体観測をしてたくさんのデータを集めたり、昆虫学者がたくさんの虫の分類をすることでその分布や進化を調べたり、生命や化学の実験で膨大な比較実験を計画的に進めたりすることも、行動しながら学ぶことです。運動選手がトレーニングをすること、演奏者や歌手が日々のレッスンをすることも一緒です。行動しながら学ぶということは、自分の時間をどれだけその追究に費やすかということでもあるのでしょう。鶴見良行さんが「瑣末な体験の積み重ねが、新しい学問をつくっていく」と言うように、小さな体験の積み重ねが、自分の追究を進めるということです。私も、30年近く日本各地や世界数か国の地質見学に時間とお金を費やしてきました。地質のことは、学問としてまとめられていませんが、その経験と方法が、「奈良さんぽ」の実践に生きてきたのではないかと思っています。

また、行動しながら学ぶためには、「問い」を持つことが大切です。何を調べるために行動しているかということです。すでに答えが分かっている問いでは、本当に問うべきことに気づくことはできません。また、独自学習が進んでいないときの問いは、せっかくの答えを理解することはできません。よい問いを持つためには、膨大な博物的な学習がまず独自に行われることが大切です。そして博物学的な学びの上にはじめて多様な思考力が育ち、自分の知識や体験や生活と付き合わせて思考された問いが生まれます。さらには、多様な思考力を駆使しながら学び続けることで、他の人とは少し違う創造的独創的な問いが発せられるようになるのではないかと考えます。よい問い、するどい問い、個性的な問いは、このようにして時間と手間をかけて成長します。問いを持って行動しましょう。