遠足の活動の組織化とその意義 2017年6月8日(木)
遠足など野外活動は、学校では毎年の行事なので、先生が先頭を歩くだけ、また、バスガイドさんの旗の後ろをついて歩くだけでも進められるのですが、そのお出かけの機会を子ども達が企画運営で進める活動として取り組むと、ずいぶん子ども達の意欲があがるものです。
▼小学校低学年の遠足の取り組み
低学年は、分担するのではなくて、全員がしたい係をします。また、全員がすべてのことを考えます。例えば、東大寺大仏殿へ行くことにします。朝、8時30分過ぎの電車で、学園前から近鉄奈良駅へ向かうにはどの電車に乗ればよいか。奈良駅から大仏殿までは、どのコースを通ると良いか。途中で、見学できる所は何があるのか。大仏殿で説明を受ける時、何を聞きたいのか(おたずね)。事前にどんな資料を集めたのか。自分が、大仏殿に行くときの、一番の目当ては何か。学校に12時15分に帰着するには、近鉄奈良駅の電車は何時何分に乗ればよいか。・・・などなど、行くまでにやるべきことがたくさんあります。集めた資料は、ファイルに閉じていきます。遠足のしおりができていきます。朝の自由研究発表で、発表する人も現れます。お友達に負けてはいられません。図書館へ行って、本を借りて持ち歩いている人もいます。土日に、遠足より先に下見に行った人もいます。などなど・・
学級遠足へ行く前に、多くの子ども達は、大仏博士になっています。このような子ども達と見学に行くのと、「先生、まだ・・」「しんどい・・」「大仏って何・・」など、何も独自学習をしない(させない)子ども達とでは、全く学びのレベルは違っています。天王寺動物園も、大阪海遊館も、お菓子工場見学も、全て行く前の取り組みで盛り上がるような子ども達です。当日の役割分担も取り合いになり、くじやジャンケンで係を決めたりします。
現地では、子どもはせっかちなので、次々に進もうとします。先生は、子ども達がメモを書くための時間を時々とるようにします。「ここで10分間止まります。メモを書きましょう。」と、指示を出します。また、子ども達は気が走っているので、先頭は先生が歩き、歩くスピードと安全確保に気をつけます。「ここからは、どちらの道を進むの?」と聞きながら、道案内の子どもの指示を受けながら進みます。
お坊様へのお尋ねの司会は、先生と係りの子どもでします。お坊様のお話の後、お礼を言う人を決めておきます。先にお礼の文章を書いていくのではなくて、お坊様の話を取り入れたお礼をその場で考えて言える子どもに育ってきます。
▼小学校高学年の遠足の取り組み
高学年になると、子ども達はこれまでの遠足などの経験を踏まえて、係活動の意義が理解できるようになってきています。そこで、遠足に行く前に、実行委員長(2人)を選び、彼らを中心に、今回の遠足のテーマを、全体で考える機会を持ちます。次に、班を決めて、班の中で班長、学習係、乗り物係、昼食係、保健係などを決めて、一人一役にします。行先、活動によって、その係は違ってきます。
次に、係ごとの話し合いの時間を持ちます。班長会、学習係会、乗り物係会、昼食係会、保健係会などを決めて、それぞれの係会の中で係の長も決めます。丁度、会社の組織のように、イベントの分担のように、社会に出てからの組織の在り方について学ぶ機会となります。
遠足のめあてがきまり、学習係が見学ポイントを決め、乗り物係が移動コースを考え、昼食場所や昼食時間、トイレや安全や健康について検討されて、しおりが作られていきます。
さらに、学習係を中心に、事前学習会が開かれて、現地でおたずねができる場合、質問項目を整理していきます。社会見学は、現地での学習を中心に計画を進めます。
リーダー会
実行委員長 2人 班長係会から選ぶ
学習委員長 2人 学習係会から選ぶ
乗り物、食事、保健も、それぞれ2人ずつ選ぶ
しおり作り
リーダー会10人が中心に進める
係のしごと
実行委員長・・すべての活動の進行や達成に対して責任を持つ。お礼の言葉。
班長・・・・・人数確認を中心に、班の中の係がスムーズに動くように気を配る。
学習・・・・・事前学習、現地でのおたずね作り、現地での聞き取りの司会進行。
乗り物・・・・移動に関すること、地図、進行の時刻に関わることに責任を持つ。
昼食・・・・・食事場所、食事の時のマナー、ごみの指示。
保健・・・・・けが、病気の気配りと保健の先生との連絡、小さなけがの手当て。服装の指示。
▼宿泊学習、修学旅行などの係の進行
宿泊を伴う活動になると、さらに詳しい組織を作り、一日の生活、活動、学習の時程を組むことができます。宿泊を伴う(スキー合宿、キャンプ、登山、臨海合宿、修学旅行)学習では、各係が積極的に全体に連絡を伝えて、すべての活動の運営管理を進めます。また、係ごとの話し合いの会を夕食後に持つようにします。
子どもの係が全体に話す時間を作る、係ごとの話し合いの場を作るのは、先生の仕事です。そこがいい加減になり、イライラした先生が大きな声でしかりながら活動を進めるようになると、子ども達の組織はすぐに壊れてしまいます。
①朝の体操と連絡 (昨日のふりかえりを伝え、今日のめあてを確認する)
②朝食の前後 (今日の活動についての連絡をする)
③昼食の前後 (午前中の活動のふりかえりと、午後からの連絡をする)
④夕食の前後 (午後の活動のふりかえりと、夕食後、明日の朝の連絡をする)
⑤一日のふりかえりを、グループごとに行い、全体で発表する。
<合宿の企画書を作る>
▼東京合宿について考える
目的 「世界につながる日本を知る」
行先 東京
日程 2泊3日 9月
宿泊 国際ユースホステル(飯田橋)
移動 新幹線、都内は地下鉄
▼曽爾高原合宿について考える
目的 「自然体験をする」
宿泊 曽爾高原青少年自然の家
日程 2泊3日 9月
移動 バス
▼スキー合宿について考える
目的 「スキー学習、雪国の暮らしの理解」
行先 岐阜のスキー場
日程 2泊3日 2月
移動 バス
■基本の書式 (こぎつね中学校 80人 2クラス)
行先
日時
学習の目的
宿泊地 (住所 電話)
一人当たりの金額
近隣の病院
日程 1日目
2日目
3日目
持ち物
その他注意事項
<前回の学習のふりかえり>
▼YZ・・自然の中や、歴史的時間の空間の中に、身を置くことで、子どもは自然に関心を得ることが出来るため、さんぽは重要だと感じた。加えて、関心を持ったことに対して、参考書や辞書事典を利用して、自らが学習することで成長することが分かった。この研究が個人の興味関心を高め、家庭を育てる原動力になるために、自分たちにあった学習法が、自然に身に付くと思う。そこが、自律的な学習だ。(きつねT:自然には、身に付かないのですよ。背景には、教師の緻密な下調べ、事前調査や交渉、環境作りが必要です。それを感じさせない、教師の学習、子どもと共に学び続ける教師の成長が大切です。)
▼SG・・2年生の時点で、脚本、背景、音楽を子ども達で取り組ませるのは、早い段階から子どもの自立した判断や行動を養うことができるのでいいなあと思った。ただ、その活動を見守り、支えていく教師の手腕が大きく影響してくると思うので、教師の学習の進め方が重要になってくると思った。(きつねT:そうなのです。子どもをその気にさせる力が、必要です。演劇に関しては、若いころ、毎月いろいろな劇団の演劇を見に行きました。)
▼IO・・私は、今回の資料を読んで、継続は力なのだと強く感じた。小学校低学年のうちから「さんぽ」「自由研究」「劇作り」などをさせることによって、続けることを当たり前の事と思わせることによって、続けることができ、それを短い期間で仕上げる力がつくと思った。(きつねT:人は状況の中で育ちます。質の高い学びの場では、全能力を発揮して、本気で学び始めると思います。)
▼KD・・「大和は国のまほろば」を読んで思ったことは、公立とかの小学校と違って、二度とできないような貴重な体験をたくさんして羨ましいなと思いました。元興寺の見学であったり、東京大学の研究室の訪問であったり、電通の見学であったりと、普通の学校なら見学することが難しい場所であっても、見学することが出来ていることは本当に勉学に力を入れている小学校でないと厳しいかなと思った。(きつねT:元興寺は、誰でも見学ができます。東京大学は、きつねTが一緒に本を書いた先生の研究室です。個人的なつながりです。電通は、たまたま保護者に知り合いがおられて、そこからのつてで見学ができました。Kさんの生き方、やる気の問題です。公立や附属の問題ではありません。)
▼HO・・「しごと」で育つ自律的学習力を読んで、私は好奇心のある小学生の低学年から外の世界に触れさせることで、更に知ろうとする興味がわくのだと思いました。先生が、子どもの知りたいことを全て教えるのではなくて、逆に先生が教えてもらっているように見えるほどに、子どもたちが細部まで調べ込んでいて、興味をもつこと、もっと知りたいという好奇心を持たせることは、とても大切なんだと思いました。中学生、高校生では、校外に出ての学習時間は少なくなると思いますが、生徒たちに、興味、好奇心を持たせられるような授業をすることで、自ら進んで調べたりすると思いました。(きつねT:小学生の低学年から、興味を自分で持ち広げていく学習を進めることが、とても大切だと思います。さらに前に配った、公立校での実践、校区の農業、漁業、工業、自然、伝統産業しらべ、風土記・古事記作り、地域カルタ作りなど、中学生に与える課題になりそうです。)
▼KY・・さんぽ、自由研究、劇の三つの連動で、地域を学ぶ活動は、とてもよいと感じた。教室でじっと座って先生の話を聞くだけだと興味がわかず、自分が訪れ体験することで、楽しさや面白さが分かると思った。(きつねT:中学生に、活動的な学習をさせるのは、私が公立校12年間、こぎつね小学校22年間で実践した以上の苦労が必要だと思います。ぜひ、中学校版の、活動的な学習方法を確立し、世界に誇れる日本の中学教育を拓いてください。)