教材研究や指導法 2017年5月23日(火)
これまで、自主的、主体的な学習について学んできて、そろそろ、その良さや価値を理解してきていると思います。しかし、その実施には多くの困難があります。例えば、学校現場は学力向上、問題行動、貧困家庭、障害を持った子どもの理解、クレーム保護者対応などがあり、学級指導、学習指導だけに集中したいのに、いろいろな課題が突きつけられてきます。校内の会議、委員会なども多く、教育委員会などが主催する研修会もあり、学級の子ども達のために教材研究をしたり、ノートを見たり、お便りを書いたりする時間の確保が難しい状況にもなっています。このように限られた時間の中で、精一杯の授業を進めるのに一番大切なことは、日々の授業時間の質を高めることだと言えます。
毎時間の45分の授業を充実した状況として維持していくにはどうすればよいでしょうか。毎日、朝の会で全員の発言を聞き合い、子どもが毎時間の授業を自分たちで始めて進行して、最後にふりかえりを書く、さらにいろいろな常時活動はほぼ子どもが進め、帰りの会で係からの連絡と先生からの連絡を伝えるというように、子ども達が自律した学習生活を進めるようになりました。しかし、毎日、同じ繰り返しでは、慣れと気のゆるみが出てきます。常に向上心を持たせ続けるには、教師の「気力と努力と根気」が必要です。日々、さらなる目標を持たせて、それに向けてそれぞれが独自学習を進められるようにする必要があります。そのためには、教師が子どもと共に学び続けることにより、つぎなる課題を子どもと共に創造していくようにします。進むべきテーマが、子どもと教師が学習の中で共有できているように心がけます。教師が、子どもの書いたふりかえりを読み、そこから、子どもの興味の方向性、子どもの考えを読み取り、次なる学びの方向性を見出すのです。学級全体の子ども達の考えを知りえるのは教師だけなので、つぎなる大きな学びのテーマ作りを、教師がうまく関わりながら進めるようにします。
また、学び続ける子どもをさらに発展させていくのに大切なことは、「子どもに対する、多様な誉め言葉と適切な指導」です。適切な評価によって、意欲の進展を図ります。学びの質は、子どもの意欲が伴わないと、決して高まるものではありません。「学習のふりかえり」の質を高めるためには、教師は全員のノートを毎時間見て、良いところには線を引いてあげたり、何らかの評価を示してあげたり、お便りに書き出してあげたりしながら、毎時間の学びに対して評価をしていくようにします。学びを育てる手立てです。学校は、教えて、覚えさせて、知識をテストする機関ではなく、毎時間の学習で、確実になんらかの学びをしているかどうかを見守っていくことが大切です。学習後にテストをしてから、この子は分かっていないと判断しても手遅れです。あなたは30点ですと言われても、子どもは困ってしまいます。どんどん、落ちこぼれを増やしていくだけです。一時間ごとに、子どもの考えの深まりの実感をノートからしっかり読み取り、支援し、深めさせていくことが学習指導です。教えて、ノートに書かせて、覚えさせて、テストをするという教師主体の教育は、子どもの学びと言わないのですね。それぞれの個性的な学びの瞬間を褒めて、それぞれの学びの過程を育てるようにすることが教育なのです。
教師は、子どもの生活や学習に負けない生活をすることが大切です。怠惰な生活をしている先生に、質の高い学習はできませんし、自分よりも賢い子ども達が学級にはたくさんいます。できれば何か、子どもに負けないものを持つことが、教師の自信であり、子どもの前に立つ価値になります。教師の学習に対する集中力と学力(子どもに負けない努力)と、子どもに対する愛情が合わさって、質の高い追究のできる学びの集団を育てることができます。
皆さんは本を次々に読んでいますか。大学生の間は、週に数冊、一か月に10冊ぐらいは本を読んでくださいね。新書や文庫がよいと思います。新書は新聞記事と同じで、できるだけ新しいものを読むようにします。また、一つのテーマ、一人の作家を系統的に読み進めたいときは文庫本を探し出して読むようにします。新書の本を、古本や図書館で探して読んでいると、学生は時代に遅れてしまいますので、1、2年以内に書かれたものを買って読む方がよいでしょう。さらに、教師になることを目標にしている皆さんは、ぜひ、教育に関連する本も読んでください。今ちょうど学習指導要領が改定されて、新しい教育観についてわかりやすく書かれた本が次々に出ています。さらに、これらの本の中で紹介されている推薦本を読んでいくと、教育の古典的な本、教師の資質を高める本なども分かり、次に読むべき本が見えます。読書も技術です。
〇「2020年からの教師問題」 石川一郎 ベスト新書
〇「考え方の教室」 斎藤孝 岩波新書
〇「新しい学力」 斎藤孝 岩波新書
・「学びとは何か <探究人>になるためには」 今井むつみ 岩波新書
・「10歳から身に付く、問い、考え、表現する力」 斉藤淳 NHK出版新書
・「書く力 私たちはこうして文章を磨いた」 池上彰・竹内政明 朝日新書
・「本物の思考力」 出口治明 小学館新書
「新任の頃に守ってほしい授業のコツ」をいくつか示しましょう。
①1時間の学習に、3つの主発問(課題)を準備して、学習が10分ぐらいで次に進むようにする。子どもが自ら次への展開をしてくれるのがよいが、そうでない場合、教師が準備しておく。
②黒板に掲示するもの、見せるもの、子どもに使わせるものを、1時間に一つ以上必ず持ち込む。教科書とチョークだけで授業するなんて10年早い。
③授業ごとに、教科別のノートを作り、しっかり教材研究、授業計画を進めてから授業に臨むようにする。教科書の指導書に頼りすぎないように、自分の頭で考える習慣を最初からつける。
④板書計画は、ノートに事前学習して書いておくようにする。
⑤できるだけ多くの意見を引き出し、その意見をできるだけ板書して、子どもと創る学習を目指す。
⑥授業は、時刻通り始めて、チャイムと共に終わるようにする。休み時間に延長をしない。延長する場合は、次の授業時間の最初に少し時間をとる。
⑦子どものノートは、毎時間提出させて、全て目を通し、サインをする。
⑧子どもは、ほめて育てる。先生は子どもに上手に頼って(お願いして)、伸びてもらう。
⑨授業の後、必ず板書の写真を撮る。
⑩言葉使いを丁寧にする。授業中、子どもの名前を、「〇〇さん」で呼ぶ。「〇〇ちゃん」や呼び捨ては、絶対にしない。
■前回の学習の振り返り
▼NZ・・今日は、聞く立場で、発表者の人を良く観察できて、Nさんの発表の仕方は、動きとかもあって、とても聞く立場の人に分かりやすく説明できていてとてもすいこまれました。発表は、ただ話すだけでなく、聞いている人の理解を後押しするようにできれば一番いいなと思いました。自分が教師になった時にもできるようにしたいなと思います。
▼OD・・自由研究の良さはやはり自分の知らないその人の興味のあることや、自分が一生のうちで知らないまま終わることなどを知ることができ、新しい知識や発見がたくさんあるのが、ただただ面白かったです。
▼FN・・9人の発表を終えて、本とかに載っていないことを勉強することは、自分の知らないことを知ることができるし、メモを取ったり、おたずねをしたりして、自分の身になることばかりだなと思いました。
▼TS・・発表者の背景も分かりつつ、紹介された事柄についても詳しくなることができる自由研究学習は、発表者の事柄についてのより深い情報を得ることができ、同時に発表する力を得ることもできる。聞いている側も同じように情報を得ることが出来、話しを聞きながらメモを書き留める力を付ける事ができる。自他ともに成長できる自由研究学習は、やはりいい学習だなと思いました。
▼NO・・自由研究の発表で、ここは何だと思いますか?など、聞いている人達に問いかけていて、よかったと思いました。また、知らなかったことがたくさん聞けて、自分のためにもなるなと思いました。今日、自分で調べてきた物を発表して、やっぱり前に出て話すのは緊張するけれど、自分で調べたものを自分で発表して、自分の勉強にもなり、自由研究の発表はよい事だと思いました。
▼MS・・小学生の子ども達にという思いを持っている人が多く、伝えたいという思いがすごくわかる発表でした。
▼NI・・今日は、環境や資源についての内容がメインでしたが、子ども達に授業で伝えていくために必要な内容だと思いました。自由研究を作る裏側には、「みんなに知ってほしい」という気持ちが出てくることが、研究の熱意につながるし、深みへとつながると思いました。また、熱意を持った研究には、多くのおたずねがあって、お互いを知っていくとても大切な時間だなと感じました。私自身、ダックスフントと、野球・ソフトボールの違いの、両方を作って、一つ目よりも二つ目を作った方がより濃く書けたので、なんでも積み重ねが大切だなと実感しました。
▼HT・・自由研究を通して、新たに情報を得ることができて、教科書では学べない学び方だと思いました。自分の得意なことを、思いきり発表して学び合い、高め合っていくことで、よい雰囲気ができて来て、モチベーションも上がるのではないかと思いました。友達の新たな一面を発見するチャンスだと思いました。
▼MM・・自分が発表して、皆のおたずねで自分が知らないことを聞いて、そのようなこともあるのかと思いました。また、相手の発表を聞いていて、そんなのがあるのかと思い、自分もまた、そのことについて調べたいと思いました。この自主学習は、自分も相手も知らないことを知れて、それを調べたいと思えると思いました。