朝の会、日記、自由研究 2017年4月25日(火)
子どもが自ら進める学習を創る学級に育てるには、1年生から「子どもが話し、先生は聞く」という学習・学校にしていきます。これまでの小学校では、「先生がお話をしている時は、静かに手をお膝に置いて、聞きましょう」として、静かにお話を聞くことが、学習のスタートでした。入学の初日は、周りに保護者もいるので、延々と、懇切丁寧に、いろいろ指示をしている先生が、いい先生ということでした。しかし、そうではないのです。いかに子どもの声や考え、物の見方を引き出すかを、初日から大切にしたいものです。子ども達は、自分たち同年代の話し声は案外よく聞こえるのです。なぜなら、少し競争心を持っているからです。
上智大学の奈須正裕先生は、こぎつね小学校をよく理解してくださっている方です。アクティブラーニングの視点である「主体的・対話的に深い学び」の実現について、こぎつね小学校の実践を引用しながら説明をされています。「大正期より大切にしてきた、独自学習と相互学習の子どもの筋道による往還などが参考になる。そこでは『孤独の味わい』さえ感じながら深く沈潜しての個人追究を徹底させ、『どう考えてもこれでいいと思うんだけど』といった地点にたどり着かせる。今回、対話の一つに、『先哲の考え方を手掛かりに考えること』が挙げられているが、形式的にはむしろ深く静かな個人追究をイメージさせよう。」と、書いてくださっています。(よくわかる中教審「学習指導要領」答申のポイントP35:新教育課程実践研究会編)
きつねTは、1年生の最初の日から、「今日小学校に来て、見つけたことや、思ったことを言いましょう」と、一人ひとり名前を呼びながら、何か一言、話をさせます。自分から話が難しい子どもには、好きな遊び、好きな食べ物、飼っている生き物など、こちらからおたずねをする場合もありますが、殆ど、何か話すことができます。新1年は思っている以上にしっかりしています。一言の発表の中に、「子どもって、そんなところに興味がいっているんだ。」「よく見ているなあ。」などと感心させられながら、子どもの賢さ、すごさ、侮れない能力に、初日から教師が打ちのめされます。今年の1年生もすごいと、教師が身を引き締めます。教育のスタートは、ここにあると考えます。朝の元気調べは、これから毎日、進められることになります。
また、こぎつね小学校では、日記を書かせています。1年生の最初から日記を書かせるのですが、文字がまだ書けない子どもは、絵で描いてもよいことにしています。5月半ばまで、絵で描いてきた子どももかつていました。文字を書ける子どもはどんどん書かせます。持てる能力は使っていくようにします。カタカナも漢字もOKです。先生が読むのですから、どんなに難しい漢字を使っても、1年生ならまだ大丈夫です。日記も、独自学習の場となります。また、書くテーマがないと悩まれる保護者もよくおられますので、月~金は、学校であった活動のことを、保護者に聞き出してもらいながら、それを書かせるようにしてもらいます。土日は、家でのことを書くようにします。毎日書くと、卒業までに約2000日分の日記帳がたまります。4ページずつ6年間書いた子がかつていました。8000ページの小学校自分史ができあがりました。
自由研究は、朝の元気調べの時に、「今日、私は、カエルを持ってきました。後で発表します。」と言う子どもから始まりました。物を持ち込んで、それをモニターに映しながら学級のお友達に発表し、おたずねをしてもらう活動です。あまり詳しく話をすると、おたずねが出ないことを体験すると、あえて不親切に「私はつくしを持ってきました。おたずねしてください。」といい、「どこで取ったのですか。」「誰と取りにいきましたか。」「私は、食べたことがあるのですが、食べますか。」など、対話的な活動を楽しむようになります。物を持ち込む発表から、模造紙に絵を描いたり、調べたことをまとめたりしてきて、発表をする子どもも現れます。自分の身の回りの興味を、聞いてもらい、おたずねをしてもらいたいという、まさにアクティブラーニングの活動が始まります。
新学習指導要領では、アクティブラーニングとは、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」(平成27年中教審「教育課程企画特別部会論点整理」)と定義されています。「学習内容それ自体ではなく子どもたちの『学び方』に着目した概念である。基本的な知識の習得を前提とした上で、具体的な課題の発見・解決を通じて思考力・表現力・判断力を磨くことが目的である。そうすることで、既存の知識や技能が新しい形で体系化され、自己の中で再構築されて定着していくことも期待される。」と斎藤孝先生(明治大学教授)が『新しい学力』(岩波新書2016年11月第1刷)で述べられています。
こぎつね小学校の、朝の元気調べ、日記、自由研究発表は、まさにこのアクティブラーニングの説明そのものを実際に行っている活動だといえます。
なりたい教師 (グループで出し合った考え)
1.学習が分かりやすいということ
・自分で教材を考えて作る。
・自分達の身の回りの物を使って連想して、説明し興味を持ってもらう。
・実際に見たり、体験したりすることで、その内容が記憶に残りやすくなる。
・分からないことは、質問がきちんと聞ける環境を作る。
・子ども目線で、学びを共に創ることができる。
・たくさん発言して、討論し合えるぐらい発言させて授業に引き込む。
〇きつねT・・子どもが自ら学習を進め、分からないことは分からないと言える学習環境を作る先生
2.子どもに寄り添い支えるということ
・一人ひとりをしっかり理解し、認めてあげることが大切。
・しっかり話をし、その子が自分で気づき、自分で踏み出せるようなヒントを与える事ができる。
・心のケア、コミュニケーションを大切にしていく。
・誰に対しても、平等に接することができる。
・子どもが抱えている様々な問題に、本気で悩み、一緒に解決していくことができるようにする。
・自分から声をかける。
〇きつねT・・子どもの追究したいことに、寄り添える先生。
3.保護者や子どもに信頼されるということ
・保護者との連絡をマメにし、子どもの様子をよく見て対応できる。
・良い所と良くない所の両方を見つめて、それをしっかり伝えることができる。
・子どもや保護者の相談に乗ってあげられる先生。
・言葉使いや身なりをきちんとする。
・子どもから見て、面白い、好き、分かりやすい、楽しい先生であること。
・成績を伸ばせる先生。
・一日の様子を、お便りなどを使って、保護者に伝えるようにする。
・話を聞く時間をきちんととる。
〇きつねT・・子どもとの学習を楽しめる先生
学級経営の上手な先生とは
・先生に人望があり、子どもをやる気にさせるのが上手。
・子どもの言い分を聞きながらも、締めるべき部分はしっかりできる先生。
・頑張っている人を素直に応援できるクラス作り。
・しっかりとした目標を示せる先生。
・掲示物の工夫があったり、毎日の連絡(学級通信)が欠かさずあったりすること。
・クラスで孤立している生徒に寄り添い、クラスの輪に入れるようなサポートができること。
・学級全体の子どものことが、よく理解している先生。
〇きつねT・・子どもの自主性を引き出し、見守り、ほめて育てる先生。
<前回の学習のふりかえり>大学こぎつね
MM・・学習の映像を見て、やっぱり子ども達はすごいと思いました。自分で事前に調べて、発表して、知らない用語を使っていたので、先生もより学習をしないといけないと思います。また、このような学習環境を作るためにも、子ども達にどのようにしたら、独自学習するための癖の付け方も学びたいです。
MS・・こぎつね小学校の教育を初めて知って、1年生から友達の意見を求めたり、自分の意見を述べたりしていると、動画にあったような児童自身で調べたりできるのだなと思いました。(きつねT:1年生は、最初ずっと何も書かない子どももいました。毎日、根気よく続けることで、一年かけるとそれぞれの力が伸びてきます。出来る子どもから成長し、それを見て、みんなが成長します。)
TY・・なりたい教師像についてのグループワークで、自分の意見だけじゃなく人の意見も見て、このような考え方もあるんだなと思えました。グループワークは、人の意見も聞けるしすごく勉強になります。子ども主体の授業をもっと詳しく学びたいです。(きつねT:二つ目ですね。自己紹介を代表が話す方法、そして今回の意見を小さな紙に書いて、それを出し合ってみんなで見て、意見をまとめる。)
HT・・私は、ビデオを見る前は、子ども主体、子どもが〜って書きつつ、踏み込み過ぎていたと思いました。ビデオを見てから思ったことは、子ども達だけでも、どんどん立派な授業が成立していて、本当にびっくりしました。事前学習からふりかえりまで、しっかり取り組んでいる姿は、自分も見習わないといけないと思いました。(きつねT:子どもの姿を、すごいとみてくれてありがとう。本当に子どもはすごいのです。賢く育てると、賢い子どもがたくさんいるのです。学びの邪魔をしない先生とは、どうすればいいのでしょうね。)
TS・・やはりなりたい教師という観点では、みな同じような考えを持っているんだなと思った。子ども達と一緒に、成長を見守りながら過ごしていけるような教師になりたいと思うので、最後に見たビデオのような授業が理想の形なのだろうなと思う。「アクティブラーニング」という授業の形を、しっかり学んでいきたいと改めて思った。(きつねT:子どもの成長を見守るには、いい学習環境を作る必要があります。どんな学習環境を作るか、それは教師のセンス、努力、学び続ける力です。)
FN・・みんなの思う教師像が知れてよかったです。グループで意見をまとめるのが難しかったです。ビデオを見て、小学校1年から自分達のノートをとったりしていて、すごいなあと思いました。自分より子どもの方がすごいと思いました。私もあんな授業ができるようにしたいです。(きつねT:1年生の学習は、先生が子ども一人ひとりの考えをどれだけ聞くかということにかかっています。子ども一人ひとりに、どのように発言させて、途中で止めないで聞き続けることができるかです。)
NO・・なりたい教師像を詳しく自分で理解でき、ビデオを見て、子ども主体の学習で子ども自身が自分で学習していてすごいと思った。子ども主体の学習をさせると、自ら調べる気持ちが高まり、子ども達同士のコミュニケーションもとれると思いました。(きつねT:子ども自らが調べる気持ちを高める事が大切ですね。それは、それを発表させる場を必ず確保しなければいけません。相互の学習をどのように成立させることができるかが、教師の腕です。)
NI・・まず、アクティブラーニング(子ども主体)の授業の作っていきかたを本当に学びたい思いが改めて強くなりました。ビデオを見て、1年生がメモを自主的にとっている姿に驚きました。どうやったら、あのようにみんなが当たり前のようにできるのか。ビデオの中のヒントとしては、最初は役割を与え、それをやっていくことで癖付いていくのではないかと思いました。そして、同じ子ども同士で発言し合うからこそ「僕も」「私も」と言いたいことが増えていくのかなと思いました。子ども達だけでできる力を信じ、実践させていけるようになりたいです。(きつねT:しっかりふりかえりを書いています。ビデオを見て、それを分析し、その良さをビデオから引き出そうとしている所がすごいです。良さを学ぶ、良さを認め合うことが、学習のスタートなのです。否定的な見方からは、学びは生まれないのですね。子どもの発言も、全て受け入れそのよさを見付けてあげることが教師の働きです。)
OD・・自分がまず子どもが分かりやすい例や考え方を試行錯誤し、それを実践することで、子どもに学ぶ力を深く身に付けさせ、それ以上に教師も学ぶという、それの繰り返しが重要だと思いました。そして、それをすることで、なぜそうなるのか、次はどうなるのかの意欲を増やし、子ども達が自分達でまとめたり、仕切る力をつけたりする手助けができる先生になりたいと思いました。(きつねT:教師が子ども以上に学ぶという視点はとても大切です。子ども達と学習を進めながら、たくさん辞書、参考書、図鑑を持っています。最近も、幼稚園児と自然観察をしているのですが、園児に負けないように、図鑑をまだ、次々と買っています。)
NZ・・ビデオでの子どもの姿は、中・高・大学生が目指すべき一番の姿勢なんじゃないのかと思いました。こぎつねだより「子どもが自律して、自ら学びを進める学習法を中心とする」という意味が理解できた授業でした。(きつねT:大学生が目指すべき姿なのですよね。それを、小学校から育てて、さらに中学、高校で育ててもらっていくと、大学の講義は、すごいレベルで学生同士が深めていくのでしょう。私は大学の研究者ではありませんが、現場の授業論は、どのようなことを議論されても大丈夫です。