自らの学校時代をふり返る 2017年4月11日(火)
こぎつね短期大学で教職入門を教えることになったきつねTです。一昨年まで、こぎつね小学校の副校長(1年間)をしていましたが、昨年と今年は、こぎつね幼稚園で自然分野担当として、午前中勤務をしています。幼稚園の先生です。自慢できることは、22~59歳まで、子どもと共に学ぶ現場の先生でいたことです。さらに、幼稚園勤務をしている今年の1月〜3月も、こぎつね小学校から急きょ担任を頼まれて、幼稚園から小学校に出向していました。つい最近まで、3年生の担任を三か月間していました。まだ現場の人です。
教職入門の講座は、今年で二回目です。テキストは、昨年から変更して、『「学習力」を育てる秘訣 -学びの基礎・基本―』にしました。昨年のテキストもいいのですが、東京大学の先生方が書かれた本で少し理論的に難しいので、現場で実践的にすぐに使えるものに変更しました。先生になった時に、かなり役に立つものだと思っています。
昨年度は、3名の学生と一緒に、15回の教職入門を学び合いました。机を寄せ合って、少人数の学び合いができました。とても熱心に取り組んでくれていて、思い出深い人たちとなりました。もし、1回で採用試験に受からなくても、小学校で講師登録をしながら現場の力をつけて、教員採用のテストを受けて絶対に先生になりたいと言っていました。今年は10名だと聞いています。小グループになったり、模擬授業などもしたりできるので、楽しみです。
私は、堺市の研究所で4年間、小学校で12年間、奈良こぎつね小学校で22年間、先生をしてきました。子ども主体の学習をどのように進めるかという工夫を、ずっと考えながらの実践でした。38歳の時に赴任した奈良こぎつね小学校には、自律した学習法の伝統がありました。大正時代の主事(校長)である木下竹次は、『学習原論』という本を著し、子どもが自ら進める学習についての方法論は、大正時代からほぼ確立されていました。かつて、木下がこの本を出版したころ、こぎつね小学校には一年間で2万人もの先生が見学に来られたというような記録が残っています。現在、私がこぎつね小学校にいた平成の頃でも、研究発表会を開くと二日で1500人もの先生が来られるような、期待される教育を進めている学校として存在しています。
子ども主体の教育は、大正時代も現在も、永遠の課題です。文部科学省も、その方向を目指しています。教え込み教育、詰め込み教育より、子どもが自ら学ぶ教育の方が良いのは、誰しも思うところです。しかし、「子どもが自ら学ぶ」という学習法はとても難しく、やり切る先生が少ないのです。この、子ども主体の教育には、いくつかのコツがあります。聞けば簡単なようで、実は実行が難しいコツです。それは、「先生は話さず、子どもが話す」「先生が教えないで、子どもが自ら学ぶ」ということです。先生が、「多くを話さない、先生が多くを教えない」ということが、とても難しいのです。授業中、「先生8割・子ども2割」で話しているのを、「先生2割・子ども8割」話すようになると、本当にすごい追究がなされる学級へと育っていきます。子どもの育ちを見守り育てる先生になります。さらに、先生が子ども以上に話さないということには、続きがあります。実は先生は、子ども以上に常に学び続けることができるかということも、関わってきます。子どもがそれぞれ、自分で学び始めると、多岐に渡る資料を持ち込み学び始めます。それを、学習として支えることができるか、拡散しないで学習へと収束させていけるかという力が、教師には必要になります。いい先生は、「話さない、教えない、子ども以上に学び、子どもそれぞれの学びを支える」ということで、自律した学びを進める子どもを育てることになります。一緒に考えていきましょう。
今日は、皆さんの小学校・中学校の頃の教育を振り返りながら、子どもにとって良い学習とはどういう学習かということについて、考えてみましょう。
シラバスについて
<科目名・内容> 教職入門 Introduction to the Teaching Profession
1. 教育現場の実践を知ったり、学生各自の学校や教師に関する思いやイメージをふり返ったりしながら、教職の意義や、子ども理解の方法などについて見識を広める。
2. 子どもが主体的に学ぶ学習の意義を理解し、独自の学習の進め方、相互の学習の中で意見の交流をし、その上で自分のさらなる意見をまとめて分かりやすく伝える学習法の大切さを探究する。
3. 教職に就いた際に、自分の実践を深めていける素地を形成することを目指して進める。
<学修成果>
1.教職とはどんな仕事か、その特殊性と社会的使命を理解し、教職を目指す心構えを述べることができる。
2.現代社会が求めている学習の在り方を知り、多様な子ども理解と、未来に生きる子どもにつけたい資質能力について説明することができる。
3.職業人としての教員について理解し、学生として今何ができるかを考えながら、教育研究を実践していくことができる。