独自学習としての探究 2017年6月19日(月)
初等教育理科の学習も、三分の二が終わりました。これまで、「アクティブラーニングと書く」ということを中心に学習活動を進めてきました。アクティブラーニングを目指した学習を、学校現場で見ることがあるのですが、話し合いや意見表明が中心で、記録に残し学習を積み上げていくことが弱くなっていると思いました。初等理科の講義では、しっかりと書き、そこから始まるアクティブラーニングの構想を個人の中で育んでもらおうと考えました。自然に入り込んでいく行動を起こし、より深く自然の不思議へ迫っていくことを、子ども達と一緒にやってみようという気持ちを高めてもらいたいと思って取り組みを進めてきました。小学生の学習は、自然と対峙し、論理的に構想を立てて自然を理解するのではなくて、できるだけ子どもの生活の中にある自然のリズムや美しさや不思議さを体感して、その中に身を置くことが大切だと考えています。
〇独自学習の考え方
大学の講義では、今の所、独自学習をしてもらうことがあまりできません。本来の学習は、それぞれの独自学習の上に、さらにその学習をいかに深めていくかを、相互学習の中で討議しながら自分自身で方向性を見出し、より深い独自学習を再びすることが大切だと考えています。こぎつね小学校での学習は、独自学習を大切にしました。大学の学習もそのようにすればいいのですが、そこまで時間をとってもらうには、とてもパワーが必要です。そこで、毎回の実験が、独自学習の時間、自分が自然に向かい合う時間であると位置づけて、できるだけ独自の活動を進めてもらっています。まだ、させられている感覚の人もいますが、自然の懐深くに入っていくには、いろいろな試行錯誤が必要です。これから教師になった時、観察実験は、できるだけ子どもに主体的な行動を引き起こして、子ども自身が試行錯誤するように、進めてください。
〇テキスト「親にもかんたんに理解できる 小学校理科 考える力を伸ばす」を読んでください、
テキストをそろそろ読んでもらおうと思います。保護者が子どもと一緒に理科の探究を進めることができるような、保護者のための理科指導書です。東京大学の石浦先生と一緒に書きました。石浦先生は、1章、2章、9章の理科教育全般の問題点やあり方について書き、私は、3章〜8章で、3年生から6年生までの各単元の楽しみ方や、自由研究の進め方などについて書いています。これから皆さんは、独自学習として、3回程に分けて、先ずは、1章から3章を読んでおいてください。
〇理科便り「こぎつねノート」の中の独自学習論
次に、2008.10.27(月)に子ども達に配布した「こぎつねノート」(理科便り)から「独自学習」について引用してみます。「こぎつねノート」は、2008年4月から3年間で116号まで、週に一回配布ペースで書き進めました。その中の独自学習について書いている号の紹介をします。実際の目の前の子ども、保護者をイメージしながら書いたものです。
「独自学習」について
▼独自学習の仕方
独自学習をどのようにしていくとよいのか、悩んでおられる家庭が多いと聞きます。しかし、私はあえて、「こぎつねノート」で「フィールドノート」の取り組みの紹介をしたり、理科室前にノートを展示したりしていません。それは、素晴らしい取り組みをしている人も、それなりの取り組みをしている人も、また、殆ど何もしていない人もいるからです。独自にする取り組みなので、紹介によって一律化されることをおそれているからです。
どのように独自学習をするかというのは、基本的には、子どもが考えることですので、それぞれの方法を、各自が確立して取り組んでいくことが大切です。子どもは基本的には家庭の子どもです。親が思いっきりさせるのも、放任しているのも、それは家庭の方針です。
では、過保護と放任、どちらがよいのかというと、判断が難しいところです。低・中学年では、親と子が一緒にいろいろな活動を楽しんで、上手に子どもに力をつけておられるご家庭も知っています。また、学級の自由研究やフィールドノートの内容は、いつも親に頼りっきりになって、親だけが力をつけて、子どもは我がまま、気ままになっている場合もあります。
あまり、他の人の方法を気にしないで、親子で活動を楽しみ、子どもがそれを工夫してフィールドノートに記録するというのがよいように思います。
家庭学習について育友会などで話し合うと、頑張っている家庭の足を引き、頑張れない家庭は引け目を感じる場合があります。わが子の状況を見つめて、今必要と思われる学習力を付けることが大切です。
▼先生も悩んでいる
私たち教師も、「どのようにして学級の子どもたちに学習力をつけるとよいのか」という、親と同じ悩みを持ちながら日々の授業を進めています。
準備をしすぎたり、書き込みプリントを作ったりすると、子どもは考えないで、その枠組みに乗っかっているだけで、学習時間をすごしています。効率的で、学習がとてもシステム化された学習方法があります。基礎的学力をトレーニングにより力を付ける場合は、このような方法もよいようです。
見た目にきれいな、分かりやすい授業も一緒です。効率的で、見える学力が問われる学習方法です。一見するとすっきりとした素敵な授業に見えるのですが、実は子どもはレールの上を走っているだけの場合なのです。
▼我が校の学習法
我が校は、子ども主体の授業を進めるようにしています。これは、本当に日本中の学校を探しても、まれな姿であるといえます。
それなりに難しい学習法なので、公開研究会を開くと多くの先生方が見に来てくださいます。
では、どのようにして、子どもが自ら学習する力をつける学校かというと、子どもが独自で活動しなければならない仕組みが、随所に隠されているのです。
子ども主体だというので、ただ単に放任にしているのではなくて、「子どもを育てる方法」が、いくつか、そこにはあるのです。
①朝の会で、自分の気になっていることを、短くみんなに言葉と物を持ち込み表現します。毎日15分。
②学習・行事の司会進行をできる限り子どもがすることにより、学習や行事は自分達が取り組むものであるという意識を、常に持たせます。
③学習の始まりと終わりには、めあてを持って、振り返りをします。必ず、ノートに全員が書き、数人が発表します。
④日記やフィールドノートに、自分の今日の学びの整理や、これからの見通し、問題追究、お家実験、調べ学習などができるようにしています。
⑤独自学習の時間を必ず持っています。子どもが自分の追究について、自分の頭で、自分の方法で取り組みを進める時間の確保です。まず、自分で考えてみる時間です。
⑥掃除や奉仕作業を、教師と共に取り組み、みんなの学校をみんなで造るようにしています。科学グループでは、花壇、畑の世話を子どもと共に取り組み、ダイコン、サツマイモ、ナス、ヘチマ、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、トウモロコシなどいろいろな収穫を楽しみます。ポップコーンを作ったり、サツマイモを食べたりして喜びを共有します。臭いギンナンを収穫して、販売体験をして、その収益でチューリップの球根を買います。
▼家庭の学習法は?
母同士がよく言う言葉で、「うちは放任なんですよ」と言いながらも、裏には、わが子が育つシステムを持っている場合、子どもは自律的に育っていくと思います。
ちょっとそのことを具体的に考えてみましょう。我が校の学習法のシステムに対応して書いてみます。
①子どもが興味を持っている話を、ゆっくり聞く時間(15分)を持っているか。
②家庭の仕事、食事や掃除、お出かけなどを、子どもが計画、進行する場面を作っているか。
③習い事、お出かけ、作業など、何かことを進めるとき、親子で目標を立てて取り組み、振り返りの反省を親子でしているか。
④親子ノート、親子日記、家庭の計画手帳、親子カレンダー記録など、負担にならない程度の記録や企画の掲示(例えばお出かけ計画)などがあるか。
⑤子どもが、自分のしたいことに没頭できる時間、テレビやゲームから解き放たれた静かな時間を持てているか。
⑥子どもが責任を持ったり、楽しみにしたりして取り組める、毎日の世話や体験があるか。
いかがでしょうか。我が校の「子どもを育てる学習法」と同じように、「家庭の子育て法」を、持っているでしょうか。塾の送り迎えだけ、習い事をさせるだけ、宿題を早くしなさい、早くお風呂に入りなさい、早く寝なさい、ゲームをやめなさいと言っているだけでは、子どもは育たないのです。
<前回の学習のふりかえり> 大学こぎつね
▼TN・・ドクダミは花粉を採集するのが困難だったので、丸ごと見ました。そしたら、おしべの様子もしっかり観察することができました。花粉が卵のようにたくさんつまっていました。花粉だけでは味気がないので、おしべも書いてみました。中の構造を知ることができてよかったです。
▼KI・・一番観察して「すごい」と思ったのは、タチアオイでした。本当に、The 花粉のような形をしていて、一番観察のしがいがあったと思います。顕微鏡は思うように扱えなくてそんなに好きではありませんが、このような「好き」と思うようなものが見えたら、うれしくなるので、嫌いではありません。
▼OK・・花によって花粉の形、色が様々あって、気づきが多かった。顕微鏡を使うとき、もっと花を見やすくするためにはどうすればよいか。倍率を変えてみたり、ピントを調節してみたり、工夫することができた。見えにくいものがあった時に、今日の授業のように青の画用紙を用意するなど、柔軟な対応が必要あるし、子ども達の理解の妨げにならないように、様々な起こりうることを予想して、対応していく必要があると思った。
▼HT・・花から採集して、花粉を見たのは初めてだったので、よい実験をすることができたと思う。教師の目線で考えてみると、今回の実験では、花の名前、花粉と取り方など理科に関する知識が必要だと感じた。この前先生が言ってはった、子どもに考えさせて調べさせる方法を用いるのがよいと考えられる。
▼NH・・顕微鏡は普段見ることのない世界を覗き見ることができるという点で、子どもの興味を引く事のできるアイテムだと思いました。花粉は、身近にあるものということでよかったと思います。ただ、本来電気で照らしてみる光学顕微鏡を、電気なしでみるのは、暗くて分かりにくかったし、面白みも減っていました。本当は、スライドグラスで見ると、もっと見られただろうと思いました。(きつねT:そうなのです。予想外がいくつかあり、ちょっと、見にくいと思いました。これまで、小学校で使っている時は、蛍光灯の照明装置が各机にあって、その照明のもと、直接の反射光で花粉の観察をしていました。その照明装置が、各班になかったこと、そして、窓から遠い机が多くて、さらに暗かったことがあります。今回は、「スライドグラスを使わない顕微鏡観察」として、簡易法を体験してほしかったのですが、ライトの不備で迷惑をかけました。)
▼HR・・久しぶりに顕微鏡を見た。テストなどでよく出題されるため、使い方は覚えていても、実際に使ってみなければわからないことが多いということが、改めて感じた。簡易顕微鏡では見えにくいものでも、顕微鏡の倍率を高くすると、花粉による違いがはっきり分かった。また、自分で花を採集して、ピンセットで花粉をとる過程も楽しみながらできた。小学生でも、自分で実験をやり遂げることができるため、達成感が感じられるのではないかと思った。
▼KY・・「こぎつね理科」でもあったように、顕微鏡を実際に使うことによる気づきがあると思った。肉眼では見えない世界には、たくさんの不思議があり、子ども達も楽しめると思った。(きつねT:朝の理科室に先生もついて、朝7時40分〜8時10分の30分間、一か月ほど毎日、顕微鏡を使えるようにしてあげたことがありました。興味のある子どもが集まり、自分で見たいものを持ち込み、不思議の世界を広げました。写真を撮ってあげたりもしました。理科好きが、増えました。)