顕微鏡を使う 2017612日(月)

 

 顕微鏡を小学校で使う機会はとても少なく、子どもが使い方を習得するのはかなり難しいと思われます。教科書では、でんぷんの形、プランクトン観察、花粉の観察の3か所ぐらいしかありません。メダカの餌としてのプランクトンの観察は、みんなで観察するようになっている教科書が多いのですが、でんぷんの観察や、花粉の観察は、「やってみよう」というような、時間があれば取り組んでみる扱いになっています。

 

 顕微鏡観察には、困難点がいくつもあります。まず器具の扱い方が難しく、スライドガラスの上に載せるとても薄いカバーガラスを割ってしまうこともよくあります。プレパラート(スライドガラス上に見たいものを載せてカバーガラスをかけたもの)を作るまでにも、多くの困難があります。顕微鏡を使う時も、接眼レンズと対物レンズの選択、光の当て方、焦点の合わせ方と、ハードルがいくつもあります。さらに、顕微鏡が汚れていたり、壊れていたりして、正式な扱いをしていても見えない場合もあります。また、指導者は子ども達が見ている対象が外からではわからないので、正確に見ることが出来ていることを確かめることが難しいのです。時には、「子どもが顕微鏡を運んでいる時、ケースから落として壊れました。」という事故がありました。一台8万円~15万円です。壊れたと聞かされると、理科主任は青ざめてしまいます。

 このように、いくつもの困難点がある顕微鏡観察ですが、小学校の理科学習では1、2回使う程度です。しかも、テストでは、顕微鏡の扱い方がよく出されていて困惑してしまいます。学習指導要領には、どの学年でも毎年使うこと、扱いが簡単な顕微鏡であることと書いてほしいのですが、現実的にはそうなっていません。ノーベル賞を最近取られた大隅先生は、顕微鏡観察の積み上げから受賞に至っておられます。ぜひ、この機会に、顕微鏡の普及と活用を進めたいと思います。

 

 私がこれまでの経験から考えると、顕微鏡観察は、①花粉の観察、②でんぷんの観察、③プランクトンの観察と、少なくとも理科の3つの単元で使ってほしいと思います。さらに、双眼実体鏡(低倍率の顕微鏡)は、①昆虫の観察、②花のつくりの観察、③メダカの卵の観察、④結晶(食塩やミョウバンなど)の観察、⑤岩石の中の鉱物の観察で、使ってほしいものです。

 

 双眼実体鏡は、見たいものをシャーレに入れて見るだけなので、焦点の合わせ方を習得すれば簡単に使えるようになります。3年生から使うようにして、学年が上がるに従っても、いろいろな単元で使えるようにしたいと思います。顕微鏡は、今日皆さんとする、花粉観察から使い始めて、でんぷん観察、プランクトン観察へと進みたいものです。動かないものの観察から、動き回るものの観察へと進まないと、最初の観察がプランクトンというのは、とっても難しいのです。

 

<前回の学習のふりかえり> 大学こぎつね

YM・・気付いたこと、①肋骨など、骨の数は決まっていてみんな同じ。②左右対称にできている。③曲がる部分は、細かい骨でできている。④どの骨も真っすぐ。⑤皮のぎりぎりについている骨と、内部についている骨がある。不思議に思うこと、①腕や足など、曲げたときに、関節の骨はどのような動きをしているのか。②体格が違う人は、骨の大きさも違うのか。③男女の違いは、どれくらいあるのか。学習のふりかえり、骨の絵を実物大で描くのは初めてでしたが、気づくことがたくさんありました。そして、気づくことと同じぐらい不思議に思うことが出てきました。どんどん学びを深めることができて、興味がわいてきました。「なんでもやってみる」ということが、子どもの好奇心のためにも必要だと分かりました。(きつねT:この骨の学習から、次は、筋肉と内臓の学習もします。同じように、実物大の学習ができそうでしょ。さらに、呼吸と、唾液による消化については、実験として取り組めますね。)

ON・・今回の実践は、身体のラインを模造紙に描くため、五体に欠損があったり、太っているなど、体型にコンプレックスがあったりするような児童生徒がいる場合には、行わない方がよい(と、先生が言っていた。)骨については、学習したことがあったが、全身の骨を実際に描いたことは無かったので面白かった。実際、自分自身の身体でとった形に、骨を描きいれることで、骨の長さなどが分かって記憶に残りやすいと思った。(きつねT:子どもの心を痛めるようなことは、絶対にしてはいけません。気をつけましょう。)

NN・・全身の骨を描いてみると、小さな骨や大きな骨が多くあり、しかも複雑に組み込まれていて驚きました。膝のじん帯を切った時に手術をして、お医者さんにレントゲンの写真を見せてもらったことを思い出しました。けがをするということも、見えない体内のことを考えるきっかけになります。そうしなくても、今日のように自分の手でレントゲン写真を描いてみると、仕組みや長さや太さなど、あらゆることに気付くのでよいです。(きつねT:私も、知り合いのお医者さんから自分のレントゲンの写真を借りて持っていたので、それを授業で使ったことがあります。)

KY・・自分の手をふち取ったことはありましたが、体をふち取って、さらに骨まで描くのは初めてでした。友達とふち取り合いをしている時は、皆、楽しそうで、いったん骨を描き始めると、皆、真剣で面白いなあと思いました。気づいたこと、不思議に思うことを書きましたが、知らないことが多くて、自分のことなのになあと驚かされました。(きつねT:楽しくしてくれたのが、何よりです。子ども達にも、楽しい学習、学びの深い学習をしてあげてくださいね。)

IS・・今まで、肋骨の存在や、写真や図で骨のつくりを見ることはあってもさっと見ているだけだったため、曲線になっている骨というのが、改めて意識され、気づきにつなげることができました。また、骨盤や肋骨の体に占める割合が大きい事、背骨の太さなどから、人間の体で重要な部分であることが分かりました。(きつねT:魚の骨と、人間の骨を比べたことがあります。上手に身を取って食べた魚の骨を子ども達に持って来てもらって、比較しました。また、博物館で撮影したいろいろな動物の骨の写真と、人の骨の図と比べたこともあります。成人男子と女子の骨格標本も博物館にあるので、写真で比較して違いを導き出したこともあります。この骨を描く学習から、いろいろ発展できますね。)

FH・・はじめはわざわざ自分の体の輪郭を写し取ることに意味があるのだろうかと、思っていましたが、自分の見慣れた体の形に、自分の体を触りながら、骨を描き込んでいくことで、思いのほか骨について実感を持つことができました。この理科の授業を通して、毎回いかに、体験しながら学ぶことが大切かを実感します。(きつねT:毎回の準備が、とっても大変です。私の研究教科は理科ですので、こぎつね小学校での公開学習は、準備がとても大変でした。大学の講義も同じです。算数や国語の先生はいいなあと思うこともありますが、その大変な準備の先には、子ども達が体験を通して学ぶアクティブラーニングがありました。担任をしている時、理科以外でもアクティブラーニングで学びを進める習慣があり、算数も社会も国語も活動的でした。)

SU・・人生で初めて全身の骨を描いてみたのですが、思っていたよりたくさんの気づきがありました。構造は、ある程度分かっていたけれども、いざ描いてみると骨で覆われている所と、そうでない所があるのが、面白いと思いました。(きつねT:昆虫には、脊椎動物のような骨がなく、外骨格になっています。昆虫は、脱皮をして大きくなります。)

OM・・改めて書いてみると、骨の形や大きさは様々なのだなと思った。こうして実際描いてみることで、細かいところまで注意して描けて良いと思った。きっと子ども達も興味を持って、取り組むのだろうと感じた。(きつねT:子どもと進める学習は、生活とつなぐこと、自分とつなぐことが大切です。いろいろな学習を、自分のこと、自分の問題として、始められるといいですね。)

IU・・骨の仕組みを見て、複雑だが、無駄のないように上手にできているのだなと感じた。腕と足に、骨が2本あるのはなぜですか?何か利点があるのですか?(きつねT:そうなのですよ。意識していろいろな骨格標本を見ると、全ての動物がそうなっていて、恐竜の足もひざから下は2本の骨でてきています。魚のひれも、そうかなあ。ひれから、足に進化するときに獲得した形態なのでしょうか。)