子どもが進める学習 2017年10月10日(火)
1.子どもが進める学習の係活動
子どもが学習を進めるには、1年生の4月から、朝の会を日直が進めることから始めます。日直は、朝の会の時黒板の前の席に座り、朝の挨拶や、各係からの連絡の司会をし、元気調べの活動では名前を順番に呼び、さらに「今日の一日の予定とめあて」を言います。最初は、先生の力を借りながら進めますが、次第に自分たちで助け合いながら進めることが出来るようになります。日直は、出席番号順に男女2人が進めます。日直は一日中、クラスのみんなのために働きます。朝の窓開け、黒板回りの整頓、先生との相談、朝の会の進行、特別教室への移動のリード、昼食後の簡単な掃除、明日の時間割や連絡書き、帰りの会の進行、机並べと戸締りです。すべての学級管理の仕事を、2人の日直が進めます。自分たちの学級は自分たちで管理運営する自覚がついてきます。先生は、見守る側に立つことができます。
学習の時間は、国語、算数、生活など学習係が、黒板の前の席に座り、先生と一緒に学習を進めます。学習が始まるまでに、黒板の書けるところ、例えば日付、学習のテーマなどは書いていきます。自分たちで学習を始める準備をします。最初は先生のお手伝いですが、次第に、先生が進めるところまで出来るようになります。学習係は、各学期の最初に決めます。自分のしたい係を話し合いながら、譲り合いながら、決めていきます。週に何時間もある国語や算数は、人数を多くします。専科の先生の学習係は、専科の先生と常に連絡を取りながら、持ち物や宿題などを、前日に必ず伝えるようにします。非常勤の先生も多いので、先生が来られている日に連絡を取ることがとても重要になります。
2.子どもが進める学習の始め方
理科専科教諭をしている時の理科係の動きを紹介します。理科学習は常に理科室で進めました。係の子どもは、休み時間には早々に来て、準備をしたり、板書を書いたり、先生と相談をしたりします。実験のある日は、朝の始業前に一緒に準備をすることもあります。クラスの子ども達は、学習の始まる時刻に遅れないように日直が並べて、理科室へ移動してきます。
クラスの子ども達が理科室に到着したときには、すでに係の子ども達によって、実験の準備や、板書の準備ができています。日時と、今日の「学習テーマ」が書かれていて、席につくとすぐに、「今日の学習のめあて」をノートに書き始めます。そして、学習が始まる時刻が来ると、係が声をかけて先生と挨拶をして、学習が始まります。挨拶は、始まりは「よろしくお願いします」、終わりは「ありがとうございました」と言うようにしています。先生も子どもも、お互いに、礼の心を大切にします。学級の学習では、毎時間の挨拶はしませんが、始まりと終わりの学習時刻をきちんと守ることを大切にしています。それは、学習係の仕事です。こぎつね小学校では、チャイムがありませんでしたので、時計を見ながら時刻に合わせて、学習を始めて、時刻がきたら終わるようにしています。
3.「学習のテーマ」と「学習のめあて」の関係
学習の最初は、「学習テーマ」にそって、今日の「学習のめあて」をそれぞれがノートに書きます。「学習のテーマ」は、教科書の小単元名であったり、前回のふりかえりで決めた課題であったり、主に先生が与えていきます。「学習のめあて」は、その学習のテーマに連動して、今日自分が持ち込んだ資料や、今日実験してみたい事や、「独自学習」をしてきたことを、書き進めます。テーマとうまく関連していない場合もありますが、自分の学習のめあてを持って学習に臨み、自分のめあてを主体的に実現できるように、「相互学習」の話し合いに提案していきます。
「学習のテーマ」は、案外、大きな課題でよいように思います。なぜならば、それぞれの子ども達が持つ「学習のめあて」が多様だからです。テーマは、広く構えて、めあての話し合いで、今日の活動を絞り込んでいくというのが、子ども主体の学習では大切だと考えます。子どもの持ち込みによって、フレキシブルに変化しながら対応できる学習時間の創造です。子どもと先生が、共に協働して創る学習です。
この「学習のテーマ」と「学習のめあて」という言葉は、私が上記のように使い分けているだけで、この使い方が、教育界の中で一般的かと言えばそうではありません。こぎつね小学校のきつね学級の、ノートを書くときのルールです。私自身、「学習のテーマ」と「学習のめあて」は、こぎつね小学校に来た頃は使い分けていませんでした。子ども主体の学習を進めていく上で、先生が設定するテーマと、子どもが書くめあてをわける方が、子どもの学習への思いが表現しやすいことが分かってきて、次第に「テーマ」と「めあて」を使い分けるようになりました。
皆さんも、先生になったとき、子どもに「学習のめあて」を、それぞれに書かせるようになればよいなと思います。こぎつね小学校では、次のような生活科の学習の始め方をしていました。
◇ ◆ ◇
今日はさんぽの日です。きつね組の子ども達は朝からわくわくしています。手に手に飼育ケースや図鑑を持って、いつでも出発できるように用意をしています。
きつね先生が黒板に「秋のさんぽに行こう」と、学習のテーマを書きました。きつね組の子ども達は、きのうから今日はお出かけするのは知っていて、「やったー」と喜びの声を上げました。こぎつね学級の子ども達は、さんぽが大好きです。
生活科の学習係のこん吉君が、「今日の学習のめあては何ですか。発表してください。」と、いつもよりも元気よく、大きな声で言いました。きつね組のみんなは、これもまた元気よく、いっせいに手を挙げました。こん吉君が、ぽん太君を指名しました。「僕は、どんぐりを一杯ひろって、算数の計算に使います。」と言いました。次はちゅうすけ君です。「僕は、食べられるどんぐりを拾って、どんぐりクッキーを作りたいです。」と言いました。りす子さんは、「私は、きれいな落ち葉でドレスを作ろうと思います。」と言いました。みんなそれぞれ自分のめあてをノートに書きました。
さっそく、出発です。まほろば村のはずれには、線路があります。汽車は一日に二回しか走りませんが、踏み切りはきちんとあります。汽車が近づくと、カンカンカンと警笛(けいてき)が鳴ります。今日はその踏切を越えて、どんぐり山まで行きます。
踏み切りの向こうには大きな池があります。その池には、コイが住んでいて、カイツブリが遠くの方で泳いでいました。きつね組の子ども達は、コイに「こんにちは。今日はいい天気だね。」と声をかけました。コイは、「どこへ行くのかな。」と、たずねました。「どんぐり山まで、おさんぽだよ。」と、学習係のこん吉君が答えました。「トウカエデが、今朝の冷え込みで急に赤く色付いたと、さっき、カイツブリが言っていたよ。」と、コイが教えてくれました。「ありがとう。」と、みんなでお礼を言って、どんぐり山の坂道を登り始めました。・・
4.理科の「学習のふりかえり」
学習のふりかえりは、大学の学習でも毎回書いています。学習とは、その時間に学んだことを整理し、学習のめあてに対応して考察をすることです。理科学習では、「課題、予想、実験方法、結果、考察」という学習過程をたどりながら学習を進めます。同じように、どの学習でも、「めあて、学習方法、結果、ふりかえり」という学習過程をたどりながら、学習を進めます。次に小学校4年生の5月の理科学習「植物の発芽と成長」の学習のふりかえりを見てみましょう。
■TN 「双葉は何のためにあるのか。」私はこう思います。双葉は栄養のタンクだと思います。でも、みんなの話を聞いてみると、双葉は本葉や根をのばすためのエネルギーだと分かりました。そして、私が知りたかった双葉の変化もしっかりわかりました。少しは成長していましたが、まわりが黄色く、虫にもすこし食べられていたし、かれてもいました。わかってよかったです。5週目はどのように変化しているか知りたいです。
■NN 双葉は虫に食べられやすいと思います。なぜかというと多分タンクがあって栄養がたくさんあるからだと思います。なのでホウセンカも枯れてきたんだと思います。それにカボチャの双葉の回りはだんだん黄色くなっていました。
■AD 私は、双葉が枯れたら根っこから茎を通って葉に栄養をあげているんだと思います。双葉は多分、やわらかい本葉を支えるためと、栄養を与えるためにあるんだと思います。栄養を全部出し切ってしまうと元気がなくなるからだと思います。
■NN 僕は、双葉はそんなにえいようタンクとは思いません。なぜかというと、植物は光合成でえいようを作れるからです。でももしかしたら、時々は双葉からえいようを一度にたくさんもらっているのだと思います。双葉はえいようたっぷりなので、食べられるのもあるけど、えいようをあげるのでかれていくのだと思います。僕がすごいと思った双葉は、カボチャです。なぜかというと、たとえたくさん本葉にえいよう分をあげても、まだかれていなく外がわが黄色くなっているだけです。これはきっと、他の双葉より大きいからです。なので本葉も大きい。
■HJ 双葉は最初とっても必要だけど、本葉ができると「あとはまかせた」と言って、双葉の役目を終えるのだと思います。つまり、最初は、双葉が大切で、最後には本葉が大切だから、双葉がかれたり、黄色がかったりするのだと思います。双葉は栄養タンクなのになぜかれるのかが不思議です。
■OK 今までの観察から、順番がよく分かりました。まず、植えてから双葉が出てきて、双葉が少し枯れて、本葉が大きくなります。そして、双葉の役目は、本葉を大きく成長するように、しばらくの間、よう分をたくわえておく所のかわりになっている事が分かりました。あと、本には、本葉がきずつくのをふせぐためでもあるそうです。そして、双葉がなくなると、光と水と二酸化炭素で光合成をしたり、根からの栄養やよう分をつかったりして成長しています。
■KH 僕は先生がホワイトボードに書いてくださったABCDの中で僕の参考書にはたしかにみんなが言ったとおりに双葉にはよう分が入っているけれど、双葉の間に本葉があって、それは何故かというと、芽が出るときに本葉をきずつけてはだめなので双葉は土から本葉を守る役目もしています。本葉の役目は日光を受けてよう分を作ったり、水を外に出したり、呼吸をしたりもします。
■YJ マリーゴールドはいっさい食べられていない。カボチャの双葉は食べられ、本葉に虫がちょっとついていた。ダイズは、本葉は食べられ、ちょっと黄色くなり、もうとれそう。来週くらいには、とれているのだと思います。植物は水でほとんど育つ。ダイズの双葉はもう落ちそう。黄色くなった。双葉はたぶんやわらかくておいしいのだと思います。だから、ナメクジなどに食べられるのだと思います。ダイズの葉にオレンジっぽい点があった。ちょっと土が緑っぽくなっていた。ヘチマはまだ出ていない。観察してわかったことは、双葉は役目をおえると黄色になることがわかった。そして、ゆっくり下におりて落ちるという順番になるということがはっきりわかりました。ダイズの双葉ははやいうちにナメクジにたべられて小さいままきたなくなった。全体的に気づいた事は、根が出たものは全部茎が太くなっていた。
■HT もし、子葉が光合成をするのなら、本葉が出てきても枯れることはないだろう。つまりそれは、子葉が本葉のためのエネルギータンクであるということの証明になるのだ。ヒマワリは、一番子葉が枯れるのが早い植物だ。でも、カボチャやアサガオは、まだまだ元気で、簡単に枯れるわけではなさそうだ。マリーゴールドとダイズは、ナメクジにばっくり食われてしまい、今は、半死半生をさまよっている。かわいそうな話だ。僕はかぼちゃがすきだ。
■NT 今日と前回では、双葉はかたかったのですが、今日、じっさいにさわってみると、やわらかくて、かれた葉みたいです。ヒマワリの双葉は、かんぜんにしおれてかれていました。少しひびわれしてしろっぽいかんじです。それから少しだけあながあいています。黒色のつぶつぶもできています。前回より、少しかわって少し黒っぽくなってしおれました。おもちゃかぼちゃの双葉は、まだ、しおれていなくて、少しやわらかくなっています。少しだけ、白いぎざぎざが入っています。くきのところもだいぶ太くなりました。
子ども達は、学習を総括し、自分の考えをしっかり書き込んでいます。実際の観察、友達の意見、参考書の記述を基に、ふりかえりを書いています。普通、理科学習では、知識を得ることを目的としていると考えがちですが、実は自然に対する見方、考え方、学び方を学ぶ時間なのです。子ども達のふりかえりから、そのことが良く解ると思います。学習のふりかえりには、その日の学習で成長した学びの様子がすべて書き込まれるようにします。
皆さんのこぎつね大学での「学習のふりかえり」も、子どもの事実から、話し合いから、活動から、資料から、今日の自分の学び(成長)を関連させて書くようにしましょう。豊かな学びは、自分で育てるのですよ。
<前回の学習のふりかえり> こぎつね大学学生
AI 初めて「朝の元気調べ」を知りました。元気調べをしてみて、短く3文にまとめるのは、大変でした。小学生でもできているので、できるだろうと思いましたが、いざ話すと難しかったです。これをすることで、伝える力がつくということが良く解りました。
UK それぞれの話題でも、その子によって内容が全く違っていて、それぞれに魅力がありました。そして、メモをとるのもすごかったです。その子が言った中で大切なことを即座に理解して書き取る力を長い時間をかけて習得したんだなと思いました。
UT 今日の授業は、とても興味深かった。朝の元気調べでは、自分が感じたこととかをみんなの前で話すということがこれまでなかったので、とてもいい調べだなと思う。子ども一人ひとりの健康状態や子どもの成長過程が、一日忙しくても、その15分で全員と話せたように感じるのかなと思った。
OT 先生は、子どもの体調や状況を分かることができるし、子ども達も他のお友達の話を聞いて、考えることができたり、観察力が育ったり、それを自分の言葉で伝えようとすることができるので、とても大切なことだと思いました。
OK この朝の元気調べをすることで、児童全員の声が聞ける上に、その声で元気かどうかも分かり、一日一日の発見をクラスの友達に伝えることができるので、毎日学校へ通う事の大切さがわかりました。
OZ 子どもの疑問点、気付いたこと、考えたことが聞けて重要なことが分かるだけでなく、それらを聞いた後、私はどのように子ども達に声をかけられるか、気遣ってあげられるかを、改めて考えました。
KY 今日初めて、元気調べをしました。話す方も聞いてメモをする方も、授業で見たビデオの子ども達よりは、うまくできなかったです。これからしっかり、ビデオの子ども達に負けないように頑張りたいと思いました。聞いていてメモをするのは、難しいと思いました。どこを抜き出すか、どこが一番大切なことなのか考え、簡潔に書き出せる力が必要だなと思いました。この、授業では、教師としての必要な力が、身に付くなと感じました。
KD 一週間、2行日記をして、いつも普通に過ごしていたけれど、いつも歩いている道とか、たくさんの事を観察していたら、少し変化があったりしました。これからも続けようと思います。
SI 普段から私は周り(自然)をあまり見ないし、気にすることを日記に書く事もなかったです。それを簡潔に短文でまとめて話すのは、難しかったです。でも3年生の子ども達はそれができていた。簡単そうで難しい事だと思う。先生になったら、できるようにならないといけないので、これからメモの癖をつけていこうと思う。
KN 人の意見を端的にまとめるという力は、今後も必要になってくるものだし、私たちのように、先生を目指している人たちには大切なことだと思います。朝の元気調べの大切さについて、よく理解することができたので、とても意味のある授業だったと思いました。自分が先生になった時にも、行いたいです。
SS こぎつね生活で書いてあったように、他の学校や先生がしようとすると、うまくいかない原因が、話している最中に○付けや他の事をしているからとありました。自分が小学生の時の先生は、○付けをしていたなと思い出しました。子ども達は、先生にも話していることを忘れずに、聞いてコメントをしてあげることは大事だと思いました。
SY 私は今日の学習でとても学ぶことができました。まず、朝の元気調べです。その中でも、「短く伝える力」です。今の私は、「〜で、〜が、〜で・・」と、一文がすごく長くなってしまいます。でも生徒たちは短く伝えようと発表していました。とても感心しました。後、つまっている生徒も、先生の力を借りずに、お友達の力も借りずに、最後まで自分で言い切る姿が良いなあと思いました。前回でも学習したように、「自分で何かをする」ということが、今後の学習や生活にとてもよい意味で影響するので、手助けをしないで見守る事が大事だと思いました。
TZ 宿題に出されていた2行日記だが、こんなんすぐに書けるわと、最初は思っていたが、案外難しく、一日の中で自然についてしっかり考えるようになった。これが、こぎつね生活に書かれていた、「学習即生活、生活即学習」なのではないかと思う。
TZ たったの一言だけど、その一言があるかないかで、全然違うと思った。初めて見た私でも、発表の仕方で、その子はどんな子かなっていうのが少しわかった。
II 生活は生活、学習は学習と、きっぱり別れてスイッチをきりかえるような学習をしていた。けれど、生活の中に学習、学ぶもの、学べるものがたくさんある。それに気づいていなかったことに、驚きと恥ずかしさがあった。
NI 私の学校では、朝の読書や学習などがあったのですが、元気調べはなく、私は人前にたつのがあまり得意ではないので、昔から人前に立っていると大きくなってからとても役に立つと思う。
NM 今日の生活の授業の中で、何人かが朝の元気調べを発表しただけでも、色々な出来事が、それぞれにあったり、感じたことがあったりして面白かったです。何気なく歩いているより、もっといろんなことを見ようとすることって、大切だなと思いました。
NH 今回、みんなの発表のように、「自然と友達」という、少しでもテーマがあると、みんながどれだけ見る視点、考えが違うかがはっきりとわかって、面白かったです。
HT 皆がクラスのことを知るよい機会だなと思いました。元気調べのおかげで、クラスの仲の良さも深まるんじゃないかと思いました。
HD 毎日朝の元気調べがあるということをみんなが理解しているので、日常をただ過ごすだけでなく、気になった事は本で調べて人に伝えるという習慣がつくのでよいなと思いました。
HW 大学に入った私でも難しいことを毎日しているということがすごいと思いました。
FT 子どもって、教え方によってこんなにも成長するんだなと思います。
HH 小学校だけでなく、中学や高校でもこの朝の元気調べの活動をしたらいいのになと思いました。私も、昔はあんなに、花や空を見るのが好きだったのに、最近は携帯ばかりに目が行き、宿題やバイトなどに追われて、余裕がないなと考えました。