朝の会はすべての学習の基盤 2017年10月3日(火)
1.朝の元気調べ
こぎつね小学校では、朝の会を毎日しています。朝の会は、単なる出席確認だけでなく、今日の学習の一番大切な時間であると考えます。朝の会の中の「朝の元気調べ」の活動は、一人一言、全員が話す取り組みです。朝、登校してくる子ども達は、「先生、先生、あのね。・・」と、いろいろな情報を持ち込んでくれます。一人ひとり聞いてあげるとよいのですが、35人全員の一言を、先生の周りで子どもが自由に話すことを聞いてあげるのは不可能です。そこで、朝の会の元気調べで、日直が「〇〇さん」と名前を呼び、「はい私は元気です。きのう、私の家のミカンの木に、アゲハチョウが卵を産んでいるところを見ました。」「はい私は元気です。日曜日、家族で生駒山に登りました。」・・など、一人ひとりの生活の中で見つけたこと、経験したこと、思ったことを発表します。毎日続けていると、「はい私は元気です。今日の国語のごんぎつねに出ているヒガンバナを持ってきました。後で紹介します。」「はい私は元気です。今日の理科の空気鉄砲の実験で、お父さんが竹で空気鉄砲を作ってくれたので、あとで紹介します。」「はい私は元気です。来週学級の奈良さんぽで行く東大寺へ、昨日お母さんと行きました。詳しく調べたいことを見つけてきました。しごとの時間(総合的な学習)に発表します。」などと、今日の学習が朝の時間に始まります。私たちは、「学習即生活、生活即学習」という言葉を大切にしています。学習は生活であり、生活そのものが学習であるということです。生活場を学習にしていく窓口として、「朝の元気調べ」が存在していると考えます。生活を学習の中に取り込む、生活の学習化の時間です。
朝の会は、8時25分~30分の5分間と、その後15分間の清掃が終わってからの、8時50分~9時10分の20分間です。朝の会では、①なかよし委員会(掃除の時間中に、各クラス代表が集まり、話し合いがもたれている。1年だけは6年生の1年係が出席している)からの連絡、②学級の係からの連絡、③元気調べを、行います。どうしても朝の時間に行事が入って「朝の元気調べ」ができない場合、国語や算数の時間から少しもらってでも、必ず行うようにします。言いたいことを持ってきているので、話さないとモヤモヤしたまま過ごすことになるからです。そんな、大切な「朝の元気調べ」の時間なのです。
2.朝の元気調べの意義
このように毎日取り組んでいる朝の元気調べは、特に低学年では、子どもの追究力、意欲、活動を育てます。一人ひとりの生活の様子、健康状態も、話し方、話す内容で分かります。この子は体調がよくないな、この子の家庭は今大変そうだな、最近生き生き学校に来ているな、学習のリズムが崩れているな、など、子どものいろいろな状況を理解できるのが、朝の一言です。
また、こぎつね小学校は、学習も生活も、子ども達が運営する学校です。この朝の元気調べも子どもが進めます。先生は子どもの一言をメモしながら話を聞きます。朝の元気調べの一言を聞きながら、今日の学習の進め方を、子どもの持ち込みや意欲を参考に考えたりもします。すべての学習が、ここから始まるようになると、学級はとても自立した状況になっています。
「朝の元気調べ」の活動を、あちこちの学校指導に行って紹介するのですが、なかなかうまく運営できない先生がいます。それは、子ども達が話している時、宿題の〇付けをしていたり、日記を読んでいたり、その場にいなかったりというようことがある場合です。基本的に、子どもは大好きな先生に一言伝えたいのです。一生懸命聞いてあげるのが、先生の朝の元気調べの時の仕事です。
3.朝の元気調べを記録する
朝の元気調べでは、1年生からお友達の一言をメモするようにさせます。最初は殆ど書けない子どもも、次第にみんなの一言が記録できるようになります。書く力は、空気中に飛んでいる言葉をメモするところから身に付けます。板書を写すのではなくて、話し言葉を聞き取り、それを文字にする能力を付けるのです。メモを書く力は、聞くことと考えることを同時に行います。聞いたことを理解し短く要点を書きとっていく力です。
多くの生徒や学生は、メモをとる力を付けていません。学びは、自分で聞いたことや、考えたことをメモすることが実は大切なのです。板書を写す力は、本を見れば分かることです。自分以外の多くの人の考えを聞き取るところから、学習は始まると思います。
1年生から聞き取るノート作りをしていくと、奈良さんぽで、お寺やお店の方がお話してくださったことも、書きとれるように育ちます。生活から学ぶ力の、とても大切な能力です。毎日、朝の元気調べをメモすると、1年生の後半になると、ほぼ全員が書きとれるようになります。小学校の先生はよく「お友達の意見を聞くときは、顔をそちらに向けてしっかり聞きましょう」といいますが、私は「しっかり書きとりながら聞きましょう」と指導します。どちらが良いかは、一年後に結果として現れます。聞いているふりをして育った子どもと、懸命に書きとってきた子どもの聞く力は、歴然と違っています。聞きながら、メモをしながら、自分の意見を言おうと左手を挙げている子どもがたくさん育ってきます。
国語や算数などの学習ノートにも、お友達の意見を書くようになってきます。板書よりも詳しいノートが出来上がります。学びの多い、素敵な学習ノートが成長しはじめます。
4.元気調べを書きとると
私の学級は、40人いました。毎日元気調べをすると、年間200日の登校日だと8000の内容が持ち込まれ子どものメモの中に書き留められています。書けば記憶になります。特に、言葉を獲得していくときの子どもの記憶力はすばらしく、いつ、だれが、何を言っていたと、覚えていくようです。言葉や世界が、ぐんぐん広がる時間となります。また、日々の授業も、朝の会で持ち込まれた情報と関連して、とても立体的な学習へとなっていきます。特に、生活科や総合的な学習などは、この朝の元気調べがすべてだといえます。
日記の活動も、こぎつね小学校では取り組んでいます。毎日、日記を子ども達は書いてきて、教師は返事を書きます。その日記も、日頃メモがしっかり書けている子どもは、話すように書けるようになります。話すことと書きとることがこのように関連してくると、書く活動は、話すように書けるようになってきます。
<前回の学習のふりかえり>
OD 今まで、「教師になりたい」と思ってはいた。「子どもにとってよい学習とは」と深く考えたことがなかったから、よい機会だとすごく思った。自分では、5つしかできなかったけど、他のいろんな人の答えを出し合うことで、何個もできたのがすごいと思った。
OK 学習のテーマにそって、当てられて発表する。この感覚が小学校を思い出して、とても懐かしく感じました。一人ひとりの思ったこと、考えたこと、意見を発表することにより、人それぞれの考え方があるので、「子どもにとってよい学習とは何だろうか」のテーマだけでも自分が考えもしなかった意見が多く、この授業だけでも、参考になる意見がたくさんありました。
OT 初回授業でしたが、とても学べることが多かったです。15回を通してより理解していきたいです。
OK 子どもにとってよい学習とは、子どもの自主性を尊重し、先生が学習を支える、子ども中心の学習だと思います。授業中、先生が殆ど話していると、子どもは自分の意見を伝えることができなくなり、だんだん子どもは考えることをやめてしまうと思うからです。
KG 今日、先生の授業を受け、子どもたちの意見を共有し、みんなが発表することで、それぞれ、新しい疑問や共感が生まれてくると思いました。
OZ 自分の教育についての考えだけでなく、第三者の意見を聞く事により、新たな教育についての思想、考えを自分なりに取り入れて実践にも役立てることができればいいと思いました。子どもが第一であり、子どもの将来を見据えた内容を多くの人達が考え、同じく、私もそうであると気づかされたことです。今後の「生活」の授業で、自分の教育観念を見直すことができる場、発表し聞き入れていく場になればいいと思いました。
SM 私はこの児童学部に入って9か月たちましたが、今日初めて、「子どもにとってどのような学習、学校、つけたい力」について考えました。みんなの意見を聞くことができたので、新しい発見になり良かったです。一番大事なのは、やはり「明日も行きたい」と思えることだと思いました。とても共感できました。
SS 授業のはじめでした。子どもにとってを考えることは、自分の将来にもつながることなので、とても良い経験になりました。よい学習とはでも出たように、自らが考えることが一番大切なことではないかなと、自分は思いました。木下竹次さんが述べているように、先生に教えてもらうより、学習する方が本当に面白くて力が伸びるというように、教えてもらって聞いていて解いてでは、力が身に付かない。興味を持って学びたいと自分から思うことで、はじめて身に付くと思いました。第1回目の授業から教職らしい授業だったので、やっと先生になるための実践的な勉強ができるなと思いました。
SI 自分達の意見を言うといった授業は初めてだったので、少し驚きました。人の前に立つことが苦手なので、この授業を通して、少しずつ慣れていきたいと思いました。他律的教育という言葉は聞いたことがあったけど、内容は知らなかったので、木下竹次さんの学習原論を読み、少しでも理解できてよかったです。
ND 子どもが育つにおいて、良い環境とは何かを考えました。子ども自身の力で前へ前へと成長し、そのために私たちにできることは何か、自分でも考えつかない意見がたくさん聞けて良かったです。もっといろんな視野を拡げたいと思いました。自律的教育の方がよいのは分かるけれど、それを最後までやってあげるのは難しいと思います。子どもも教えられるのを待っている今の雰囲気を打破していけたらいいなあと思いました。
HT 自分ではなかなか、良い学習、良い学校、どんな力を付けたいかという題について5つ思いつかなかったけれど、きつね先生や木下竹次先生の本を読んで、他律的教育より自律的教育の方が、自分の意見を持ち、自律できる子どもが増えると思いました。子どもが学んでいて面白く楽しいと思えることを学習していくことが、他の学習の面でも自分の力になると思いました。
HD 子どもによってよい学習とは、というめあてで、自分の意見とみんなから出ていた意見が似ていてうれしいと感じ、違う意見があればなぜこういう意見が出たんだろうと考えることができて、相互学習はすごく大切なことだと思った。
HN 子どもにとってよい学校とはについてのところで、行事の多い学校というのがいいなと思いました。それは、小学校の頃に思っていたからです。授業ばかりで、ずっと座っているのが楽しくないなと思っていました。昔の自分が思っていたことを思い出して書いていくことで、これから自分が学校で先生をしていくときのヒントになると思いました。
HM 子どもにとってよい学習とは、先生に言われた事だけをする他律的教育よりも、自分で考えて、自ら行動する自律的学習のほうが良いと思う。なぜなら、先生に言われた事だけをすると、したくもない人がいるのに楽しめないし、それから成長するのも難しい。でも自分がしたい事をすると、楽しみながらどんどん成長ができると思うからです。
FM 先生は2割話し、子どもは8割話すということが、自律的学習につながる。私はこの意見に感動しました。私たちが受けてきた授業は、まさに他律的学習でした。自分の意見を発表する場はありましたが、少なすぎると感じていました。それに、発表する人よりも、発表しない人の方がよいという空気もなんとなくあったような記憶があります。先生が、もっと発表しやすい空気を作ってくれたらなあと他力本願な思いもありました。
FS 今日学んだことは、学校は先生が教えて、子どもが学ぶ場所だと思っていたが、そうではなく、きつね先生がプリントに書いていた文章では、「先生は話さず子どもが話す」「先生が教えないで、子どもが自ら学ぶ」ということです。自ら考え、発想し、答えるという力は、とても大切なことだときつね先生のプリントを読んで改めて感じることができました。
MD 私たちや保護者が、「子どもが自ら学ぶ」ということは、本当に望んでいることだと思う。学習は、学校へ行っているので、学びに行かなければならない。しかし、教師は支配し、意思に忠順であることを要求する。日本は教え込み過ぎていると思う。一度留学した時に思ったことは、本当に海外は生徒のみでディスカッションをすることが多かった。
MK 子ども達が積極的に勉強できるような環境を作り、他人の意見もしっかり聞きながら自分の意見をしっかり言えるような学習をすることが大切だと思いました。子ども達だけで、勉強できるような環境を作ってあげることが子どもを育成する上で、とても大切なことだと感じました。
MK 学校という舞台では、子どもが主役なのに、ついついしゃしゃり出て主役をうばってしまう。子どもを第一に考えすぎて、おせっかいをしてしまう。それが子どもにとって良くないことに気付けずにいる。おせっかいが先立って、つい手が出てせっかく見つけた解決策を捨ててしまう。ずっと同じようにしていた人に、急に自律的教育に変えるというのは、何よりも難しいことだと思う。だからこそ、学生のうちに学べる私たちは幸せだ。子どもを第一に、子どもの求める教師になれるからだ。学び合う学習の中で、一番学習しなくてはいけないのは教師だ。
YD 子どもにとってよい学習とは、子ども自身が自分で意欲的に行う学習であると言える。他人に教えられたことをそのまま映して学習したという気になってしまうと、その時点で、自分の中の学習が止まってしまう。自分で体験し、考えれば、その学習だけでなく、さらに別の新しい視点が出てくるだろう。学習は積み重ねであるので、それ一つで完結するわけではないので、自分自身で自発的に行うことが大切となってくる。
YU 子どもにとってよい学習は、子どもが自ら学ぶ教育の方がよいことが分かった。今まで、先生から学んで子どもは学習していくのが普通だと思っていたけど、子どもが自分で考えようとすることで、発想力も豊かになるのではないかと思った。先生方も何も教えないわけではなく、子どもを見守ることを前提にして、先生自身が子ども以上に学び続けることが大事だと分かった。
きつねT みなさんの素晴らしいふりかえりを読んで、二つのお話を書きます。
一つ目は、幼稚園で運動会の練習の時のことです。
練習の途中で抜けてくる子どもが何人かいます。「きつね先生、どうして恐竜の骨は土の中に自分でもぐりこむの?」と聞いてきます。また、「もうしっぽ取り競争、面白くない。なんで、同じことばかりをするの。」「運動会の練習より、虫取りしたい。」とも、言います。運動会は、子どもがしたいと言っているわけではなく、先生が決めたことです。親向けのイベントです。一斉にする行事は、できるだけ子ども達の興味が持てるように工夫する必要があります。抜けてくる子ども達には、「(申し訳ないけど)一緒に運動会の練習をしようね」と、優しく協働の気持ちを伝える必要があります。雨で運動会の練習ができない日は、好きな遊びをお部屋でしています。みんないきいきしています。
二つ目は、ある画家の話です。
幼児のころからの絵をずっと残しているが、小学校の時の絵は面白くない。自分の絵が描けていないということで、捨ててしまったと、少し前に読んだ本に書いていました。小学校の先生の図工指導は、子どもに教師の絵を描かせてしまっていて、子どもの本来の考えや感性や想像力を発揮させるようなものではなかったようです。私たち教師は、気を付けなければいけません。