生活科について 2017年9月26日
1.自己紹介
こぎつね大学で教職の生活科を担当することになったきつねTです。一昨年まで、こぎつね小学校の副校長をしていましたが、昨年と今年は、こぎつね幼稚園で自然分野担当の教諭として、午前中勤務をしています。幼稚園では、きつね先生です。自慢できることは、定年近くまで、担任や理科専科教諭ができていて、今は園児と共に、自然を学ぶ先生でいたことです。今年の1月〜3月にも、小学校から、急きょ担任を頼まれて、幼稚園から小学校へ出向していました。3年生の担任を三か月間していました。つい最近まで、現場の人です。
私はこれまで、堺市の科学教育研究所で4年間、堺市の小学校で12年間、こぎつね小学校で22年間、幼稚園で2年間、先生をしてきました。堺市の小学校の頃から、「子ども主体の学習」をどのように進めるかという工夫を、ずっと考えながらの実践でした。38歳の時に赴任したこぎつね大学附属小学校には、子ども中心の教育の伝統がありました。大正時代のこぎつね小学校の主事(校長)である木下竹次は、『学習原論』という本を著し、子どもが自ら進める学習についての方法論を、大正時代にほぼ確立されていました。かつて、木下がこの本を出版したころの小学校には一年間で2万人もの先生が見学に来られたというような記録が残っています。私が小学校にいた平成時代でも、研究発表会を開くと二日間で1500人もの先生が来られるような、期待される教育を進めている学校として存在しています。
2.こぎつね小学校の教育
子ども主体の教育は、現在でも永遠の課題です。文部科学省も、その方向を目指しています。教え込み教育、詰め込み教育より、子どもが自ら学ぶ教育の方が良いのは、誰しも思うところです。しかし、「子どもが自ら学ぶ」という学習法はとても難しく、やり切る先生が少ないのです。この、子ども主体の教育には、いくつかのコツがあります。聞けば簡単なようで、実は実行が難しいコツです。それは、「先生は話さず、子どもが話す」「先生が教えないで、子どもが自ら学ぶ」ということです。先生が、「多くを話さない、先生が多くを教えない」ということが、とても難しいのです。一般的な授業中、「先生8割・子ども2割」で話しているのを、「先生2割・子ども8割」話すようになると、本当にすごい追究がなされる学級へと育っていきます。子どもの育ちを見守り育てる先生になります。しかし、単に見守るだけの先生ではだめなのです。実は先生は、子ども以上に常に学び続けることができるかということが、関わってきます。子どもがそれぞれ、自分で学び始めると、多岐に渡る資料を使って学び始めます。それを、支えることができるか、拡散しないで学習へ収束させていけるかという力が、教師には必要になります。よい先生は、「話さない、教えない、子どもそれぞれの学びを支える」ということで、自律した学びを進める子どもを育てることになります。生活科の学習を通して、これから一緒に、「子どもが自ら学ぶ教育」について考えていきましょう。
こぎつね小学校では、「しごと、けいこ、なかよし」という枠組みで学習領域を分けてきました。「しごと」は、生活科や総合的な学習であり、「けいこ」は、国語や算数など全ての教科の学習、「なかよし」は、子ども中心の学校生活を創る学習です。今回、こぎつね大学の生活科の時間では、こぎつね小学校の低学年の「しごと」学習が成立していく過程を体験してもらうことにより、子どもが学びの基礎基本を創っていく方法を身に付けてもらいたいと思います。
3.生活科の学習
生活科の時間では、新1年生が学級での学習が成立していくように進めたいと思います。自分たちで学びを深めることを育てるには、先生になる学生が自分たちで学習を深める経験を持つことが大切だと思います。1年生の子ども達が、自分たちで学びを追究していくように一年間かけて学んでいく過程を、短く15回で体験してみましょう。
また、私は、大学生の時、研究室の大学院生・学部生5人ほどで、毎週土曜日の午後2時から6時ぐらいまでの4時間にもわたるゼミを、2年間続けた経験が、教師になってからとても役にたっていると考えています。岩石学の本、火山噴火の英語論文、鉱物学の本などを、自分たちで読み進めました。教授は殆ど教えないで、分からないことがあると、「この本を調べるといいよ」とヒントをくれました。2年間続けると、かなり多くの事を学び合うことができました。分からない言葉を調べ、文章で書かれた化学変化を化学式で表現し、論理的な飛躍があるところは自分たちで補足しながら読み進めました。文章を厳密に読むこと、分かるということはどういうことなのかを、体験させてもらったと思います。
生活科の学習では、「学び合う学習環境を創るにはどうすればよいか」ということを、体験を通して学んでもらえればいいなあと思っています。
<学習について>
1 学習は与えられるものではなく、自ら考え独自で学び、相互学習を通して高め合う場であることを体験的に習得し、教師になった時、児童自らが学び続ける学級の育成について考える。
2 小学校の生活科学習単元の教材・素材研究を通して、主体的な学習の進め方を考え、生活科で育てたい力について理解する。
3 安全な学習の進め方と、生活科の環境整備について考える。
<学習の到達目標>
1 子ども主体の学習について理解する。
2 独自で学びを進める学習法について、その意義や可能性について理解する。
3 独自学習を基に相互に学び合う学習について、その方法や記録について理解する。
4 生活科学習におけるノート記録・資料整理・記録の作成について体験的に理解する。
5 生活科学習で身に付ける主体的な思考力について理解する。
6 生活の中にある教材・素材について理解を深め、安全な活動の方法を身に付ける。