こぎつね奈良さんぽ(2年)-アメリカの友達に奈良を紹介しよう-  2000年8月

                       

1.はじめに

 1年生の中頃からだと思うのですが、星組はきつね組、月組はたぬき組と呼ばれるようになりました。子どもたちは、それぞれのクラスで、立派なこぎつね、こだぬきになろうと頑張っています。日記にも、「今日の昼休みに、砂場でこぎつねごっこをしました。川をとびこえたり、あなをほったりして、こぎつねのしゅぎょうをしました。」というように、遊びの中でも楽しんでいるようです。さて、1年生のこぎつね達は、学校周辺を一年間さんぽしながら、自然をテーマにして、むしむしランド、絵本作り、歌作り、こぎつねさんぽの劇作り、カルタ作り、立体こぎつね村作りをしてきました。2年生では、奈良のことをアメリカの子どもたちにお知らせする取り組みを始めています。今回は、実践「こぎつね奈良さんぽ」の1学期の様子を報告します。

 

2.「奈良さんぽ」の始まり

 1年生の12月、幼稚園の先生にお手紙を書こうという取り組みをしました。そのとき、YZさんはアメリカの小学校に半年間席をおいていたので、「私はアメリカの学校にお手紙を書くの?」とおたずねをしてきました。「そうですよね。」と返事をしていると、他の子どもたちが「いいなあ。アメリカにお手紙を書くのか。」と羨ましがります。「僕らもアメリカにお手紙を書きたい。」という声が上がるので、YZさんの母に、お手紙の交流ができるか聞いてもらう事にしました。YZさんの母のお手伝いをしてもらいながら、手紙の交流が出来ることになったのが、3月でした。そして、4月より、2年生の学級で、取り組みが始まりました。クラス替えをした新しい学級なので、新たな出発です。4月12日(水)2年生の学習の初日に、さんぽの話し合いをしました。

 

T‥昨年の星組は、さんぽをしていました。今年もさんぽをしてみたいですか。

C‥さんぽって、どこに行くの。

T‥どこへ行ってみたいですか。

C‥学校の近くで虫取りをしたい。

C‥花の観察をしたい。

C‥奈良公園へ行きたい。

C‥電車に乗って行かないよ。

C‥去年も、元興寺へ電車で行ったよ。

C‥ルリセンチコガネを奈良公園に探しに行ったよ。

C‥先生、どこへさんぽに行くのですか。

T‥先生は、今年は2年生だから、電車に乗って、行ってもいいかなと思っていますが、みなさんはどうですか。

C‥わーい。やったー。

C‥何を見るの。

C‥ルリセンチコガネ。

C‥シカにえさをやりたい。

C‥大仏さんを見に行きたい。

C‥見たことある。奈良公園は幼稚園の時行った。

T‥奈良公園って、どんなことで有名ですか。

C‥シカ

C‥大仏

T‥大仏様を見たことのない人はいますか。

C‥13人。

T‥たくさん、見たことないんだ。行ってみようか。そして、シカにしかせんべいをあげてみようか。

C‥わーい。やったー。

C‥いつ行くの。

T‥今度の土曜日です。もう一つ、奈良のことを調べて、外国のお友達に紹介していこうと思うのですがどうですか。

C‥僕のいとこがアメリカにいてる。

C‥中国人の人を知っている。

C‥バリ島へ行ったことがある。

T‥最初は、YZさんが前に住んでいたことのある、アメリカの学校にお手紙を書こうと思っています。奈良公園へ行って、どんなことを紹介しますか。・・・・・

 

このような話し合いから、2年生のしごと学習は始まりました。ここでは、奈良公園に行く、それを外国の友達に紹介するということは、教師から少し話しました。奈良公園で何をするか、どのように進めるかは、子どもにゆだねるようにしていこうと考えました。

 

 次に、奈良について知っていることや調べてきたことを、発表しました。子どもたちは、なかり物知りです。

TM 奈良こうえんというところには、シカはいっぱいすんでいます。シカのうんちはまるくて、うさぎのうんちみたいです。サクラの花は、いまごろいっぱいさいています。だいぶつさまの名前は、いっぱいあります。「あ」のにおうさまと、「うん」のにおうさまがいます。

MM シカは、奈良こうえんというところにいます。いまでは、1100ぴきいじょうがいます。奈良こうえんはひろくて、五じゅうのとうがあります。

YM 奈良ですごいのは、だいぶつとシカです。日本には、はいくがあります。「はるのみち さくらがさいて きれいだな」

KB 奈良では、シカとだいぶつさんがゆうめいと、いわれています。私はまだ大仏さんをみたことがないので、こんど先生といっしょにいってしらべたいと思います。

IW ぼくは、シカや大仏さんをビデオカメラでとってしょうかいしたい。ならのしかは、えさをほしいときに、おじぎをします。

KJ シカは走るのがはやくて、人間はかてません。大仏さまは、人間より大きくて、金のように光っています。

TD 草はらのところには、メスとオスのしかがいることを調べたいです。角はどうして、どういうふうにのびていくのか、発見したいです。

MS 奈良けんを私たちは歩くじゅんびをしています。歩いて奈良けんのことを調べに行きたいです。東大寺に大仏様がいらっしゃいます。奈良公園には、しかがいらっしゃいます。

SG 奈良こうえんには、大仏やしかなどがいます。コイもカメもいます。ときどき奈良公園に行って、コイにえさをあげます。カメには、ふをあげました。

GR 僕がすんでいる奈良という町には、大仏があって、奈良公園にはシカがいます。きらきら光るルリセンチコガネや、きれいなこえで鳴くウグイスがいます。

HM 奈良は、春のにおいのする、いい所です。

 

3.さんぽへ行こう

 さんぽに出かける日は次のようです。

 4月15日(土曜日)奈良さんぽ①

 4月26日(水曜日)奈良さんぽ②(木津川学年遠足)

 5月 6日(土曜日)奈良さんぽ③

 5月20日(土曜日)奈良さんぽ④(いちご狩り学年遠足)

 6月 3日(土曜日)奈良さんぽ⑤

 奈良公園のさんぽは、近鉄学園前駅から電車に乗って、4つ向こうの近鉄奈良駅まで行きます。1年生のさんぽは、学校の近くのさんぽコースを1時間歩いて、1時間記録を書いてという2時間の活動を一年間積み重ねてきましたが、奈良さんぽは半日かかります。専科の先生の学習がない、月に2回の土曜日に奈良さんぽへ出かけるようにしました。

 

 第1回目は、4月14日(金)に奈良さんぽへ出かけました。お天気の関係上、急に金曜日に繰り上げました。

UM まずは、シカをかんさつしました。エサをあげたり、シカの絵をかいたりしました。身体に白いはんてんがあり、動物図かんでしらべると、白いはんてんは、子ジカと夏の毛にはあり、冬の毛になるとなくなると書いてありました。そして、お弁当を食べたあと、川にかにがいるか、見に行きましたが、いませんでした。残念でした。石わたりをすると、くつしたがぬれました。それから、大仏を見に行きました。大仏は、ぼくがそうぞうしていたものより、かなり大きくて、びっくりしました。大仏のとなりの柱に、あなが開いているところをくぐりました。大人の外国人のくぐれるぐらい、大きなあなでした。そのあなは、大仏さんのはなのあなと同じ大きさで、このあなをくぐると、びょうきにならなくて、わるいこともおこらないという、いわれがあるそうです。大仏を見てうれしかったです。そのほかにも、東大寺の門にあたる南大門には、金ごう力士ぞうがあり、大仏でんに向かって、左が口をあいているア形ぞう、右が口を閉じているウン形ぞうがありました。

OY 大仏さんとシカをかんさつしに行きました。シカのせんべいをあげました。おじぎをした。れいぎ正しいなあ。一匹おなかの大きいシカもいました。赤ちゃんが入っているのかな。角がのびているシカもいました。バンビ(子ジカ)もいました。角があるのがオスで、角がないのがメスです。少しこわいなあ。おもたいカバンをせおって、大仏でんに行きました。大仏でんの中ではかんさつができないので、おぼえておきました。(母‥お天気もよく、あたたかい一日でしたね。散歩するには良い一日となりました。久しぶりに東大寺に行き、みごろなサクラに感動しました。今度の散歩も楽しみにしています。)

ID 私は、きのう奈良にさんぽに行きました。2年生になってはじめてのさんぽです。お弁当を持っていったので、遠足のようで楽しかったです。最初に、シカのかんさつをしました。バンビや、大きいシカや、おなかの中に赤ちゃんがあるシカや、いろんなシカがいました。帰って図かんで調べると、オスのシカは、生まれて2年目に角が生え、3年目から枝わかれした角が、はえるようになるそうです。子ジカが4月~7月に生まれるというのも分かりました。毛には、夏毛と冬毛があり、冬毛は、真っ茶色で、夏毛はうす茶色に白いはん点です。次に、東大寺に行って、大仏さんを見ました。大仏さんには、ひたいのところに、丸いものがついていました。後ろに回ってみると、もっと小さな大仏さんがたくさんいました。右手をあげて左手をうけて、かわった手の形をしているなと思いました。大仏でんは、りっぱで、広くて古いたてものだなあと、思いました。東大寺に行くとちゅう、しだれ桜という、地面まで花がある桜が咲いていました。どの桜も満開で、きれいでした。(母‥お天気もよく、桜も見事で、雨の前日に変更して、本当にいい日に来たなと思いました。子どもなりに大仏や東大寺を見て、疑問に思ったり、興味を持ったりしたこともたくさんあったようでした。また、訪れたいなと思いました。ありがとうございました。)

■唐錦たかはる 昨日は、奈良公園に行って、しかせんべいをやって、しかをかんさつしたり、大仏でんへ行って、大仏さまのようすをみたり、はなのあなの柱をくぐったりしました。アメリカの子どもたちに、うまく伝わるといいなあと思います。

 

4.劇を作ろう

 我が校では、低学年集会を、毎週金曜日の5時間目に持っています。低学年の6クラスが2クラスずつ集会発表をしていくので、3週間に一度の発表が回ってきます。

5月12日(金)劇「こぎつねの奈良さんぽ」

6月 2日(金)劇「スイミー」

6月23日(金)劇「奈良さんぽを紹介しよう」

 今年の劇は、創作を中心に進めています。脚本は、子どもの言葉をつないで、さんぽの様子を伝えるようにしました。脚本、背景を作り、動きの練習を数回の打ち合わせの中で修正していきながら、しごと学習の表現を目指しています。スイミーも、教科書を中心にしてはいますが、創作劇です。劇については、いずれ詳しく報告します。

 

5.歌をつくろう

 昨年、1年生では、「こぎつねさんぽ」という春夏秋冬の季節のさんぽの歌を4番まで作りました。今年は、「こぎつね奈良さんぽ」の1・2番を作りました。1番は鹿の歌、2番は大仏の歌です。作曲は、保護者にお願いしました。その後、イチゴ狩りの歌、木津川さんぽの歌、南大門の歌、奈良太郎(釣り鐘)の歌作りをしています。曲は同じで、何番も書き足していける歌作りの実践は、広がりのある取り組みになりつつあります。また、歌は劇と合わさって、心の中にしっかりと焼き付いていきます。

    はるかぜに ふかれて こぎつねコンコン 今日は 奈良へ さんぽです

みんなであげよう しかせんべい れいぎ正しく おじぎする 小さな かわいいバンビたち

オスじかさんは こわそうだ

みどりの公園 ひびくなきごえ シカの上で おひさまわらい きろくの 紙を食べられた

たのしい たのしい 奈良さんぽ

 

6.おわりに

 4月に、大仏とシカを調べたことを、個々にB4判の紙に書いてアメリカへ送りました。現在6月は、1学期に取り組んださんぽの様子を、グループに分かれて、模造紙に描いています。

アメリカの子どもたちに奈良を知らせるという今回の取り組みでは、

    奈良の良さを見直すきっかけになった。

    子どもの表現の中に英語が自然に入り込んできた。

    文字中心ではなく、多様な表現に広がっている。

というような、よさが感じられています。さらに現在、表現が、詩や俳句、ホームページへと広がりつつあります。今後も奈良さんぽを続けながら、子どもの文化の高まりとして実践をつないでいきたいと思います。