「まほろば科学館」だより 2007年8

 

 理科の専科になって、3年目に入りました。理科専科の1年目には、2年生の担任が4月半ばで、急に辞めてしまうということが起こりました。急遽、3~6年生の理科専科をしながら、2年星組の担任もするという、前代未聞の仕事を1年間しました。今考えると、よく病気にならず、生きながらえたなあと、その頃の過酷な毎日が思い出されます。当時の2年星組の学級役員さんの献身的な協力体制があって、なんとか1年間、子ども達と楽しく過ごすことができました。

 そんな中ですが、理科専科としての「まほろば科学館」(理科室便り)は、混乱期の1ヶ月間ほど休刊しただけで、毎週ずっと、出し続けることができました。一方、担任をしている学級の「2年星組だより」も週一回出しましたので、土、日曜日は、2つのお便りを懸命に書き続けていました。

 先日、昨年の卒業生の保護者が理科室にやってきて、「先生、うちの娘が、まほろば科学館を読みたいと言うので、4月からのお便りをコピーしてもらえないでしょうか。」と、言いました。「へえー。子どもでも、そんなに熱心に読んでくれていた人がいたんだ。嬉しいなあ。」「そうなんですよ。ちょっと、まほろば中毒なんです。先生の文章のリズムが、うちの娘にちょうどいいようなのです。」「こんな嬉しいことはないよ。いくらでもコピーします。」というような会話をしました。

 6年生にもなると、ほぼ親向けに書いているお便りを、子どもが読んでくれていることに、書き手として嬉しい驚きを感じました。多分、このような子どもが一人いるということは、あと数人は、同じような人がいるんじゃないかと、わくわくしています。お便りを書くのに、やりがいが出てきます。

 「まほろば科学館」は、本年度は、4年生~6年生に配布していますので、本校の半数の家庭に毎週発信していることになります。専科教師は、保護者と直接話をする機会がほとんどありませんので、このお便りが唯一の交流になります。交流と言っても、エッセイや、理科教育論、子育て論を、一方的に書き連ねているだけなので、中には、そうじゃないだろうと、読み捨てている方もおられるかもしれませんがそれはしかたないことです。

 話は変わりますが、今回専科をする前は、1年生から6年生まで担任として続けて持ち上がりました。持ち上がり1年目の時に初めて知ったことですが、保護者のみなさんの中に、東大寺や薬師寺や元興寺や法隆寺など、奈良に住みながら、世界遺産のお寺に行ったことの無い方々が、学級に半数もおられました。「奈良に嫁いできて、子どもができて、子育てに追われて、行く暇がなかった。」というのが、理由でした。そこで、「こぎつね奈良さんぽ」という学級遠足のときには、必ず保護者もつれていってあげることにしました。

 この案外見ていないという実情は、おそらく理科の内容でも同じようだと思います。そこで、先日、ホタルのことを「まほろば科学館」で紹介しました。ホタルは、奈良ではまだ身近に見ることができます。理科の「こぎつね理科さんぽ」は担任ではないので、子ども達を見学に連れて行ってあげられません。そこで、理科便りの最後に、「子ども達を、ホタル見学に連れて行ってあげてください。」と書きました。その反応が、素敵な日記として、数人より返ってきました。担任の先生が、日記のコピーをくださいました。

 

 ホタル日記 HM

 「今日、生まれて初めてホタルを見た。家族4人で、天理の五ケ谷という所へ言った。最初、ホタルのいそうな川ぞいを見ていたけど、ちっともいなくて、困っていたら、おじさんとおばさんが歩いていらして、ホタルのいる場所をおたずねすると、親切に教えて下さって、一緒にその場所に行ってもらった。その場所は、一面水田で、そばには、小さな川が流れていた。稲の苗や川ぞいの草に、それはそれはたくさんの光が見えた。光の点滅がとてもきれいだった。私は、LEDの光にとてもよくにているなと思った。しばらく見ていると、上の方にも大きな光があるのに気がついた。きつね先生の「まほろば科学館」に書いていた通りで、星の一等星のような明るい光だった。その光が、ふわーんと下に下りてきて飛び回った。思わず追いかけてしまった。ラッキーなことに、私のTシャツにとまってくれて、そっと手のひらの中に取って観察した。感動した。かわいかった。私の手の中でやさしい光を放っている。おじさんがそれは「ゲンジボタル」だと教えて下さった。お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも感動したと言っていた。私もずっと見ていたいと思った。」