文部科学省指定の研究開発学校3年次の我が校の課題 2011年6月
今、こぎつね附属小学校は、文部科学省の研究開発学校の指定を受けて、幼小一貫教育校を目指した教育研究に取り組んでいます。研究主題は、「幼小一貫教育において『読解と表現を<つなぐ>論理的思考力』を育成する教育課程の研究開発」です。私たちはこれまで、独自の教育実践、研究スタイルを続けてきていて、近年では文部科学省の近い所で実践研究を問うことはあまりしてきませんでした。今回は、「奈良の学習法」を世に問い、さらに、3歳から12歳までの9年間連続した子どもの、一貫した学びの構造化を試みようと考えました。本研究において、「ひらめきの活動や時間」という学習活動を設定し、我が校独自の「しごと」学習の中で育んできた能力の中の「論理的な思考力の育ち」に焦点を当てて、幼小連続した子どもの学びの発達を整理していくことにしました。
私たちの「しごと」学習は、身近な生活の中に追究の課題を見つけ、子どものフィールドワークを通して情報を収集し、相互に学び合いながら、独自の追究を深めることが基本です。特に今回の研究では、「奈良」からの発信であることを印象的に伝えるために、「学習場奈良」を意識しながら取り組みを進めることにしました。さらに、学習のフィールドをあえて「学習場奈良」と限定することにより、今回の「ひらめきの活動や時間」の学習は、「しごと」学習の全てではなく、「しごと」学習の中の一部であると限定しました。
「ひらめきの活動や時間」の学習では、フィールドワーク、文献調査、相互学習から導かれる「情報の読解」と、読解から進められる「考察としての表現」との間には、活動者や追究者の年齢なりの論理的な思考力が必ず働くと考えます。と言うよりも、常に子どもたちが論理的な思考力を働かせるように、活動や学習を進めることが大切であると言えます。漫然とした活動ではなく、学習活動には「課題」があり、仮説、行動計画、「めあて」を持った行動であることが大前提であるのです。なぜなら、活動に「課題」や「めあて」がないと、有効な思考力が働かないからです。
その場の楽しさ、その場の情緒、雰囲気に左右された論理的でない活動になってしまわないように、私たちは子どもたちに、
①追究の課題を持たせ、
②その課題に向けた仮説や準備や行動計画を「めあて」として考えさせ、
③多様な活動から必要な情報を整理し読解させ結果を導き、
④仮説や行動計画(「めあて」)と「読解の結果」をつき合わせながら「考察の表現」を創らせるという学びの過程を大切にしながら、学習活動を進めるようにしなければならないと考えました。
論理的な思考力は、このような、論理的に進められる学習活動の中で育つと考えました。今一度、簡単に整理すると、
①追究の課題を決める、
②「めあて」を持つ、
③活動を行い情報の読解をする、
④考察したことを表現する、ということになります。
この研究では、4つの仮説を設定し進めています。
仮説1は、初等教育前期、中期、後期の3期の質的変化の高まりを構成することによって、階層的・系統的に論理的思考力は育成できる。
仮説2は、「見方」、「情動」、時間空間の「広がり」、「学習領域」の4相と関連することによって、広がりや深まりをもった論理的思考力が育成できる。
仮説3は、「独自学習」「相互学習」「さらなる独自学習」という学習展開を構成し、それぞれの場に即した思考状況を構成すると、論理的思考力は育成できる。
仮説4は、異年齢交流活動、少人数クラスの活動、幼小教師の協働した指導を設定することにより、論理的思考力は育成できる。
今年度は3年目の最終発表の年です。現在、「ひらめきの活動や時間」の学習活動の、幼小一貫したカリキュラムができつつあります。また、幼小の接続期である初等教育中期(5歳、1年、2年)の新たな活動「なかよし広場」が動き始めました。
論理的な思考力については、3期の質的変化の階層ごとの高まりを大切にし、活動の時間空間を段階的に広げ、子ども自ら学ぶシステムを通して、協同的に学びを進める中で育つことが見えてきました。
初等教育前期は、身の回りの情報とつないで次の行動や表現を考える。
初等教育中期は、「めあて」を持って情報を収集し、情報を整理して表現を考える。
初等教育後期は、仮説を持って情報を収集し、結果から考察を導き出し追究の過程を学びの履歴として表現することができる。
これらの思考の発達を、具体的な学習活動の姿、到達した子どもの事実で証明していくことが最終年度の課題だと考えています。