子どもたちが学習生活を進める学校 2015年春

 

こぎつね附属小学校の子どもたちと共に、22年間歩んできました。創立来約100年の5分の1、この学校の歴史の中で先生を務めることができました。とても恵まれた人生だったと思います。本校のよさについて、今一度考えてみたいと思います。

まず、朝から子どもの声で、全ての学習生活が始まるということです。前日の帰りの会の連絡のところから翌日の日直は活動を始めます。前日に時間割や宿題や提出物についての連絡を担当しているので、一日の学級の学習生活について、全責任を持って進められます。私が子どもの頃は、学級委員長という制度があって、委員長が日々の学級のとりまとめをしていたのですが、本校では順番に回ってくる日直が、その日の学級委員長として、責任を持って行動します。先生の代わりに、教室の清掃や黒板の管理、専科の先生の学習に遅れない教室移動や、宿題、提出物の管理、諸連絡など、全てを進めます。学級のみんなが過ごしやすい生活を、日直が作ります。全員がすぐにできるようになるわけではありませんが、先生は見守り、よいところを褒めて支援します。学習生活の中心の責任者になって判断して指示し、学級の皆さんや各係に行動してもらう経験は、一人ひとりの子どもの責任感を育てます。 

各時間の学習は、各教科の係が担当します。前時の学習の終わりには、次の学習のテーマを決めて、先生と相談しながら学習の準備をします。休み時間には黒板を書き始め、学習の時間になると直ぐに始められるようにします。当然、全ての学習も、係の子どもの声で始まります。先生が、「はい、座って。静かに。今日は○○ページからでしたね。」などと言うような先生主導の、主体性のない学習ではありません。学習の進め方は、先生の考えや願いを子どもに伝え、最初にすること、意見の出させ方、話し合いの仕方、黒板の書き方、ノートの書き方、学習の終わり方など、次第に作り上げていきます。

学級で校外へお出かけするときも、子どもたちが進めます。行先は、しごと学習や理科学習の中で決まってくるのですが、どのように行くか、しおりはどうするか、いくらかかるのか、事前にどのような学習をしておけばよいのかなど、子どもがそれぞれに独自学習をして、相互学習で意見を出し合い、作り上げていきます。効率を考えると、先生が綿密な考えで進める方がよいように思いますが、子どもに丸投げして、一から作り上げる経験をさせていくことが、自律した学びを創る力を育てることにつながります。小さな「学級さんぽ」に何度も取り組ませていくと、学年の遠足や「しごと合宿」なども、子どもが責任を持って、出発から終わりの会まで、さらには、事前学習から事後のまとめの学習まで、全てを進行するように育ってきます。先生は、時々の安全に配慮するだけで、実り多い野外学習、フィールドワークになっていきます。

さらに、漢字ドリルや計算ドリル、宿題までも子どもが計画的に出すようになってきます。先生は、にこにこして座っているだけで、朝の会、帰りの会、そして、学習も「学級さんぽ」も宿題も、子どもがどんどん進める学級集団へと育っていきます。では、先生は日々何をしているのでしょう。学習のノートは全て先生が見ます。日記のコメントやプリントの○付けも当然、先生がします。実は、それだけではありません。一番大切なのは、子ども以上に学習や調査をし、子ども以上に本や参考書を読み、お金と時間をかけて、全精力をかけて教材研究をします。そして、にこにこしながら、殆ど言葉を挟まないで子どもの学習を見守ることが、本校の先生の仕事なのです。新しい単元に入ると、関連した本を何冊も読みます。フィールドワークに行くためには、何度も下見をします。植物単元なら、植物図鑑も新しく買ったりします。博物館、科学館へも出かけます。

独自学習力を育て、生活学習力を育てるということは、実は先生の独自学習力に関係します。先生が楽しみながら、学習生活を日々送っていれば、子どもに自然にその力が伝わっていくものだと考えます。最終的には、先生が一番大切な学習環境だということが、本校で言えることです。