書く力を高める2015年10月15日
本校に授業見学に来られる先生方の多くは、子どもが自ら学ぶ姿を期待されています。自分たちで課題を考えて、互いに話し合いを深め、子ども自身が学習を創りあげる様子です。一方、私たちは、子どもが進める学習以上に大切にしていることがあります。それは、独自学習における書く力です。子どもに書く力が伴っていないと、学習をいくら子どもが進めていても、追究の実態の薄い、口先だけの学習形態でしかなりえません。書く力は、独自の学習を進める上で、とても重要な力です。自分一人でノートに向かい、教科書や図書や資料を活用しながら、自分の考えをまとめていく力です。独自学習があって初めて、子どもが進める自律的な学習が成立します。
独自学習は、木下竹次が提唱した学習法の根本原理です。独自学習は、子ども同士が相互学習に取り組む前に、まず自分で本を読み、実験をしたり、物集めをしたり、調べ学習をしたりして、自分なりの取り組み方や、学び方や、追究の仕方を身に付ける学習です。そこでは、書くということがとても重要になります。書くということは、自分の考えや気持ちを見える形に昇華させて、結晶させることです。さらに、書くことは、個人で学んだことを人に伝える表現でもあります。
私自身の書くことについて考えてみました。私は本を週に数冊買いますが、書き残さないと記憶から消えていきます。最近ちょっと気に入っているのが、A7サイズのカードを本のしおり替わりに挟むことです。それに書名や作者名や買った日、値段などを書き、また、読んでいる時にはカードにメモも書きます。読み終えた後、カードを取り出し整理すると図書検索カードになります。図書館で借りた本もそのようにして読むと、あとで本を思い出す時にとても便利です。また、教師がお便りを書くということは、教師が独自学習をすることではないかと考えています。私はこれまで、学年便りや学級便りや理科便りを、毎週書いてきました。今見直してみると、それはまるで私の独自学習の足跡でした。副校長になってからは、「附小だより」を書くことが月に一回だけなので独自学習が足りていません。そこで、個人的に「晴歩雨読」という記録を、夏休みの頃から週に一回、A4で2枚書くようにしています。現在、8号まで書きました。今は読者がいないので、コンピュータの中に貯めているだけです。
さて、先日、中等教育学校の職員会議の席に、きつねTとH先生の二人が招待され、こぎつね附小の教育について1時間ほど話をする機会がありました。おそらく、これまで附属百年の歴史の中で、初めての記念すべき出来事だったと思います。私は「子どもが自律的に進める奈良の学習法」について総論を話して、H先生は、子どもたちの書いた「しごと学習のレポート」や「日記」や「自由研究」などを見せながら、具体的な子どもの育ちについて紹介しました。書く力に重点を置いた、こぎつね附小の子どもたちの育ちを、中等教育学校の先生方に紹介することができました。
子どもにとっての「日記、独自学習、自由研究」は、教師にとっての「教師の日記(授業記録)、おたより、学習研究誌論文」にあたります。教師がしっかり、本を読み、調査をし、記録をして子どもや保護者の方にお伝えして、研究を論文にまとめていると、自ずと子どもたちが育ちます。教師の書く力が、子どもの書く力を高めます。 (副校長)