理科での表現力 2006.12.4

 

①文章で表現する力

 4年生の学習では、学習の始まりに季節日記を書かせています。季節日記は、日頃の生活の中で出合った不思議を見逃さないで、学びにしていく子どもを育てます。箇条書きでなく文章で書くと、心の動き、感情まで表現することができます。

 文章で書かせるには、辞書が必要です。学級担任の時は、1年生の2学期から辞書を持たせました。その子たちを卒業まで持ち上がりましたが、4年生ぐらいになると、広辞苑や国語大辞典などを使うように育ちました。そのことを今の専科理科の時間の子ども達に伝えると、理科室に来る子どもの中にも、重い広辞苑を持ってきてくれる子どもがいます。6年生では、電子辞書の広辞苑を、親が持たせてくれています。本当に頭の下がる思いです。このような大きな辞書を使って、子ども達は、理科の言葉を詳しく調べます。季節日記をはじめ、学習のめあても、ふりかえりも、実験観察の考察も、辞書をひきながら文章で書いています。

 

②絵で表現する力

 絵で表現するには、ノートをきちんと持たせることが大切です。書き込みテキストやプリント類をできるだけ使わないで、図や絵を自分で描きながら、ノート作りをしていくようにします。ビーカーや試験管などの実験の様子、電気の回路図など、マス目の線を活用するように常に声をかけています。また、草花、木や虫の絵は、ノート上の大きさをおおよそ指定します。絵は、理科では、文章と同じくらい、大切な表現です。

 スケッチの力を付けるには、まず、鉛筆の線で、中心からよく見て描かせるようにします。レポートとして、別用紙に描かせるときには細書きのマジックで直接描かせて、線描きを意識させます。薄く色をつけると、ノートもレポートも、見違えるほど綺麗に見えます。

 

③表やグラフで表現する力

 表やグラフは、理科で日々当たり前に使いこなして行くことが大切だと考えます。自然を定量的に測定する場面を増やして、グラフに表すようにしています。3年生の気温や地温、4年生の水の三態変化、5年生の溶解度、衝突や振り子などの単元は当然ですが、最近取り組んだ、5年生の上皿天秤を使った重さ調べでは、1円~100円までの硬貨の重さを予想させてから実測し、予想と実測の比較をグラフに書き表しました。かけ離れた予想の子どもと実測に近い予想をしていた子どもがはっきりして、楽しめました。また、5、6年生の夏の臨海合宿の課題であった貝の標本作りでは、自分の標本を基に、数値化できることを引き出し、表とグラフで表現させました。巻貝と二枚貝、貝の色、大きさ、生息場所の深さ、岩場と砂浜の貝など、子ども達は工夫してグラフ化に取り組みました。

 多くの場面で、グラフを書いていると、縦軸横軸を上手にノートにとって、さっと書けるようになります。書き慣れることが大切だと感じています。

 

④レポート(課題研究)で表現する力

 レポートというと、参考書、インターネット丸写しのものが多くあります。理科でこのようになってしまわないために、先ほどの表やグラフで表現する活動、そして、スケッチを描く活動を大切にします。自分で絵を描いて考察をする、また、表にまとめてグラフ化して、考察するようなテーマを与えて、それをレポートにさせます。

 例えば、5年生の台風レポートでは、天気図から数値化できることを引き出し、表にまとめて、グラフを書き、考察をさせました。台風の中心気圧をグラフ化したり、移動位置を東経、緯度で表したりして、台風の変化や移動を表とグラフで表すレポートなど、工夫したものが出されてきました。そして次の、秋の天気の変化レポートでは、大陸性の移動性高気圧や温帯低気圧や前線の動きを追いかけて、秋の天気が西から東へと変化していく様子を表やグラフで表現して考察をしました。

 4年生の月や星の動きの学習では、しっかりとレポートを書かせることが大切です。今年は高度計を持たせて、天空での位置を数値的に捉えさせ、座標記録用紙に表現するようにしました。太陽は、日の出から日の入りまでの昼間の観測です。月は、二つの形の月、例えば上弦と満月の観測です。難しい星は、北の空と南の空に見える星の動きの観測です。殆ど家での観測になるので、保護者の協力が大切です。家族で取り組んだ貴重なデータを、きちんと結果、考察、問題点、感想などを書いたレポートに仕上げさせることが大切だと思いました。活動をきっちりまとめると、次の観測の意欲につながります。

 日頃の理科学習で、ノートに実験や観察を丁寧に書かせていく指導をしていても、学期に一、二度は、一枚レポートに観測や実験や観察を、個人の力で書き上げるような課題研究のレポートの積み上げが、理科の表現力を高めると考えます。

 

 (学習研究誌12月号 「理科における表現力と読解力」より一部掲載)