標本の整理 2006.5.09
2年生の担任の時、屯鶴峯に岩石採集へ行きました。二上山には、いろいろなタイプの火山岩が見られるので、それらを探して、標本にする探検遠足です。
採集したものを、きちんと整理して、名前をつけて整理出来る人と、採集しただけで、それを整理できないでいる人がいるのではないでしょうか。箱に並べるにも、大きさを揃えて並べると標本らしくなるもので、それにきちんとラベルを付けると、後で学習する時に、使えるものになります。学習が積み上がるというものです。
かつて教えた子どもの中で、花崗岩と安山岩と砂岩を教えたとき、それらの小さな石を3つ、しばらくポケットに入れておいて、その石と常に比べながら、見つけた石を花崗岩、安山岩、砂岩と見分ける学習を続けている6年生がいました。「賢い子どもだなあ、我々も科学をしているものとして見習わないといけないなあ。」と感心していると、その子は東大の理三に進学しました。賢い子どもは、整理が上手です。賢い子どもは、何か人とは違う、突き抜けた学習の行動があります。
昨年、星の観測をしてきたとき、東、南、西、北の4方位の星の観測をしました。それらの記録用紙を、普通は、4枚バラバラに模造紙に貼って、それぞれの方位の星の動きを考察するのが普通でしたが、中に一人、4方位の観測を花びらのように貼って、その中心に自分がいるように想定したまとめをした子どもがいました。これも賢い子どもだなあと思いました。
現在、植物の押し花をしています。家でも押し花に取り組んでもらっているので、枚数がかなりかさんで来て、持ち運びに困ります。そのとき、二通りの整理の仕方を見つけました。一人は、一方の角にパンチで穴を開けて、輪を通し、カードのようにした子どもがいました。この子は、きちんと表紙もつけていました。「目次をつけるとさらにいいよ」と言いました。もう一人は、カードと同じ大きさの箱にきちんと入れて、春の野の花と書いています。こうなると、次の夏の野の花、秋の・・と続く、学習の積み上げの方向性が見えます。
昆虫の学習があることを見越して、一人の母が、「チョウなどの展翅板はどこで売っていますか」とお尋ねに来られました。私は、「かつては阪急百貨店の昆虫関係の売り場で買っていました。最近は、東急ハンズで買うかなあ」と伝えました。また、その母と話しているとき、「昔、私が子どもの頃、注射器で昆虫に防腐剤をうって、標本にした」と、言っておられました。「防腐剤は、結局水分を昆虫に入れるので、腐る原因になります。チョウはそのまま展翅して、甲虫類(カブトムシやルリセンチコガネなど)は、そのまま、足を図鑑のようにきちんと広げる展足をします」と伝えました。私は昆虫針にさした甲虫を、発泡スチロールの上で足を広げて、針で形を整えて固めるようにしています。バッタやカマキリやトンボは、腹の部分が腐りやすく、本当は胸と腹の間から内蔵を取り出して、その空になった腹の中に、軸になるものを差し込んで瞬間接着剤で、固定してから展足するらしいのですが、なかなかやりきれないで、何時も腐らせてしまいます。また、テントウムシは、背中の模様が見えなくなってきますので、もし、ナミテントウの背中の模様の研究をする場合は、写真で残していくのがいいように思います。
今年の3月の末に、私は、加太海岸の磯観察の会(大阪市立自然史博物館主催)に参加しました。そのとき海藻の専門の先生からいろいろ学び、海藻の見分け方や海藻の名前を教えていただきました。海藻の中には、直ぐに分解してしまうものもあるので、標本にするとバラバラになる場合があります。そこで、今回は、現地に白い大きなトレイを持って行き、その上で、標本に貼るように海藻を広げてデジタルカメラで写真を撮りました。後で、名前が分からなくなるといけないので、メモ紙に油性マジックで教えてもらった名前を書いた紙を置いて写真にしました。これは、後日、整理するときにとてもよかったと思います。一気に36種類もの海藻の名前と、その標本写真を整理することが出来ました。写真一覧と名前(種名と科名)の一覧表をセットにして、指導して頂いた先生に送って、もう一度点検をしてもらいました。そうすると、聞き間違いの名前が数点見つかり、訂正していただきました。寒風の吹く中での観察会でしたが、後で記録が残るものとなりました。
理科は自然から学ぶことが基本となります。自然をうまく整理して一覧にすると、そこから見えてくることがあります。科学の始まりです。皆さんも、海藻、貝、昆虫、岩石など、いろいろな標本を作り、自然の多様性、環境適応、進化などの証拠をそこに読み取りましょう。