東吉野川研究 2005.10.24
東吉野村は、奈良から南へ、ひたすら山の中へと、2時間ほど車で走ったところにあります。山間の谷あいの斜面にへばりつくように、また、河原の高台に小さく寄り集まって家々が建てられています。そして、その集落の間を、細い道が縫うようにつないでいます。大きな観光バスでその道を通ると、軒先をこすりそうなカーブもあり、昔の、人と馬しか通らなかった時代に造られた道であることが忍ばれます。
東吉野村へつくまでに、もう研究が始まります。途中の路上でバスを止めて、水質調査のためのサンプリングをします。最初は、山と平野の境あたりの周囲に家々が多い川、次は、山中の田んぼの水路、そして、東吉野村の三箇所です。雨のため増水しているので、水は濁っていて、見ているだけでは、そのCOD値の予想はつきません。
到着した我々は、廃校になった校舎で研修です。一階はデイサービスになっていて、村のコミュニティーホールとして使われています。三階に上がった我々は、お弁当を元音楽室で食べて、午後から二班に分かれて活動を始めます。一班は、元理科室で、プラナリアの観察と実験です。もう一班は、川へ行ってカワゲラなどの水生昆虫の採集です。
プラナリアは、岩石専門の私にとって初めて見るものです。絵や写真では、よく見かけているのですが、実物を見るのは初めてです。見てびっくりです。数㎜という、とても小さいものです。せめて数㎝あって、目がふたつある愛嬌のある顔が肉眼でもしっかり見えるものと思っていました。虫眼鏡や実体双眼鏡で、初めて見える大きさです。なんでも、実物を見ることは大切だなあと思いました。
さて、プラナリアは、体を切っても再生する不思議な能力を持っています。2つに切ると、それぞれにしっぽ部分、頭部分が再生して、2個体ができます。さらに細かく7つぐらいに切っても、それぞれから体ができるので、7個体ができるようです。それ以上細かくすると、再生は難しいようです。また、上手に頭部を斜めに切ると、頭が二つあるものが出来たりするようで、生物の生きる能力の不思議さが感じられます。
プラナリアの飼育は、水道水でもくみ置きのものを使うと大丈夫で、水温を10~25℃の範囲内に保ちます。夏場は、冷蔵庫に入れて飼育するようです。餌は、一週間に一度、レバーや鶏肉を与える方法と、毎日乾燥アカムシを少量ずつ与える方法があります。採集は、夏場がいいのですが、今回の秋の採集でも数人の子ども達が清流の石の裏側に、へばりついているものを見つけています。奈良公園の飛火野あたりの川でも採集できると聞きましたので、また時間を作って、子ども達と一緒に、見に行ってみたいなあと思います。最近、細かいものが見えないので、子ども達に探してもらおうと思います。
さて、次は川へ行って水生昆虫の採集です。小雨が降り、肌寒い天候ですが、長靴、ヤッケ、レインコート持参の子ども達の熱意におされて、川の観察を実行することにしました。川は、さすがに冷たく、さらに雨のために増水していて少し危険です。お手伝いの地元の教育委員会の先生が、採集をしてくれていますが、子ども達は、自分達が水に入って取りたくてしかたありません。トレイやザルなどの準備が少なくて、子ども達の活動が出来にくかったのが残念でしたが、水につかり、石をめくって、その下に潜む虫たちの採集は、一時間もするとかなり出来てきたようでした。カゲロウ、カワゲラ、トビケラ、ヘビトンボ、サワガニなど、いろいろ集まって来ました。
部屋に戻り、その後、みんなで、CODの測定です。パックテストを使って調べると、やはり東吉野村の水は、とてもきれいなことが分かりました。
雨と川の観察で冷えた体を、宿舎の温泉で温めて、みんなで夕食をとり一日を終えました。気持ちは、明日の、森林体験へと続きました。