日記 平成14年5月2日(木)
一緒に歩いて、同じものを見つめ、共に笑ったね。奥山で耳を澄ますと、木々のささやき、小川のせせらぎが聞こえ、千年の仏の声に心が癒されました。日記は、あの日の私から、未来の私に向けてメッセージを送っています。風に吹かれる葉のゆらぎ、それを見上げる心のゆらぎ、不思議な一瞬、確かな事、いつかすっかり忘れてしまう景色を、言葉の糸を紡いで自分の人生のスケッチをしているのが日記なのです。絶対戻れないこの一時、今にしか出来ない事、目の前の風景をそのまま素直に言葉にします。自分の心に優しくなり、気持ちを開放し、心のアンテナを伸ばすと、小さな言葉が動き始め、私の世界が見えてきます。私は、今、どこへ向かって歩いているのか、心安らぐことは何か、何を見つめているのか。
忘れられない日々、しかし、私達はかけがえのない今を過去にしながら、歩みを進めます。ふと立ち止まった時、思い出の日記から、初めての思い、震える程の緊張、満たされた時の気持ちがよみがえり、これまで歩んできた一本道が、はるか彼方から続いているのが分かります。その道を少しだけ読み返し、そして、未来の方向へ振り向いたとき、これから自分の進む道が見えるような気がします。
今日のある場面を、豊かな言葉で書き付けた日記は、小説にも値します。
「(一月一日)僕はふと目をさました。雨戸のすき間からは、はや朝の日光がさし込んで居る。飛び起きて雨戸をあけて見れば東の森からはニコニコ顔の太陽は羊年の春を連れて来た。今日は鳥の鳴く声もうれしそうである。大いそぎで顔を洗いおぜんに向かった。雑煮からゆらゆらと立つ湯気はプーンとよい香りがする。小さな露の玉はかど松についている。何処からともなく獅子舞の太鼓の音がひびいてくる。・・・『私これ今日お年玉ではごいた買ってもらうのよ』『そう。私いつ買ってくれるかわからないわ』と二三人の女の子が言いあって居る。又、向う家では、『ひでちゃんおいでよ、よくあがるから』と十一,二歳の男の子がひでちゃんとか言う女の子をよびにくると『ああ、今行くよ』と家の中から聞こえて来る。『ああ、はやく』『さあいこう』と武士の絵凧をもって出てきた。・・・あたりはしんとして、電車ばかりがごーうごーうと線路の上をすべっている。」(高見順 11歳の時の日記)
■人の可能性
先日のNHKスペシャルで、脳障害を受けて、話すことも立つこともできない11歳の流奈君の記録を見ました。流奈君の非凡さに驚くと共に、うまく発信、コミュニケーション出来ない人の中に、これほど素晴らしい能力が潜んでいることに驚かされました。うまく文字が書けない子ども、うまく話せない子ども、運動のできない子どもの中にも、それぞれなりの素敵な力が潜んでいることを証明してくれています。人の存在の重さを、改めて思い知らされました。重傷の人の介護、老人医療、養護児童の対応など、発信したくても出来なくて悔しい思いを沢山もったままでいる人たちの、心の声を、彼が代表して語っています。流奈君は、人の存在を越えた、何か違う世界からの言葉を伝えているような気がしました。
今週の予定 下校
2 木 弁当 15:50
3 金 <休み>
4 土 <休み>
5 日 <休み>
6 月 <休み>
7 火 15:50
■増えた休日の活用
両クラスとも、5月の学級育友会では、週末の暮らし方、学習の仕方について話し合いをする予定のようです。この連休も、あと半分。有意義にご活用ください。